市民団体が国家安全保障戦略の見直しで提言

<竪場勝司>
 一般社団法人「核兵器をなくす日本キャンペーン」(以下:日本キャンペーン)は3月5日、東京の参議院議員会館で院内集会を開き、高市政権が見直しを進めようとしている日本の国家安全保障戦略に関しての提言を発表した。提言は「核兵器をなくすことが、日本の安全保障につながる」として、安全保障の手段として核軍縮を打ち出すことや、非核三原則の堅持を求めている。

 日本キャンペーンは、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)やピースボートなど全国の45団体でつくる「核兵器廃絶NGO連絡会」が母体となり、2024年に結成された団体。2030年までの日本の核兵器禁止条約への参加を目指して、超党派で活動している。

 高市氏が25年10月の首相就任時に、国家安全保障戦略を含む安保3文書を26年内に改定すると表明したことを受け、日本キャンペーンでは「声を上げる必要がある」として、「2026国家安全保障戦略への提言」をまとめた。

「非核三原則の堅持」を求める

 集会では、日本キャンペーン副代表理事で、日本被団協事務局次長の和田征子さんが「提言の中で、私たち被爆者が一番案じている項目は非核三原則の堅持です。持たず、造らず、持ち込ませず、国是とされてきたこの原則が見直されようとしています。核兵器を持ち込ませることが、日本の安全保障になることはありません。周辺国からのリスクを高めることになります。核兵器をなくすことは被爆者だけの問題ではありません。今の、そして将来の日本国民の生活、生命、財産を守ることであり、人類の命、財産、そして文明を守るということ。これを安全保障戦略としていただきたい」などと訴えた。

 続いて日本キャンペーン専務理事で、ピースボート共同代表の川崎哲さんが提言の内容について説明した。現在の世界の状況にいて、川崎さんはロシアによるウクライナ侵攻、アメリカによるイラン攻撃などの例を挙げて、「核兵器保有国による、あからさまな国連憲章違反、国際法違反が行なわれている」と指摘。「大国による『力の支配』ではなく、平和を求める国家と市民のグローバル・マジョリティの連帯こそが必要だ」と語った。

「東アジアの軍縮対話」で核の脅威の削減を

 提言は(1)核抑止のリスクを直視し、「核軍縮は安全保障の手段」と位置づける(2)「非核三原則の堅持」こそが、日本の安全を守る(3)「核兵器の非人道性」の普及が、日本への核使用リスクを下げる(4)「東アジアでの軍縮対話」で、日本にとっての核の脅威を削減する、の4つを柱としている。

(1)について、川崎さんは「核抑止が本当に成功する保証はなく、いつでも破綻しうる。政治指導者の誤認やシステムの事故によって、人類は何度も核戦争の手前を経験してきた。抑止力の強化は、他方による抑止力強化を招き、軍備増強のスパイラルをもたらす」と指摘。「国家安全保障戦略では、核抑止への依存を減らし、核兵器を削減する『核軍縮の取り組み』を安全保障の手段として打ち出すべきだ」と強調した。

(4)に関連して、川崎さんは「中国との『軍縮対話』を制度化することを次の国家安全保障戦略で明記してもらいたいと」要望。また、日朝国交正常化に向けて取り組むことの明記と、「核兵器のない東アジア」の構想を打ち出すことを求めた。
 
 次に東京都立大4年生の森本輝穂さんが、日本キャンペーンのボランティアには25人ほどのユースのグループがあることを紹介し、「この提言や熟練した活動家や専門家の一意見ではなく、若者一人ひとりがたくさん集まってつくっている日本キャンペーンの意見なのだと捉えていただきたい。提言の背後にあるたくさんの若者、たくさんのサポートしているみなさんのことに思いをはせて、この提言をもって、核なき世界へ歩みを進めていただきたい」と呼びかけた。

 最後の登壇者となった、日本キャンペーン学術アドバイザーで、ピースデポ代表の鈴木達治郎さんは「核抑止という考え方を見直さない限り、核戦争は起きるかもしれない。この危機感をまず共有したい」としたうえで、提言として強調したいポイントとして、「核抑止のリスクを直視する」を挙げた。

 院内集会には立憲民主、共産、公明、社民、中道改革連合の各政党から国会議員が参加し、多くの議員が「提言に全面的に賛同する」と発言した。
 日本キャンペーンでは今後も各政党や政府の関係部署を回って、提言の趣旨や内容を伝え、国会での議論につなげる活動を続ける予定だ。