陸上自衛隊高等工科学校と自衛隊職場体験・個人情報が利用されている可能性

かわすみかずみ

「陸上自衛隊高等工科学校」(以下工科学校)を知っている人は少ない。自衛隊関係者や家族以外に知ることはないと思われる。工科学校が果たす役割や現状を知り、私たちがこの問題をどう捉えるべきかを考えたい。(写真=自衛隊大阪地方協力本部HPより)

工科学校のホームページには、同校の成り立ちが簡単に書かれている。1955年に自衛隊制度が発足し、同時に「生徒教育隊」ができている。その後、「少年工科学校」と名称変更し、2010年に陸上自衛隊高等工科学校となった。

工科学校生は自衛官か? 国家公務員か?

「自衛隊職場体験を考える会(以下考える会)」は、2010年の名称変更について、同校に問い合わせを行なっている。しかし、工科学校は回答しなかった。
工科学校のホームページ上に説明はない。2010年に日本が批准した「武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する選択議定書」が関係しているのではないかと、考える会は推測する。

選択議定書では、15歳以下の児童を戦闘行為に加担させることを禁止している。15歳から18歳までの児童については、年長者を優先し、任務について十分な説明を行うことや、年齢に応じた配慮を行うことが求められている。
工科学校の「入校」条件は、15歳から17歳の日本国籍を有する男子となっている。議定書の規定を踏まえ、巧妙な偽装が伺える。

工科学校が規定する生徒の身分について、ホームページでは、「特別職国家公務員(生徒)※自衛官ではありません」と書かれている。だが、その教育理念は「技術的な職能を有し、知徳体を兼ね備えた進展性ある陸上自衛隊員としてふさわしい人材を育成する」とある。

工科学校の授業は①一般教育、②専門教育、③防衛基礎学の3種があり、防衛基礎学については戦闘訓練などが主体となっている。2年生以上から、武器訓練・射撃、戦闘訓練、対特殊武器戦などの授業が組み込まれている。特別職国家公務員であり、自衛官ではないものが、これだけ専門的な戦闘訓練を行うことに矛盾があることは明白だ。

生徒の個人情報が抜き取られている

「考える会」が大阪市教育委員会から情報公開請求で得た資料の中には、問題があると思われるものが多数あった。A中学校が自衛隊に職場体験に行く際、八尾駐屯地が示した「八尾駐屯地部隊見学実施計画(案)」(写真下)には、その目的に「八尾駐屯地に対する理解の獲得及び募集基盤の拡充に資する」とあった。

自衛隊大阪地方協力本部は、毎年各地域の区役所等に15歳の男子の名簿閲覧を行い、工科学校の募集要項等を送付することが、「考える会」の調べでわかっている。

自衛隊職場体験の内容について、東大阪市教育委員会への情報公開請求で確認できた。ある中学校は「装甲車と資料館見学」が内容に含まれていた。また、体力測定が含まれている学校もあった。体力測定のデータも個人情報に含まれる。このデータがどのようにどこに保管され、しっかり処分されたのかどうかもわかっていない。

大阪市、東大阪市ともに、生徒の4情報(氏名、性別、住所、生年月日)を提供している学校があった。東大阪市では事業所に破棄を依頼する学校が多く、その後きちんと破棄されたのかがわからない。

大阪市では、生徒の個人情報について、「自衛隊から求められた」と回答する学校が複数あった。また、保護者や生徒本人には、「自衛隊の基地内に入るには、個人情報の提出が必要です」と説明していることもわかった。

筆者は、八尾駐屯地、奈良航空基地に電話し、個人情報が必要な理由について聞いた。八尾駐屯地は、緊急時に生徒の個人情報が必要になるためと説明する。だが、教員経験者に確認すると、学外講習などの場合はスポーツ保健に加入するため、学校が対応するはずだという。また、情報の管理については、「個人情報保護法に則って適切に処理している」と繰り返すが、具体的な対応は見えない。

工科学校の募集のための職場体験

「考える会」が得た大阪市の資料のなかでは、自衛隊大阪地方協力本部からC中学校に送られた感謝の手紙(写真下)がある。そのなかでは、「お陰様をもちまして 令和6年度は 大阪府内の中学校より 多くの生徒さんに陸上自衛隊高等工科学校を受験していただくことができました」と書かれていた。

自衛隊職場体験による個人情報の取得と工科学校の勧誘には関連性があると考えられる。送り出す学校側も、自衛隊職場体験での個人情報提供について、提供するかしないかをもっと真剣に考えるべきではないだろうか?