
「ウィシュマさんの命は救命できたと思う」と法廷証言!~「ウィシュマさん名古屋入管死亡事件裁判(名古屋地裁)」第23回裁判(原告・遺族側、今川篤子医師証人尋問)・支援集会報告(202.1.15 小野政美)
(1)昨日、1月14日、2021年3月に名古屋出入国在留管理局施設で収容中に死亡したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)の遺族が国に損害賠償を求めた「ウィシュマさん名古屋入管死亡事件裁判」第23回裁判が、1月14日名古屋地裁(大竹敬人裁判長)で行われ、法廷では、原告・遺族側の今川篤子医師の証人尋問が行われ、特に、「2月15日の尿検査」に焦点を絞った医学的意見の証言がありました。「陳述書」に基づき今川医師のスライドを使った証人尋問、原告・遺族側の代理人による今川医師への主尋問が行われました。原告・遺族側推薦の今川篤子医師証人尋問が行われました。午前午後にわたる丸一日の名古屋地方裁判所・第2号法廷には、全国各地から多くの傍聴者が参加しました。裁判終了後、近くの桜華会館で裁判支援集会が行われました。ウィシュマさんの妹で原告のポールニマさんは、体調不良のため今回の法廷には参加できませんでした。ウィシュマさんの妹のワヨミさんは、現在、ウィシュマさんのお母さんの暮らすスリランカに帰国中です。
(2)今回の原告・遺族側、今川篤子医師(東京勤労者医療会あびこ診療所所長)の証人尋問では、これまでの法廷での証人尋問での被告・国側推薦の庁内医師・新美医師、野村医師などの以下の結論、これまで被告・国側の主張、被告・国側の証人尋問への全面的反論となる重要な法廷になりました。
今川篤子医師は、①「2月15日の尿検査」、②尿検査以外で、ウィシュマさんの体に見られていた変化、③ウィシュマさんの筆跡の変化から推察される、当時の病態について証言しました。
今川篤子医師は、死亡約3週間前、2021年2月15日の尿検査で、飢餓、肝機能障害、腎機能障害を疑う数値が出ていて、その程度の重いものであったとして、「外部医療機関で診断や治療を依頼すべきだった」、血液検査で病状を正確に把握していれば、「救命できる可能性が高かった」と証言しました。2020年8月に、84.9キロだった体重が、2021年3月6日の2週間前には66.5キロまで減少していたことを踏まえ、低栄養、脱水、ビタミンB1欠乏症の状態などの所見が見落とされ、重症化しいるのもかかわらず、適切な治療が行われなかったためにウィシュマさんは死亡したと指摘し、血液検査で病状を正確に把握していれば、「救命できる可能性はあった」と証言し、法廷の最後の裁判官が数回にわたり、「ウィシュマさんの命はどの古来の確率で救うことができたと考えますか?」という尋問で、に対して、今川篤子医師は、「8割くらいの確率で救えたのではないか」と答えて、「ウィシュマさんの命は救命できたと思うと非常に残念だ」と証言しました。
名古屋入管庁内内科医の新美医師が、ウィシュマさんを消化器内科で受診させた後、ウィシュマさんが名古屋入管施設で死亡した二日前の2021年3月4日には精神科を受診させていました。今川医師は、「消化器内科医の診察などから、内科的に大丈夫だと判断し、精神科につなげたプロセスは医学的な標準からはことなるものであった」と今川篤子医師は評価しました。
昨日の法廷証言では、今井医師は、午前中の原告・遺族側代理人による主尋問にスライドを使いながら、名古屋入管庁内内科医等の義務違反について詳細な医学的知見・資料等に基づき、また、多くの患者を診てきた事例・経験を的確に述べながら、これまで被告・国側の主張、被告・国側の証人尋問への全面的反論となりました。午前中の原告・遺族側代理人による主尋問が終わり、裁判官3名が退廷後、今川篤子医師は、涙を堪えるように座られ、今川篤子医師のその後ろ姿に、誰からともなく拍手が起こり、今川医師は傍聴席に向かって、手を合わせ、深々と頭を下げられました。傍聴席からは再び拍手が巻き起こりました。
午後の、証人尋問では、被告・国側代理人弁護士の反対尋問に対して、内科医の経験を基に、一つひとつ、具体的事例を多く挙げながら、冷静に証言を続け、時に涙を堪えながら尋問に答える今川医師の後ろ姿に、傍聴席では、共感と感動の涙を流す姿がありました。私には、午前午後の生まれて初めてだったという証人尋問での今川篤子医師の証人台での姿が、木下順二の戯曲『夕鶴』の名優、山本安英に重なって見え、一編の芝居を見ているような気がしてなりませんでした。
