高井弘之 「戦争止めよう!沖縄・西日本ネットワーク」共同代表/写真
みなさんへ。東アジアで進む日米・西側中心国による「中国への戦争態勢」構築と、ベネズエラ・イラン等に対して米国らが行なっている侵略を目前にしながら、このふたつの現実の関係をどう捉えるべきか、歴史的視座も踏まえて、書いてみました。このテーマは、この前、発信させていただいた新しい拙著『「中国への戦争態勢は誰のための何のためのものか』の内容と重なるものですが、発行後に行われ始めた新たなイラン侵略の状況を目前にしつつ、小論として整理してみました。(2026.3.22 記)

沖縄から西日本・全国へと拡大する「軍事態勢―軍事拠点化」
いま日本では、「中国への戦争態勢―戦争準備」が急ピッチで構築されている。それは、沖縄・奄美で2010 年代の半ばから始められ、数年前からは九州・西日本・全国へと拡大した。高市政権は、この戦争 態勢―体制をさらに強化しようとしている。
ところで、この「新たな軍事態勢」の構築について、政府・マスメディアは、「中国への抑止力」強化 を目的とするもの、つまり、「中国の日本への攻撃を思い留まらせる」ためのものだとしている。多くの 国民もその必要性を感じ、多額の予算を要するこの大軍拡に反対していない。戦争態勢の構築は、まさに、「中国脅威論」を理由・推進力として進められているのである。ならば、この戦争準備を止めるため には、日本社会に蔓延する「中国脅威論」を克服・解体することが必要だろう。
いま、私たちが見ていること―ベネズエラ・イラン・キューバ
今年1月の初め、アメリカはベネズエラへ侵攻し大統領夫妻を自国へ拉致・連行した。その直後、トランプ大統領は、「我々は国を運営していく」――つまり、他国であるベネズエラを統治・支配していくと 宣言した。2月末、アメリカとイスラエルはイランに先制攻撃―侵略を始め、「最高指導者」を含む国の 要人をそろって殺害し、多数の子どもたち・国民を殺し、このいまも侵略を続けている。キューバに対しては、長期にわたる「経済制裁―封鎖」という名の「戦争(兵糧攻め・首締め)」で徹底的に締め付け、同政権を崩壊させようとし続けている。そしていま、ベネズエラなどからの石油供給を完全に止めるなど、 人びとの生活・生命の維持が極めて困難になるほどのさらなる封鎖を実行している。
上記の国ぐには、数十年に及ぶ米国の工作や「制裁―経済封鎖」に耐え、米国の支配と利益追求に従わず抵抗し続けている国である。また、中国との関係が非常に近い国でもある。その国ぐにに対する米国の封鎖・威嚇・攻撃・侵略は、その政権を転覆して、自らの利益と支配に服す「親米政権」をつくるための ものである。むろん、それら米国の行為は国際法違反である。
そして、日本では、何をするかわからない「無法の国」で、日本を攻撃して来る「脅威の国」と見なされている中国は、これら、アメリカの無法・野蛮な行為の犠牲になり被害を受け続けている上の国ぐにを 支持・支援し続けている国である。振り返れば、長い間、アメリカの侵略戦争に苦しめられたベトナムを 支援し続けたのも中国である。〔注1〕
帝国主義国としての「西側中心国」
第二次世界大戦後、帝国主義諸国は「先進国」と呼ばれるようになったが、その西側「先進国」はいまなお帝国主義国であって、そこから脱した位置・姿勢に在るわけではない。「人道・人権・民主」などの 美名を掲げながらこれら諸国が行なったアフガニスタン・イラク・リビアに対する戦争は、実際は、自ら が優位に立つ「秩序」に従わない国・政権を潰すための侵略戦争だった。それは、一方的な先制攻撃や無 差別殺戮など国際法や人権に明白に反するもので、そこには、彼らが言う「法の支配」も「リベラルな国 際秩序」への姿勢も全く存在していなかった。
第二次トランプ政権は、このような「美名」の装いをかなぐり捨てて、他国を支配するための軍事侵略 や軍事力による威嚇をあからさまな形で展開しているが、自らに従わない国を武力や政治工作で圧殺す る姿勢とやり方は、米国のこれまでの軌道の上にあるものである。
「力による一方的な現状変更」をし続けているのは誰か
日本政府ら西側首脳が発する中国などを指しての、「国際秩序に挑戦している」「力による一方的な現状変更を許さない」という言葉の意味も、自分たち西側が中心であるこれまでの国際秩序に挑戦しその「現状」を変更することは許さない、ということだ。世界を自らの利益と欲望に合わせて秩序化して来た帝国主義諸国は、その「秩序」を維持し、自らの没落を防ぐために、いま必死なのである。
