●根津公子の都教委傍聴記(2026年4月23日)

教育委員会定例会(同ホームページより)

 新宿駅から都庁まで乗ったバスに教育委員のお一人が乗っていた。降りたところで「教育委員の○○さんですよね」と確認し、「私は教育委員会を傍聴しているのですが」と言ったところ○○委員は「知っています」。「私は子どもたちの不登校問題が気になるのですが、これが定例会で議題にならないのはなぜですか。教育委員は議題を提案できないのですか」と聞くと返事はない。
「○○さんは、不登校問題は議論すべき大事なことだとは思われませんか」と重ねて聞くと「大事と思います」。足を速めるので、「ぜひ、定例会で議論してください」と後ろから声をかけた。私も名乗って、傍聴報告をWeb上に載せているので見てほしい、と言うべきだったが、後の祭り。いや、○○委員は私の顔を認識しているのだから傍聴報告も読んでいるのかも。

 今日の公開議題は、①「新たな教育のスタイル」のコースについて ②教科用図書選定審議会の答申について ③都立高校生の国際交流について ④昨年度条件付き採用教員の任用について ⑤学校の働き方改革推進に向けた有識者会議について。珍しく、懲戒処分は議題になかった。①③ともに、またもや都立高の魅力を声高にアピールする施策だ。

①「新たな教育のスタイル」のコースについて

 3月の定例会で「港区白金地区『新たな教育のスタイル』の実施校(仮称)の構想について」の報告があった。「デジタルの力で、学びを究める進学校~自分を磨いて、白金から世界へ~」を教育方針に2028年度開校。従来の一斉授業ではなく自分の「究めたい」学びを自分で決め、行うカリキュラで、教員は生徒の伴走者。「国内外の最難関大学(リベラル・理工等)への進学」や「グローバルに貢献できる先端人材」を進路としてイメージする、新設の高校というものだった。

 今日の報告は、こうした「新たな教育のスタイル」を都立高校に迅速に導入していくため、既存の都立高校において重点的に展開する取り組みを、2028年度から新宿高校、国分寺高校、駒場高校において実施するとのことで、「新しい形のフラッグシップ進学校として更なる特色化を図る」という(フラッグシップ=flagship)。

②都立高校生の国際交流について

 今年度が5回目になるこの事業、年々規模が拡大する。派遣事業は、昨年度は11ヶ国(ヨルダン、トルコ、エジプト、マレーシア、インドネシア、アメリカ、イギリス、ニュージーランド、UAE、カナダ、フィンランド)に往復を含めて1週間ほど、299名を派遣。今年度はタイを加え12ヶ国に331名を派遣するという。生徒たちは事前学習を経て、訪問先で高校や大学、企業や文化施設・世界遺産を訪れ、帰国後、各学校で発表会を行うとのこと。

 海外の高校生受け入れ事業は、昨年度は10ヶ国から90名を1週間ほど受け入れ、オーストラリアの高校生8名は井草高校で授業や部活動等を通して交流を図るなどのことを行った。今年度は100名を受け入れるという。

 今年度は新規事業として、すべての都立高校から1校1名の生徒が3週間の海外留学(オーストラリア、ニュージーランド、カナダ)に参加できる機会を提供するという。

③昨年度条件付採用教員の任用について

 新規採用されて教諭は1年後に、養護教諭は半年後に正式採用となる。それまでの期間は条件付採用となる。昨年度の「条件付採用教員数」は4102名、「正式採用者数」は3877名、「正式採用とならなかった者」は225名(全体の5,5%)。「正式採用とならなかった者」の内訳は、「年度途中の自己都合退職者数」が205名、「正式採用『否』の者」が20名。「年度途中の自己都合退職者数」のうち、4割が進学や進路変更、4割がメンタル不調によるもの(業務の多さ、保護者対応)という。希望して教員になったはずだから、「メンタル不調」だけでなく「進学や進路変更」を理由とする人も、単なる「自己都合」での退職ではないはずだ。

 同僚たちが支援できる職場環境であったなら、こうした退職は生じなかったはず。教育行政が業績評価や職務職階制を導入し、互いを競い合わせるようになって生じたことだ。長いこと教員をしてきた人の中にも精神疾患が多い現実を見れば、そのことが分かるというもの。都教委は、どうしてこうした分析をしないのか、私には解せない。

④学校の働き方改革推進に向けた有識者会議について

 現行の実行プログラムが今年度で終了することに伴い、新たな働き方改革推進計画の策定が必要なため、有識者会議を設置する。第1回会議を5月に予定し、年5回ほどの会議を経て年度内に報告を出す。有識者会議委員には、教育学・働き方改革・デジタル・マネジメント等の7名の大学教授や研究所代表取締役が当たるという。

 例えば、上述した教員のメンタル不調・疾患について、これまでの働き方改革では解決に向けた取り組みとはならなかった。今後も、都教委が選定した有識者では、解決に向かわないと私は思う。