(3)スリランカから日本で英語の教師になるのを夢みて日本に語学留学したウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)は、名古屋出入国在留管理局施設で収容当時、体調不良の訴えや極度の体重減少があり、飢餓状態で点滴治療や、原因となる緊急入院治療が必要であり点滴治療や緊急入院治療を求めていました。収容された名古屋入管施設で、飢餓状態になるほどの体調悪化し亡くなりました。2020年8月20日から収容されたウィシュマさんは、遅くとも2021年1月18日ごろには摂食困難となり、2月15日の尿検査で「ウロビリノーゲン3+」「ケトン体3+」「蛋白質3+」を示しました。これは「飢餓状態」で電解質異常や腎機能障害を起こしている可能性を意味するのにもかかわらず、本人や支援者が再三求めた点滴や入院、一時的に収容を解く「仮放免」も許されないまま死亡しました。2021年2月23日の名古屋入管施設で撮影された映像では、「担当さん、病院の点滴お願い」、「もうがまんできない、息もできない」と訴えている声が記録されています。3月3日付の「申出書」には「薬をください」という言葉もあります。その3日後、2021年3月6日、ウィシュマ・サンダマリさんの「ワタシ シヌ、コンバン シヌ」という最後の訴えや、点滴と外部病院への緊急搬送を求める支援者の訴えにもかかわらず、救急搬送もされず、飢餓状態であることがわかっていながら、病院に救急搬送されることもなく、点滴などの治療も受けられないまま亡くなりました。ウィシュマさんが収容された部屋を真上から撮影した監視カメラ映像にも「点滴をお願い」と職員に懇願するウィシュマさんの声が記録されていました。前回、12月24日の裁判後、ウィシュマさんのご遺族である妹のポールニマさんは、野村医師が証人尋問で、「もし自分の病院であったならば、血液検査や点滴をおこなっていた」と意見を述べたことに対して、それでは、なぜ、名古屋入管は、血液検査や点滴をおこなわなかったのか、「アネー、アネー」(お願い、お願い)、「点滴をお願い」と職員に懇願するウィシュマさんの声を聴こうとしなかった名古屋入管の新美医師や名古屋入管局長や職員たちに対する怒りを語りました。
◆ウィシュマさんが名古屋入管施設で亡くなる直前のつらすぎる映像(共同通信配信)を、以下をクリックしてご覧ください。
【詳報】ウィシュマさんの映像公開 亡くなる前の監視カメラ
YouTube · 共同通信 KYODO NEWS 2023/04/06YouTube
(4)これまでの裁判で、証言した二人の医師のうちの一人、名古屋入管庁内内科医の新美医師は、支援者が入管に点滴するよう要望していたが、自分には伝えられていなかったと証言しています。ウィシュマさんは収容後に食事を吐くなどして体調不良を訴え体重が急減していましたが、新美医師は食事や経口補水液の摂取量について「確認した記憶がない」と語り、施設職員らに摂取量などを記録するよう指示しなかったと述べました。新美医師は、ウィシュマさんについて、「飢餓状態かは分からないが、糖質が足りない状態だった」とし、栄養の経口摂取を優先した、点滴の必要性については、「意識レベルに問題はなく、(点滴が)必要な状態に当たらないと思った」と話し、「施設に設備がなく、私に権限はなかった。経口摂取できる場合は行わない」と述べ、4回目の診察でも変わった様子はなかったとしたが、その約2週間後に死亡したことには「最後に診た時は亡くなる兆候はなかったので大変驚いた」と自分の責任を回避する証言をしていました。
また、もう一人の被告・国側推薦の野村医師は、①庁内内科医等は、ウィシュマ氏に対する医療対応として、全体を通してみて、適切に対応していて、それは、診療レベルで通常行われる対応であったと考えられる。②ウィシュマ氏が症状として訴える吐き気や嘔吐を治療の対象として選択し、まず消化器内科の受信につなげたことは適切な判断であったと言える。③消化器内科を受診させて、上部消化管に異常がないことを確認し、しびれについては、整形外科医を受診させて、器質的異常がないことを確認した上で、精神科医につなげたことも、適切な判断・対応であったと考えられる。④2月15日の尿検査の後に、血液検査を行わなかったとしても、不適切であったとはいえないと証言しましたが、前回法廷証言で、庁内内科医として、吐き気の訴えや過食と拒食を繰り返す既往症からウィシュマさんに消化器内科、精神科などを受診させたことは「適切な判断だった」と評価しました。また、原告側が、低栄養や脱水状態に陥り、外部で点滴などの必要な措置を講じていれば救命できたと主張しているが、「生命維持を目的に点滴を行うべきだったとは言えない」と証言しました。ウィシュマさんが低栄養や脱水状態だったことは「否定しない」としつつ、死因の特定は困難だと証言しました。また、野村医師は、可能性として断りながら、「施設に入ってから体重が急激に減少したことが一番の根幹だが、いろいろな原因が重なり合い、予期せぬ死亡だったと思う」と証言しました。
