堀切さとみ

5月24日、さいたま市で、福島の小児甲状腺がん患者について白石草(はじめ)さんが講演した。(主催は原発問題を考える埼玉の会)
健康被害と放射能の因果関係を証明するのは難しいが、チェルノブイリでは唯一小児甲状腺がんだけは、原発事故によるものだと認められている。
100万人に一人か二人だった小児甲状腺がん。それが福島原発事故後は403人だ。東電側はこれを「過剰診断」「死ぬまで知らないままで済んだはず」と言い張っている。これを支えているのが福島県で、30年続ける筈の県民健康調査を打ち切ろうとさえしている。
甲状腺がんは死ぬ病気ではない、だからガタガタ言うんじゃないと言う人がいる。医者もいう。「大したことありませんよ」と。それを言うなら甲状腺がんは、防ぎようのある病気だったのではないか。
甲状腺は食べ物に含まれるヨウ素によってホルモンを分泌する場所であるため、放射性ヨウ素を間違って取り込んでしまう。だから事故後はすぐに安定ヨウ素剤を飲めば、放射性ヨウ素をブロックすることができた。それなのに、服用させた自治体はわずかである。
一次検査で異常ありと診断されたら穿刺吸引細胞診を受けなくてはいけない。甲状腺は頭と胴体をつなぐ場所にある〈急所〉だ。そこに針が刺される映像を白石さんは映し出した。それから癌を摘出手術する映像も。わずかでも血管を傷つけたら死んでしまう。それも取り除けばOKというわけではない。福島の患者は癌がリンパに散らばっているケースが多いという。
そして、転移した患者へのアイソトープ治療の過酷さ。100mキュリー(3.7ギガベクレル)という高濃度の放射性ヨウ素カプセルを飲ませて、肺に転移しているがん細胞を破壊するという。患者自身が放射能を発するので、ドクターも看護師も近づけない。鉛で遮蔽された部屋で放射線量が下がるまで過ごさなければならない。そこで使用したティッシュもタオルも、放射性廃棄物として、厳重に処分される。
10年にわたって小児甲状腺がんの若者たちを取材し、裁判を支えてきた白石さん。大人でもガンと宣告されただけでも動揺するのに、10代で罹患した彼女たちは驚くほど冷静だと言う。親をこれ以上悲しませたくないというだけでなく、感情を表に出すなと社会が抑圧しているのだ。
2022年に始まった甲状腺がん裁判(現在原告は7人)は最終段階に入った。この裁判で負けたら、原発事故による健康被害はなかったことにされる。「原発事故が起きても大丈夫」という神話ができ、「避難させたストレスの方が大きい」という論理がまかり通っていくだろう。そう白石さんは警鐘をならす。
甲状腺がん裁判の原告の一人を主人公にした映画が、もうすぐ完成する。出会った時には、彼女にカメラを向けることは出来ないと思っていたと白石さんはいうが、「自主上映会ならば」と素顔での撮影に応じてくれたという。彼女を決断させたものは何なのか、想像してみてもいいのではないか。
次回第18回口頭弁論は6月17日(水)14時から103号法廷にて。原告たちの意見陳述集も販売されている。<申し込みはこちら>

