小泉雅英

先週末から週明けにかけて、三日間(6/13〜15)の「反核・反原発」連続行動に参加した。これらの根底には、「反戦」のテーマが共通していることは、言うまでもない。どの日も予想を上回る大盛況で、福島原発震災事故から15年の現在、この国の状況は、改善どころか、真逆の再稼働への動きなど、原発回帰に向かい、さらに悪化していること、こうした現状への憤りと、多発する地震や、さらなる軍事化、国際的な戦争状況への危機感が、このように多くの人々を結集させたと思う。以下、簡単に報告したい。

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初日の6月13日(土)は、武蔵野市(吉祥寺)で、コリン・コバヤシさんと青木美希さん、お二人の講演と、主催団体(武蔵野政治塾)の橘民義さんを混じえた、ミニシンポジウムがあった。コリンさんは、1970年以来、フランスに在住し、現地の反核・反原発運動に関わり、重要な発言を続けているが、今回は日本各地で、7回ほどの講演を経た後の最終日だった。実は昨年11月に、高木学校(原子力資料情報室)主催の映画と講演の集会が新宿であり、彼の講演を初めてお聴きした。その時は、フランスのNGO/NPO制作のドキュメンタリー映画『チェルノブイリ その後の世界』を観た上で、講演となった。(マフィアとも言える)フランス原子力村など、日本を含む国際原子力利権ネットワークなどについて、豊富な情報に基づき、真に目から鱗が落ちる報告だった。

今回は、時間が限られていたこともあり、もう少し内容を絞り、チェルノブイリ40年、福島15年の現実を踏まえ、とりわけ日本の原発政策の現状について厳しく批判した。チェルノブイリについては、多くの人が既に終わったことと思っているが、実際は何も終わっていないこと、今なお現地の放射能レベルは高く、キノコなどは食べられないこと、子どもたちの病気が進行していること、事故当時の収束作業員(約60~80万人)の約10%以上が、2000年までに放射線障害に因る癌で死亡していること、しかもその死因は、原発事故に因ると認定されていないこと、などを報告された。

福島についても、小児の百万人に1~2人(年間)という稀な病気である「小児甲状腺癌」の疑い有りと認定された子どもが、413人もいて、既にその358人が手術を受けたこと(2026/05/12現在)、医療当局は、事故との関係を拒否し続けていること、他の癌や疾患についても、追跡調査も疫学調査も実施されていないこと、現場の収束作業に従事している労働者(その多くが下請労働者)についても、追跡調査は企業任せで、国家(政府)が責任をもって健康管理するという方針は全くないこと、「100mSV以下では重大な病気にならない」という日本政府(当局)の主張は、米・英・仏で正規の原発労働者(下請労働者を含まず)を対象とした国際的な疫学調査報告「INWORKS 」(2015-24年公表)によって覆されているが、日本政府(当局)は訂正していないこと、さらに日本政府(国家)や国際原子力ロビーは、今なお「福島事故の放射能による死亡者はゼロ」と、事実に反する嘘のメッセージを発し続けていることなどを、厳しく批判した。

こうした背景にある国際原子力ロビーの動きについて、とりわけ「放射能と共に生きる」という発想で、原発事故の責任を住民側に負わせ、被害を受容させる仕組みとして、「エートス・プロジェクト」が作られていて、その犯罪性に注意を喚起された。このプロジェクトは、チェルノブイリ原発の事故後、ベラルーシュで始められたが、その中心人物(ジャック・ロシャ―ル)は、フランスの原子力ロビー(CEPN)のディレクターでもある。その人物が福島原発事故の半年後に来日し、内閣府などで「エートス・プロジェクト」の導入を推奨、安東量子という協力者も得て、広島大学や長崎大学とも協定を締結している。「エートスin福島」を主宰する安東量子氏は、国際原子力ロビーの支援を受けて、「NPO福島ダイアローグ」を設立、国際原子力ロビーとの関係を深めている。『朝日新聞』には、彼女の「季評 福島ダイアローグ」が掲載されているので、目にした方も多いに違いない。

