<黒鉄好/安全問題研究会>

大型連休最終日の5月6日、磐越自動車道で痛ましいバス事故が発生し、17歳の若い命が失われた。

私は、北海道に引っ越してくる前の一時期、福島県に住んでいて、事故区間(猪苗代磐梯高原IC〜磐梯熱海IC)も何度か走ったことがある。日本海側の新潟県から山を越え、猪苗代湖のすぐ北を通過後、福島県郡山市の市街地に向かって、長い坂を下っていく。知らない間に加速がついたまま、カーブにさしかかる危険な区間で、私も福島時代、冬場の運転は避けてきたほどだ。

この道路に並行する形で、JR磐越西線・磐越東線が通っており、磐越道の事故発生場所にほど近いところに磐越西線・中山宿駅がある。急勾配のため、蒸気機関車時代はスイッチバック駅として鉄道ファンに知られてい(電化された現在は解消されている)。

このような危険で酷い運送契約を結ぶのは、零細なバス会社だろうと思っていたら、蒲原鉄道と聞いて愕然とした。1999年までは、新潟県内に短いながらも鉄道路線も持っていた。レンタカー車両、二種免許を持たないアマチュア運転手であることに加え、運行後に運転手に人件費が支払われる予定だったとする報道もある。事実なら道路運送法が禁じる「白バス」営業に当たる可能性もある。

今回の事故について、まだ確定的な情報がほとんどない中で、私がここで取り上げたのには理由がある。現在、開会中の特別国会に、国交省が地域公共交通活性化再生法の「改正」案を提出しているからだ。

「第221回国会(特別会)提出法律案(令和8年3月10日現在)」(国交省)
https://www.mlit.go.jp/policy/file000003.html

上から3番目に「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律案」がある。

「地域公共交通は、・・・運転者等の担い手が不足し、減便・廃止が相次ぐなど供給が減少する一方で、免許返納、学校や病院等の統廃合等により社会的需要が拡大」し「日常生活における移動の不便にとどまらず、外出・通院機会の減少による健康面への悪影響や、現役世代による子どもや高齢者の送迎負担の増大等により、地域の活力の低下、さらなる人口減少という負の連鎖を招く可能性」があることを理由に、「「交通空白」等について地域の輸送資源をフル活用して解消するため、運転者や車両等に関して運送主体とは別の交通事業者や施設送迎提供者から協力が得られるよう地方公共団体があっせん等することで、複数の者が協力して最適な形態で運送を提供する事業を創設」することを目的にしている。このための手段として「市町村が協力・連携を図るべき地域の関係者として、学校、病院、福祉施設、商業施設等の利用者の送迎サービスを行う者を追加」することが法案の目的だ(以上、法案「概要」https://www.mlit.go.jp/policy/content/001986074.pdf より抜粋)。

すでに、現状の道路運送法でも、「交通空白地有償運送」「福祉有償運送」を行う場合には、部分的に白バス、白タクの運行が可能になっている(「自家用有償旅客運送」・・・道路運送法79条の2〜79条の3、道路運送法施行規則51条)。運行主体としても、一般社団法人又は一般財団法人、認可地縁団体、農業協同組合、消費生活協同組合、医療法人、社会福祉法人、商工会議所、商工会、労働者協同組合の他、「営利を目的としない法人格を有しない社団」までが認められている。交通空白地帯での交通手段の確保や、障がい者の輸送が名目で、かつ利潤追求が目的でなければ、事実上、誰でも白バス、白タク営業をできるところまで来ている。利潤追求が目的でないため、地域住民から一定の信頼を受けている団体がほとんどだと思うが、そのことと「疑似公共交通」を事故なく安全に運行できることは当然ながら別問題である。

今国会に提出されている活性化再生法「改正」案は、関係自治体が地域公共交通計画に盛り込み、国交省の認可を受けることで「交通空白地有償運送」「福祉有償運送」以外にも「自家用有償旅客運送」を広げる目的を持っている。成立すれば、病院バス、スクールバス、買い物バスなど特定目的で特定の旅客だけを乗せるための輸送手段だったものを、「地域公共交通」全般に広げることができるようになる。今回、磐越道で事故を起こした「部活動の生徒運送用バス」は、1回限りの臨時運行のため定期運行にはなり得ないが、ある程度まとまった運行頻度になれば、これすら「地域公共交通計画」に盛り込んで認可を受ければ「合法」になるのだ。

この改悪の先で私たちをどんな未来が待つか、図らずも今回のバス事故が示す形になった。今回の活性化再生法の「改正」はあまりにも危険すぎる。止めなければならない。

<参考記事>
福島・磐越道で高校生らが乗るバスが事故 17歳死亡、複数の重傷者(2026.5.6付け「朝日」)
https://www.asahi.com/articles/ASV557X2VV55UEFT00LM.html
磐越道事故のバスは白ナンバー 違法になる「白バス」行為の線引きは(2026.5.7付け「朝日」)
https://www.asahi.com/articles/ASV5726GVV57UTIL00TM.html