大場ひろみ

 よく晴れて気温が急上昇した5月17日、専修大学神田キャンパスで「未来の東京を一緒につくるために―緑とくらしを乱開発から守るシンポジウム」が開かれた。昨今東京で多発する再開発や大型公共事業により、地域の住環境や緑が破壊される事例が相次いでいる。これに疑問を持ち、地域で活動する38団体が結集し、31団体が展示、33団体がレセプションを行った。展示コーナーでは幟や横断幕、チラシやパネル、署名が林立し、それぞれの団体同士や訪問者がコーナー毎で、熱心に情報交換する姿が見られた。

 各団体の発表前に、挨拶に立った専修大の方の話では、38団体が集まっても実際に問題を抱える地域の10分の1ほどかも知れないという。東京ではいったい何が起きているのか。
 1団体に与えられたプレゼンの時間は各2分半。短い時間でまとめるのは大変だが、皆さんポイントを押さえて手際よく伝えていく。配られたビラなどを合わせて、どのような問題がどれだけあるかをまとめてみると、緑地破壊(善福寺川流域・神田警察通り街路樹、北区名主の滝公園)3、緑地破壊して新しい施設を建設するもの(日比谷公園、渋谷区玉川上水緑道、調布基地跡留保地、野津田雑木林、芹ヶ谷公園、神宮外苑)6,道路計画による緑地破壊(国分寺崖線・野川、北区赤羽西地域)2,道路計画による暮らし全般・環境破壊(東京都外環事業に関わる7区)1、道路計画による商店街破壊(西荻窪)1,道路計画とタワマン等再開発による暮らし破壊(品川区特定整備路線補助29号地域、板橋区大山)2、線路高架化計画を地下化にしたい(西武鷺ノ宮・都立家政)1,タワマン等複合再開発による暮らし破壊(品川区全域、中野駅周辺、千代田区日テレ跡地・外神田1丁目、北区赤羽、日本橋室町1丁目、高島平、千歳烏山)7,複合施設による遺跡破壊(築地市場→浴恩園)1,巨大データセンターによる暮らし破壊(昭島⦅物流センターも⦆、日野市)2、データセンターについては首都圏12地域をつなぐネットワークがある。他に発表団体はネットワーク活動が複数あり、中野は2団体を1つに数えたりしているので合計数は合わない。

 これをさらに問題毎によせて見ると、緑地破壊11,道路計画5,タワマン等高層ビル9,データセンター2となる。道路計画については戦後すぐや高度成長期など過去の塩漬け計画を蒸し返したものが多く必要性が疑われる。外環道路も何年たっても開通の見通しはない。

 すべての問題に共通するのは、地域住民に知らされることなく計画を進め、公表しても話し合いの場をなしくずしにし、陳情も聞かず一方的に推し進められる点だ。都市再開発法などの悪法がますます強化され、憲法で保障されている国民の主権がないがしろにされている。公園や住民の憩いの場である緑地破壊も、タワマン建築も、データセンターも、資本の要請に従うばかりで住民を顧みない行政の責任、特に許認可を出し、補助金という税金を惜しみなく企業に注ぐ小池都政の功罪は大きい。

 中野4丁目の再開発について発表した方は、「新自由主義の植民地と化している東京都」と表現した。その通り、小池都知事の元、都は「不動産業者の草刈り場」である。

 各団体プレゼン後のパネル討論では、基調講演で建築家の山本理顕氏が「あなた方の相手は巨大だ。緊急事態条項やガザの皆殺しなどすべてにつながっている」と表現したが、新自由主義の価値観が世界を覆いつくしている状況を指していると思われる。

 しかし一つ一つのことを「出来ることからやるしかない」と登壇者の石川幹子氏(造園の専門家、『緑地と文化』の著者)は発言した。例えば渋谷区に「武蔵野の自然を取り戻す」と提言し、玉川上水跡緑地整備に待ったをかけ、野の花を植えられる所に植えて野の花の道を作る。専門家の知恵を結集して出来ることからやるのだと。

 いい報告もあった。芹ヶ谷公園では稲垣康治新市長が「計画の見直しをする」と発表したそうだ。経費の点での見直しかも知れないが、いったん止めることは出来た。いずれにしろ、地域でネットワークを作るのが大事なことだと他の登壇者も強調。そのネットワークをさらにつなぐ、今回のシンポジウムは小池都政に歯止めをかける、小さな、しかし大事な一歩ではなかろうか。企画者と参加者に拍手を送りたい。