2026年3月18日 ヴィシャル・レディ(WorkFour 理事長)

【解説:WorkFourは週4日32時間労働制を要求する全国的な運動団体である。その理事長を務めているヴィシャル・レディは老人ホームの労働組合の交渉担当でもある。労働組合はAIに対して防御的に対応するのではなく、積極的な時短要求を対置すべきである、という主張をレイバーノーツ4月号に投稿している。既に要求を実現している組合などを紹介していて興味深いので、翻訳して紹介する。レイバーネット国際部・山崎精一】    

クラウドファンディングサイトのキックスターターの労働組合は、週4日労働制を守るために2025年に42日間のストライキを行った

 AIに関しては、企業と労働者とでは求めるものが全く異なっている。AIが技術革新のブームをもたらすとしたなら、企業はそれを利用して労働者に対して全面戦争を仕掛けるつもりだ。企業は効率化の恩恵を、雇用削減、労働者の監視、そして労働環境の悪化に利用するだろう。たとえAIが、その高すぎる(おそらく過大評価された)評価に見合う成果を上げられなくても、経済や老後の生活がますますAI投資に依存するようになっているため、労働者階級は依然として深刻な影響を受ける可能性がある。

 労働者は企業が自分たちを罠にかけようとしていると感じている。最近のピュー研究所の調査によると、ほとんどの労働者が職場でのAI導入を懸念しており、その不安は低賃金労働者の間で最も高い。今後20年間でAIがプラスの影響をもたらすと考えているアメリカ人はわずか17%に過ぎない。こうした社会全体の懸念にもかかわらず、昨年、最も裕福なテック業界のトップ10経営者の純資産総額は5,000億ドル増加したが、その大半はAIへの投機によるものである。

 にもかかわらず、こうした憂慮すべき動向に対し、労働組合や連携する政治家たちは、主に防御的かつ手続き重視の解決策に終始している。AFL-CIO(アメリカ労働総同盟・産業別労働組合会議)の組織化および交渉原則は、透明性、協議、手続き上の保障、雇用可能性開発といった「防御的」な手段を重視している。

 これらは必要ではあるが、不十分だ。AIの進化のスピードに比べれば動きが鈍すぎ、労働協約期間中の継続的な取り組みを要する。たとえ幅広い支持を得たとしても、集団行動に必要な労働者の熱気を生み出すことはできない。

 「防御的」な手段は、労働者が現在持っているわずかなものを守ることだけに焦点を当てており、労働者が今この瞬間に獲得し得るものを求めて闘うためのものではない。技術進歩の恩恵を受ける者が誰であるかという点を根本的に変えることはない。
 では、技術進歩を経営側の視点ではなく、労働側の視点でとらえ直すにはどうすればよいのか?

週32時間労働

 経済をコントロールすることはできなくても、私たちは夢を持つことはできる。AIの登場は、技術が生活を悪化させるのではなく、改善するという希望を人々に与える経済的な戦略を打ち出す好機だ。

 この攻勢的な戦略の中心に据えられるべきなのは、賃下げなしの週4日・32時間労働制である。労働時間の短縮を求める要求は、技術進歩の恩恵が上に吸い上げられるだけではなく、広く社会に還元される可能性を示している。もしAIの約束が「時間を節約する」ことにあるのなら、それは労働から私たちに時間を取り戻してくれるはずだ。

 過去数十年間、労働組合は経済的利益を金銭や付加給付という形で労働者に再分配することにほぼ専念してきた。しかし、かつて労働者が8時間労働を要求した時のように、利益を「時間」という形で分配することも、それと同じくらい、あるいはそれ以上に強力な手段となり得る。

 労働史家のフィリップ・フォナーとデビッド・ローディガーが『Our Own Time: A History of American Labor and the Working Day』で指摘しているように、労働者が技術に対して支配力を発揮する最も効果的な方法は、労働における技術の役割を最小限にすることではなく、人生における労働の役割を最小限にすることであることを労働史は示唆している。