これら諸国の支持・支援のもとイスラエルが行なっているパレスチナ・中東地域への侵略・虐殺も、上 記・米国の行為も、まさに「力による一方的な現状変更」である。そして、日英独仏などの西側中心国は、 今回や前回(昨年6月)のアメリカ・イスラエルによるイラン侵略への対応で、先制攻撃・侵略した米・イ スラエルではなく、それへの対抗措置を取った(西側ではない)イランの方を一方的に非難している。〔注 2〕
一方、中国は、上述のイラク・リビアに対するものを含め米・西側が引き起こすこのような侵略のたび に、一貫して武力行使――武力による主権侵害に反対し、それを国際法違反だとして批判し、平和的解決 を主張している。〔注3〕
「世界の現実と歴史」を踏まえて「東アジアの状況」を捉えよう
以上のような「世界の現実と歴史」を目の当たりにしていても、東アジアで侵略や攻撃などの不法行為――「力による一方的な現状変更」を行なうのは、米・西側中心国ではなくて中国だと、いまだに多くの 人びと・メディアが思い込んでいるのが、ここ日本の現状である。
しかし、ここ東アジアにおいても、他国(中国)を挑発し脅威を与える大規模な合同軍事演習を繰り返 し行ないながら軍事包囲網を構築しているのは日米を中心とする西側中心国である。これらの国々は、 1840 年代から 1940 年代の100 年に及ぶ時期のいずれかに、あるいは継続的に、中国への侵略を行なって来た帝国主義列強と呼ばれた諸国でもある。このとき同様、日本以外の国ぐには、はるか遠くから中国の 近くまで軍隊を派遣して実戦的軍事演習を行なっている。一方、中国がアメリカ近くまで遠征して軍事演習・軍事行動を行なったことは、過去にも現在にもない。
現在、東アジアにおいて、中国への軍事態勢を構築しているのは、歴史的にも現在も世界における侵略・戦争推進勢力である米・西側中心国であることに、私たちはもっと意識を向ける必要があると思う。 アメリカを中心とするこれら諸国の世界への姿勢、世界への行動形態・内容が、ここ東アジアにおいては 一変するなどということがあるだろうか。
世界史の大転換期としての現在
数百年にわたって世界を支配して来た欧米日諸国は、いま、歴史的な没落過程に入り、帝国主義諸国による世界支配の体制は崩壊し始めている。第二次世界大戦後も世界の政治・経済を支配して来た西側「先 進国」がその力を失っていく一方、中国・インド・インドネシア・ブラジルなどを中心にグローバルサウ スの国ぐにが経済発展を遂げ、政治的・外交的にも国際社会における存在感や発言力を獲得して来ている。
現在の米国のなりふり構わぬ言動も、百年近くにわたって世界を支配して来た自国の没落過程に対す る「あがき」と言える。米・西側中心国のこれまで以上のむき出しの攻撃性や、イランへの一方的非難に見られるような余裕のなさも、自らの没落と自らが支配して来た国ぐにの台頭という現在の状況から来 ているものだろう。それだけに、この追い詰められた状況下で、さらに暴力的・軍事的・理不尽に行なわれるだろう米・西側の行動にどうやって歯止めをかけるかが、この大転換期を生きる私たちに課せられた 重要な課題である。
日米・西側による中国軍事包囲網の構築も、台頭する国ぐにの中心である中国の「弱体化」を目的とするものであるから、これを阻止することは、大転換期における私たちの歴史的課題でもある。
平和を求めるグローバルサウスの国ぐに
いまグローバルサウスと呼ばれている、かつて、帝国主義国に侵略・植民地支配され、独立後も実質的な支配を強いられ続けた国ぐにの多くは、「平和な国際環境と紛争の平和的解決」を追求することを原則 とし、かつ、具体的に、ベトナム・イラク・リビア・パレスチナ等々に対する侵略戦争に反対して来た。また、世界の政治・経済システムにおいても、帝国主義諸国が暴力的につくり出す収奪と不平等の世界ではない、公正で平等な国際秩序を求めている。(画像=グローバルサウス)

実際、これらの国ぐにの経済発展は、西側帝国主義諸国のような他国への軍事侵略・占領・支配などを行なわずに達成されたものである。これら諸国は、長期にわたる侵略戦争や軍事占領によって自国の自立 的発展の機会を奪われ続けて来たその歴史的経験から、「平和な国際環境」こそが自国の発展を保障するという認識を共有している。
帝国主義・植民地主義に反対し、「平等・公正で平和な国際秩序」を求めるこの姿勢は、1955 年に開催 されたアジア・アフリカ会議における「平和十原則」、その後の非同盟運動、現在の BRICS の政治姿勢の 基底に一貫して存在し続けて来ているものである。上に紹介した中国の「平和への姿勢」も、この歴史の潮流の中に在るものである。〔注4〕
グローバルサウスの国ぐに・人びとと共に!