この日の結論として、コリンさんは、「明日起きるかもしれない原発の過酷事故」に備えて、①放射能漏れを監視する「市民測定所」の設立、②緊急時に備えた「市民ネットワーク」の構築、③市民と市民科学者による放射線リスク評価委員会の必要性について提言された。

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次に登壇した青木美希さんは、2011年3月当時、東京では、金町浄水場で水道水が210ベクレル/kgの放射性ヨウ素が検出されたことで、都が乳児に水道水を飲ませるのを控えるように求めたこと、三鷹市の女性の母乳からセシウム137が検出されたことなどを、あらためてデータを示し、当時の状況を再想起させた。さらに今現在も、福島第一原発から300km離れた富士山で、野生キノコにセシウムが検出されることや、昨秋も鳴滝村(山梨県)の野生キノコから、基準値の2.2倍のセシウムが検出されていることが報告された。

こうした現実の上で、この国の政治状況について、図表を駆使して分かりやすく説明し、批判していった。今回、特に強調されたのは、再生可能エネルギー化が促進され、脱原発が進む世界の現状とは真逆に、この日本では原発回帰が進み、企業が再エネから撤退している現状である。例えば、かつて太陽電池のシェア率では2005年度まで、世界の首位を占めていた(ピーク時50.4%/2004年度)が、今や無きに等しいレベル(0.2%/2023年)にまで減退している。風力発電についても、2015年頃までは世界最大の出力(7メガワット)だったが、風車メーカーも次々と撤退している。

こうしたアナクロの状況を生み出したのは何故か。それについても青木さんは、明確に、政府の方針転換、それによる支援資金カットを挙げる。福島原発事故の後、当時の政権党(民主党)は、「2030年代に原発ゼロ」(段階的縮小)を唱っていた。その当時の民主党員は、今どこで何をしているのだろうか。その後の自民党政権では、「原発は重要なベースロード電源」(2014年)、『カーボンニュートラル宣言』「原発の新設は考えていない」(2020年)、『GX実現に向けた基本方針』原子力を「最大限利する」(2023年)と続き、ついに2024年、石破総理は「必要な原発稼働は進めなければならない」と確認した。この背後には、「電力総連」を支持母体とする国民民主党(玉木代表)による原発新増設の申し入れもあった。玉木氏に同行した浜野喜史氏(関西電力労組書記長)は、電力総連会長代理なども歴任。

驚くべきことに、大手電力会社や関連企業から、各省庁に(2024年10月時点で)78人もの職員が、出向という形で送りこまれていること、彼ら経産省や内閣府に出向している電力社員は、「会社に持ち帰って政府案を作成している」ということだ。資金の面からも、パーティー券の購入を始め、日本原子力産業協会の会員企業から、自民党は6億円(2023年)を超える献金が行われている。こうして、例えば関西電力の取締役の平均報酬は、(原発停止前)3,770万円、(停止中)1,786万円が、2018年度(再稼働後)4,169万円へ回復/上昇した。その他、原子力規制委員会には、関電から2人をはじめ東電、日本原電、北陸電力など原発で利益を得る企業が入っていること、「規制」委員会とは名ばかりのものだ、ということは銘記しておくべきだろう。

こうした日本の状況だが、海外では、フランスを除き、脱原発が進み、再生エネルギーが促進されていることを強調された。その一例として、集合住宅のベランダにも設置し、プラグを差し込むだけの簡単なソーラーパネルがIKEAで販売されていて、利用されていることが紹介された。これが日本でも普及すれば、消費電力の3割を占める家庭の原発依存度は下がるに違いないと思った。また、日本でも、営農型のソーラーを活用している事例も紹介されたが、まだ希望はあるのだ。短い時間だったが、内容豊富な講演だった。当日、会場で青木さんの新著『それでも日本に原発は必要なのか? 潰される再生可能エネルギー』(文春新書)を購入したが、扉に署名と共に「希望を」と書いて下さった。有難うございました。共に頑張りましょう!(つづく)2026/06/17