 週32時間労働を求める全国キャンペーンWorkFourでは、労働組合が週労働時間の短縮を実現するために活用できる4つの方法を特定した。今こそ、時短の闘いを再燃させる必要がある。労働者はすでにAIに対して不安を抱いており、それが時短を求める運動に勢いをもたらしているが、実際の雇用喪失の規模はまだ限定的だ。つまり、この運動の優位性は依然として残されているのだ。

過労と燃え尽き 

 労働時間が実質的に短縮されたのは、1940年が最後だ。それまでは、労働運動の代表的な要求は「労働時間の短縮」だった。1日8時間労働、週5日労働制、週末の休日化、有給休暇などである。数十年にわたる闘争的な労働組織の組織化を経て、公正労働基準法(FLSA)を通じて週40時間労働という基準が勝ち取られた。それ以来、生産性は400%も急増し、女性の労働力参加率は上昇し、サービス業は拡大し、コンピュータ革命も起きた。しかし、週労働時間の基準は凍結されたままである。その結果、共働き世帯の労働時間は1960年代よりも長くなっている。

 勤労家庭は、自由時間の減少とストレスの増大という代償を払ってきた。燃え尽き症候群が蔓延し、低賃金労働者、有色人種の労働者、そして若年労働者に特に深刻な打撃を与えている。熾烈な経済競争と社会的セーフティネットの弱体化により、すべての労働者が過労に苦しんでいる。

 だからこそ、労働時間は生活費の問題であり、賃金や物価と同様に、仕事の質や生活の負担能力にとって極めて重要な要素なのである。労働者の労働時間の確保や賃金の引き上げだけを求めてしまうと、労働者階級が直面している疲労や燃えつきの深刻さを軽視することになり、インフレの影響を受けない「時間」という貴重なものを勝ち取る機会を逃してしまうことになる。

 生き残るためだけにさらに長い労働時間を強いるような経済は、修正するのではなく、根本的な再構築を必要としている。だからこそ、賃金の減額がないという条件であれば、労働者の約80%が週4日勤務を支持しているのだ。

これは実現可能なのか?

 労働者は時短を望み、必要としている。しかし、労働時間が減るのに賃金は変わらないというのは、あまりにも都合が良すぎて信じがたい話に聞こえるのではないだろうか?同僚や経営者に、笑われないように、提案するにはどうすればよいのだろうか?労働者が、現実離れした考えに賛同する可能性は低い。

 しかし、時短は今や、使用者と従業員双方にとって、実証済みで証拠に裏打ちされた「ウィンウィン」の仕組みとなっている。過去5年間で、米国では数百の組織が週4日・32時間の労働制を導入した。

 北米で先に行われた調査では、時短のテスト導入後に97%の使用者がこのスケジュールを継続しており、生産性の向上、収益の増加(30%増)、離職率の低下(23%減)、欠勤率の低下(39%減)を理由として挙げている。労働者からは、健康状態の改善(40%)、ワークライフバランスの向上(60%)、燃え尽き症候群の軽減(69%)が報告されている。

 労働時間の変更は、誰がどのようにケアワークを行うかも変えた。時短を試行した事業では、男性の家事労働時間が約28%増加し、親たちは育児に充てる時間が増えたと報告されている。

 これまでの週4日労働制の多くは使用者主導であったが、様々な労働組合もこれを勝ち取っている。フロリダ州の電気工事士がその一例だ。もう一つの例は、ワシントン州サンファン郡の地方公務員たちである。同郡がインフレ上昇期なので実質的な賃上げの余地はないと回答したのに対して、組合は週労働時間の短縮を要求して勝ち取った。

 キックスターター社のテック系従業員は2021年に週4日労働を勝ち取った。当時、新型コロナとその後の大量離職、そして経営側の理解、が相まって、労働側は交渉の場で異例の優位性を得ていたからだ。しかし、2025年にこうした状況が逆転した際でさえ、キックスターターの労働者たちは短縮された週労働時間を守るため、42日間にわたるストライキを行った。

 週4日労働制は、医療や製造業を含む様々な業界や職種で機能している。時給制の労働者を雇用する企業では、労働者の実質賃金が下がらないよう、月給制への転換、時給の引き上げ、あるいは5日目に有給休暇を付与するなど、使用者は様々な方法を考案している。こうした事例はすべて、交渉の場で労働組合が説得力のある主張を展開するための材料となるはずだ。