西側の言説・情報環境の中にどっぷりと浸かり、「西側先進国」こそが平和や正義を尊重し、人類の進歩を推進して来たと思い込んでいる人が多数の日本に住む私たちは、いま、人類史が、上のような〈歴史的現在〉に在ることを認識しなければならないと思う。そしてそれは、戦争準備の推進力たる「中国脅威論」を克服・解体する視座を私たちが獲得することにつながることでもある。
さらに、私たちは、日本を、「西側・帝国主義陣営」から抜けさせ、グローバルサウスの国ぐに・人びとと共に生きる――生きていける国へと変えていかなければならない。そのためには、グローバルサウス 諸国が歴史的に形成して来ている、帝国主義批判に基づく世界への「平和的共存・共生」の姿勢――「平 等・公正で平和な国際秩序」を求める姿勢を、日本も学び、自らのものにしなければならない。そしてそれは、そのまま、東アジアでの戦争を阻止することにつながるものだ。〔注5〕
〔注1〕キューバの副首相は、食料や生活必需品の支援を続ける中国に対し、次のように述べている。 「攻撃的な状況が高まり、米国による経済的・商業的・金融的封鎖が前例のない形で強化されている困難な時期に、この援助に深く感謝しています」(2026 年 1 月/出典:キューバ大統領/X)
〔注2〕『イスラエル及びイランの間の最近の情勢に関するG7首脳声明』(2025年6月16日)からの抜粋。「我々は、イスラエルは自国を守る権利を有することを確認する。我々は、イスラエルの安全に対する我々の支持を改めて強調する。・・イランは、地域の不安定及び恐怖の主要な要因である。」
〔注3〕米国のベネズエラ侵攻後の国連安保理で、中国の大使は以下のように発言した(抜粋/2026 年 1 月 5 日)。 「我々は米国に対し・・国際法および国連憲章の目的と原則を遵守し、他国の主権と安全への侵害を停止し、ベネズエラ政権の転覆を止め、対話と交渉による政治的解決の軌道に戻るよう促す。・・軍事手段は問題解決の道ではなく、武力の濫用はより大きな危機を招くだけである。」
〔注4〕
◆第 19 回非同盟諸国首脳会議「カンパラ宣言」より(2024 年)。 「国連憲章と国際法、特に主権、主権平等、領土保全、不干渉、紛争の平和的解決の原則を尊重し、促進する。」
◆第 16 回 BRICS サミット「カザン宣言」より(2024 年)。 「我々は、寛容と平和的共存が、国家間及び社会間の関係における最も重要な価値及び原則の一つであることを強調する。」
●中国・秦剛外相の発言 「中国の発展は安全な国際環境と不可分の関係にある」(ハンギョレ新聞・日本版オンライン/2023-02-23)
●中国・胡錦涛主席の発言 「中国は終始一貫して平和的発展の道を歩んでいるが、これは・・自らの根本的な利益から導かれる戦略上の選択の結果である」(中国共産党第 17 回全国代表大会における報告[2007 年])
●中国・習近平主席の発言 「中国の夢の実現は、平和な国際環境、安定した国際秩序と切り離しては考えられない。国内と国際という二つの大局を統一的に考慮し、あくまでも平和的発展の道を歩み続け、互恵・ウィンウィンの開放戦略を 進め・・。」(中国共産党第 19 回全国代表大会における報告[2017 年])
「質の高い発展は社会主義現代化国家の全面的建設の最重要任務である。発展は党の執政・興国の第一義的 任務である。」(中国共産党第 20 回全国代表大会における報告[2022 年])
※ 現在進行する「中国への戦争態勢構築」やグローバルサウスの台頭など「世界史の大転換期」についての詳しい状況・資料などは、最近発行した以下の拙著・ブックレットをぜひ読んでいただければと思います。
『「中国への戦争態勢」は誰のための何のためのものか―東アジアでの戦争を止めるために―』 (A5 判 172 頁/価格 1300 円。お問い合わせ・ご注文は私のメールアドレスまでお願いします。takaihiroyuki123@gmail.com )
〔注5〕 この「帝国主義批判に基づく世界への『平和的共存・共生』の姿勢」は、日本の憲法及びこれを守る運動の多くに欠けているものではないかと思う。

