<アリの一言>

 「市民集会・デモの軽視甚だしい日本のメディア」と題して先日書きましたが(6日のブログ参照)、そのリアルな実態を伝える注目すべき記事が掲載されました。

 25日付朝日新聞(デジタル版も)の記者コラム「多事奏論」で田玉恵美編集委員が書いた「放送されなかったデモ 議論なきNHKの「自主判断」」(デジタル版のタイトルは「NHK、国会前デモの放送を直前に差し替え 自主的判断というけれど」)です。たいへん重要な記事なので、長くなりますが全文(デジタル版、中見出しも)転記します。

< NHKが国会前デモを放送しない。改憲や戦争に異議を唱え、何度も多くの人たちが集まっているのになぜ?

 そんな声が巷(ちまた)で広がるなか、4月8日夜にまた大きなデモがあった。NHKはどうするのか。総合テレビを注視した。

 「ニュースウオッチ9」もどこも取り上げない。ただ、夜遅くにNHKのウェブサイトに記事が出た。「憲法改正に反対の市民団体など国会周辺で集会〝9条の堅持を〟」との見出しで、主催者発表でのべ3万人が参加したと伝えている。

 翌朝の「おはよう日本」の5時台に「この時間までに入っているニュース」を10本まとめて紹介するコーナーがあり、そこでデモの記事のタイトルは表示されたが、アナウンサーが原稿を読み上げたり、映像を流したりすることはなかった。

 テレビで映像を使って放送しないのはどうしてだろう。翌週の定例会見で質問した。報道担当の原聖樹理事は「どのニュースを映像をつけてやるかどうかについては、その当日の編責(編集責任者)を含めて、報道局内で議論した上でオーダー(放送する内容や順番)等を決めている」「個別のニュースについては、そのつど判断しているということに尽きる」と言う。

 取材を進めると、疑問が膨らんだ。

 突然のアナウンス

 デモがあった8日の夜、NHKの制作現場はこのニュースを放送しようとしていた。報道局の関係者によると、社会部が現地で取材し、午後11時40分からの全国向けの最終ニュースに採用された。

 5分の枠で、通常はニュース2本と気象情報で埋まる。この日は、米国市場の株価の速報が冒頭に短く入ったが、その後は東大の不祥事で総長が会見をした話題の次にデモのニュースを放送する手はずだった。国会周辺で取材・撮影した映像を編集し、参加者へのインタビューを含む1分あまりのVTRを完成させ、放送開始に備えていたという。

 ところが直前になって、放送内容を変えるというアナウンスがニュースセンター内に流れた。代わりに入ったのは、医療用物資を安定的に確保するため厚生労働省が災害時の情報共有システムを活用する、という話題だった。

 現場に変更する理由は知らされなかったという。「憲法改正への反対意見だけを流すのは一方的だ、と上層部が懸念したのでは」。局内からはそんな推測の声が聞こえる。

 とはいえ、自民党大会が開かれた12日の「ニュース7」では、4分を割いて憲法改正などをめざす同党の意向を伝えていた。登壇したミュージシャンの世良公則さんが「燃えろいい女 燃えろ早苗」と首相を持ち上げて歌う場面には歌詞のテロップまでついた。「早苗」の文字は一回り大きく、色をつけて目立たせている。デモを報じるのが一方的だというなら、これだって一方的だろう。

 ともに政治部出身の井上樹彦会長と原理事に「デモを放送しないという判断に、あなたは関与したか」と会見で聞いたとき、2人はそろって否定していた。井上会長は「個別のニュース、これも含めてですね、一つ一つ関与しているわけではありません」と述べている。誰の意向でなぜ放送内容が変わったのか。

 腑に落ちない回答

 NHK広報局にあらためて質問を送って返答を待っていた19日の日曜に、国会周辺では再びデモがあった。すると午後10時40分からの最終ニュースで、デモの様子や参加者の声が流れた。今度は放送せよとの指示でもあったのだろうか。

 その後にNHKから返ってきた回答には「個別の編集判断を含め取材・制作の詳しい過程については、お答えしていません」「ニュースや番組で何をどのように伝えるかについては、報道機関としての自主的な編集判断に基づき、そのつど、総合的に決めています」とあった。

 NHKでは、誰のどんな判断なのかを現場に説明すらしないまま放送内容を直前に差し替えることを「自主的な編集判断」と呼ぶらしい。異様すぎないか。

 かつてNHKは「放送現場には編集権はない」と国会で答弁した。最終的な編集権は会長にあるという考え方だ。仮にそうだとしても、何をどのように放送すべきなのか、制作現場が議論に参加するのは当然の前提のはずだろう。

 公共放送の使命は「豊かで、よい放送」を届けることだ、とNHKは自ら番組基準でうたっている。議論のないニュースセンターにそれが可能だとは私は思わない。>

 NHK(写真右)の政権忖度=報道機関としての自殺行為に特別な驚きはありません。日常的に行われていることの一コマでしょう。

 感心したのは田玉記者のジャーナリストとしての姿勢です。着眼点、徹底取材・追及、明快な主張。いずれも素晴らしいです(田玉さんは佐渡金山の朝鮮人強制労働問題でもいい仕事をされています)。このような記者、このような記事が増えることを願ってやみません。

★アリの一言ブログ