 たとえ1回の団体交渉で週32時間労働の実現が難しくても、労働組合が週36時間勤務、隔週の5日目の有給休暇の保証、あるいは夏の間の金曜日の早期退勤といった、段階的な勝利を勝ち取ってきた例は数多い。また、段階的に導入を進めてきた事例もある。

戦闘性を高める

 労働運動全体で、より闘争的でストライキに即応できる労働組合が必要だという認識が高まっている。そのために不可欠な要素が、連帯と階級意識である。週4日・32時間労働制をめぐる交渉は、この両方を高める。

 すべての労働者がすぐに想像できるだろう。休日が増え、3連休が増え、家族との生活や地域活動に参加する時間が増えるのだ。週4日労働制は、職種や賃金の大きな違いを超えて労働者を結びつけることができる。なぜなら、誰もが利益を得られるからだ。

 この要求は階級意識も鋭くする。一方には過労で燃え尽きた労働者階級がおり、他方には余暇に満ちた生活を送る階級がいる。全米自動車労働組合(UAW)のショーン・フェイン会長が述べたように、この経済における真の「ただ乗り」は、他人の労働から利益を得る不労所得階級たちである。

 1940年以降でも、労働者が新技術への対応として、自らの時間を取り戻すために闘争的な行動を起こしてきたという歴史がある。1960年、コンテナ化技術とグローバル化が港湾労働の様相を一変させた中、西海岸の港湾労働者は週労働時間を40時間から35時間に短縮させることに成功した。1994年には、フリントで全米自動車労働組合(UAW)ローカル599の労働者11,500人が、新たな生産技術による過重労働に抗議してストライキに突入した。

 そして過去3年間には、ビッグ3の自動車労働者(この要求は実現しなかったものの)やキックスターターのテック労働者による、週4日・32時間労働を求める強力なストライキが見られた。

 ニューヨーク・タイムズのIT技術者労組も32時間労働要求を勝ち取ることはできなかったが、「週32時間労働をどう実現できるのか?自由になる一日をどう過ごすか?家族にとって何を意味するのか?」とその組合機関誌で問いかけ、要求を組織化した。組合員たちはケア、休息、コミュニティ、そして尊厳について討論した。このような議論を通じて、ストライキを準備し、自信と団結を固めた。

 このシンプルで意義深い要求は、職場や業種、組合の枠を超えて労働者を団結させることもできる。歴史的に見て、個々の労働協約を越えた要求は、労働運動の闘争心を高め、さらにはゼネストへとつながることもある。

実現可能な要求

 週4日・32時間労働制は労使交渉の場だけではなく、議会でも勝ち取ることができる。特定の職場に関係するAI関連の要求の多くがそうではないのに対し、週4日・32時間労働制は組合員・非組合員を問わず、すべての労働者に訴えかけるものだからである。

 交渉の場で影響力が限られている労働組合であっても、広く共感を呼ぶ要求を掲げる政治勢力としてなら、より大きな力を発揮できる可能性がある。興味深いことに、支持層はそれほど二極化していない。政策案として、この要求は教育水準、政党支持、性別、人種を問わず、比較的高いレベルの世論の支持を得ている。

 過去5年間で、20の州および連邦下院・上院において、週32時間労働制を導入する法案や地方条例が議員らによって提出された。昨年は、メイン州の共和党議員とニューヨーク州の民主社会主義者が、同じ月に週労働時間短縮法案を提出した。今年ワシントン州で提出された法案は、ワシントン州職員連盟の支持を得ていた。

 週労働時間の短縮は、経済が好況期にある場合には、労働者が時間を取り戻すことで利益を分かち合えるため、労働者に利益をもたらす。不況期には、労働時間を短縮することで仕事をより均等に配分し、雇用を安定させる。また、平時においても、労働時間の短縮は労働力の供給を減少させ、交渉の場における労働者の交渉力を高める。

 しかし、どんな経済的根拠よりも、一番単純な主張が一番説得力がある。つまり、働く人々は、より多くの余暇と休息、そして自分の時間をより自由にコントロールできることを求めている。