(5)次回、2026年1月28日(水)に行われる、 原告・遺族の求める下(しも)医師の証人尋問で原告・被告双方推薦の医師への証人尋問は終了すると思われます。
被告・国は、既に当時の名古屋入管における医療体制などの事実関係は明らかになっており、当時の名古屋入管局長を証人尋問する必要はなく、医師以外の証人尋問は不要であるという見解の意見書を出していますが、亡くなるまでのウィシュマさんが収容された部屋を真上から撮影した監視カメラ映像の260時間分の公開がなされることにより、被告・国側、名古屋入管内勤務医の新美医師、被告・国側の「意見書」を書いた野村医師の主張と事実の違いが明確にわかると思います。名古屋地方裁判所が、被告・国側に対して、監視カメラ映像の260時間分の公開求めることが急務です。
しかし、これまでの被告・国側の医師二人と原告・遺族側推薦の医師への証人尋問を踏まえながら、裁判所が、今後の法廷で、ウィシュマさんを診察した外部病院の医師の他、当時の名古屋入管局長、処遇担当統括、ウィシュマさんの担当の看守、庁内内科等医、庁内整形外科医、看護師の証人尋問を行うことが求められることが浮き彫りになりました。
(6)次回は、2026年1月28日(水) 原告・遺族の求める下(しも)医師の証人尋問が名古屋地裁で実施されます。全国各地の皆さんの裁判傍聴をよろしくお願いいたします。次回1月28日の証人尋問で、原告・遺族推薦の下(しも)医師の証言により、被告・国側の名古屋入管内勤務医の新美医師、被告・国側の「意見書」を書いた野村医師の証人尋問の誤りや矛盾がさらに明らかになることが予想されます。
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<次回、「名古屋入管ウィシュマさん死亡事件国家賠償請求訴訟」第24回口頭弁論>
◇2026年1月28日(水) 10:30~16:30(予定)
◆傍聴整理券配布は名古屋地裁裏で9時半からの予定。
名古屋地方裁判所・第2法廷
原告・遺族の求める下(しも)医師の証人尋問
◇裁判終了後、近くの桜華会館で裁判支援集会を開く予定です。
(7)「名古屋入管ウィシュマさん死亡事件国家賠償請求訴訟」についてのカンパなどの支援については、以下をご覧頂き、ご協力をお願いします。
①名古屋入管死亡事件弁護団
(ご遺族の滞在費や裁判費用等に使われます。)
https://wishmalawyers.wordpress.com/%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%91%E3%81%AE%E3%81%8A%E9%A1%98%E3%81%84/
②ウィシュマさん死亡事件国家賠償請求弁護団
(国家賠償請求訴訟に使われます。)
https://www.call4.jp/info.php?type=items&id=I0000094
全国各地の皆さん、これまでの「名古屋入管ウィシュマさん死亡事件国家賠償裁判」へのさまざまな温かいご支援に心から感謝を申し上げます。
いつも、「ウィシュマさん名古屋入管死亡事件」国家賠償裁判支援・傍聴やウィシュマ・サンダマリさんのご遺族である原告の妹さん(ワヨミさん、ポールニマさん)とお母さんへの激励やご支援、裁判傍聴、裁判支援、弁護団支援やカンパなど、ほんとうに有難うございます。
◆「名古屋入管ウィシュマさん死亡事件国家賠償裁判」、次回、2026年1月28日(水) 10:30~15:30(予定)の法廷・証人尋問の裁判傍聴などに、さまざまな形でのご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
◇最後に、2026年3月6日は、ウィシュマ・サンダマリさんの命日です。
名古屋地裁の裁判官3名に対し、亡くなったウィシュマ・サンダマリさんのご遺族が期待される判決を書いてくださることを心から願っています。


