2026年1月27日 ルイス・フェリス・レオン(レイバーノーツ・スタッフ)

【解説: 今年に入ってミネソタ州で移民・税関捜査局ICEによる移民の拉致・排除が続き、三人が射殺された。この蛮行に対して1月23日に州都セントポールと隣接するミネアポリス市で大きな抗議行動やストライキが取り組まれた。レイバーノーツ誌2月号は現地の労働組合の取り組みの詳しい報告を掲載している。長いので一部省略したが、労働組合がデモに参加するだけではなく、ストライキを含む職場での抗議運動を様々な形で展開していることが良く分かる記事となっている。セントポールとミネアポリスの二つの市は合わせてツィンシティーと呼ばれている。 レイバーネット国際部 山崎精一】

1月23日ミネソタ州でのICE抗議デモに参加する労組員たち


組合のニット帽をかぶった男たちの顎鬚にはつららが垂れていた。ミネアポリス市中心部の大型商業ビルのロビーは一般に開放され、人々は互いの痛んだ足を揉み合い、足用カイロの粘着テープをはがして靴下の下に貼り付け、厚手の防寒ブーツに足を押し込んでいた。1月23日、「移民・税関捜査局ICEをミネソタから排除せよ:真実と自由の日」と題された抗議行動で、5万人以上と見られる人々がミネアポリス中心部を行進した。参加者は氷点下20度の寒さに耐え、眼鏡は曇り、霜が薄い膜となって張り付いた。ICEとその数千人の覆面捜査官が、戦闘用武器と一緒に市から撤退するよう要求していた。さらに、1月7日にレニー・グッドを殺害した捜査官の起訴と、議会によるICEへの追加資金供与拒否も要求していた。

最初の大きな行動は午前10時頃、聖職者と地域団体が主催したミネアポリス・セントポール国際空港での抗議行動であった。デルタ航空とシグネチャー・アビエーションに対し、同空港経由の強制送還便の運航支援中止を求めた。100人の聖職者が道路上で歌い、市民的不服従の行為としてICEに拉致された移民たちのためにひざまずいて祈りを捧げた。拉致されたUNITE HERE(ホテルレストラン・縫製繊維労組)ローカル17の組合員たちの顔と名前が特大ポスターに掲げられた。さらに約1000人の抗議者がこの行動に加わった。

最大の動員は午後遅くに行われ、労働者と地域団体が市の中心部を行進し、州の2つのプロバスケットボールチーム(男子ミネソタ・ティンバーウルブズ、女子ミネソタ・リンクス)の本拠地であるターゲット・センター・スポーツアリーナで集会を開いた。この集会には全米サービス従業員労組(SEIU)、アメリカ教員連盟(AFT)、全米通信労組合(CWA)の会長らが登壇し、2万席のほぼ全てが埋まった。

商業ビルの1階上、食堂エリアへ続く通路を渡ると、労働者たちはレストランの金属製シャッターが下ろされ、椅子がテーブルの上に載せられている光景を目にした。デモ参加者の喜びの瞬間だった―1934年のミネアポリス市のゼネラルストライキや2006年の全国的「移民不在の日」政治ストライキを彷彿とさせるような市内全域の業務停止を実現したのだ。
AT&Tコールセンターでは「100人以上いる従業員のうち、まだ働いているのは20~30人だけ」とCWAローカル7250の組合員ロリ・ウルフは語った。「地元の小売店ではどこでも、自宅待機あるいは無給で仕事を休む選択肢が提示され、何の罰則もなかった」。

ビジネス界が「緊張緩和」を要請


外気の極寒に震える労働者たちとは対照的に、ミネソタ州の大手企業トップたちは、全国的な大規模行動がさらに拡大した場合の事態を恐れて戦慄していた。
ターゲット、USバンコープ、メイヨークリニック、3Mなど60社のCEOは1月25日、ICEの州からの撤退を明示的に要求せずに、「緊張緩和」を求める曖昧な公開書簡を発表した。

しかし1月23日までに数百の中小企業が閉店し、ドアに連帯の意思を示す看板を掲げていた。「普段は賑わうレイク通りを車で走ると、多くの店舗が空っぽだ」と語るのは、ミネアポリス空港の元手荷物取扱員で国際機械工組合員だったキップ・ヘッジズは語る。ツインシティーズ地域のハーフプライスブックスとピースコーヒーに勤務する全米食品商業労働組合(UFCW)ローカル663組合員が雇用主に閉店を迫った。「組合員は各店舗の店長と『その日に店を閉める重要性』について繰り返し話し合い、店長が会社に圧力をかけた」と、ローカル663執行委員でスワード・コミュニティ協同組合でソーセージを作っているポール・カーク=デイビッドフは説明する。UFCW加盟の食料品協同組合(数百人を雇用)は全て休業。組合旗を掲げた組合員と執行部がデモ行進に参加した。

UNITE HEREローカル 17、事務専門職従業員労組OPEIUローカル12、アメリカ劇場映画従業員連合労組IATSEローカル13、SEIUローカル26、アメリカ州郡自治体従業員組合連合AFSCME第5地域評議会の組合員を雇用する事業主もその日は休業した。休業した事業所には文化施設、クラブ、レストランが含まれ、ミネアポリス美術館、ミネソタ科学博物館、ガスリー劇場、アメリカン・スウェーデン研究所、ビチョタ・コーヒー、ファースト・アベニューの音楽会場7か所などが挙げられる。その他の施設は最小限のスタッフで営業した。

移民が経営する店舗も多くが休業した。カーメル・モールやモンタウン・マーケットプレイスの店舗も含まれる。行動日前から閉店していた店舗もあった。従業員がICEを恐れて出勤しなかったためか、あるいは連邦当局による混乱が収まるまで休業すると経営者が判断したためか。気温がマイナス23度と21世紀で最も寒い日の一つだったため、天候を理由に休業した店舗もあった可能性がある。

労働を拒否した従業員や事業停止に追い込まれた事業主の正確な数は不明だ。しかしミネアポリス中心部のビル間スカイウェイの大きな窓から見える限り、5万から10万人のデモ参加者が街頭に溢れ、交通を麻痺させ、横断幕を掲げ、手袋をはめた手で手作りプラカードを振っていた。

三人が射殺

ミネアポリスとセントポールでICE連邦捜査官が市民が拉致し、それを防ごうとするミネソタ州民と対峙したため、このストライキが起こった。連邦捜査官は推定3,000人を逮捕している
ICEは三人を射撃し、二人のアメリカ市民、レニー・ニコル・グッドとアレックス・プレッティを殺害した。プレッティは退役軍人省病院の集中治療室看護師であり、アメリカ連邦政府職員連合ローカル3669の組合員であった。彼は行進の翌日に殺害された。ICEはさらにフリオ・ソサ=セリスを銃撃して負傷させた。また5歳のリアム・ラモスとその父親を拉致した。

国土安全保障省当局者は1月23日のストライキを「狂気の域を超えている」と評し、「なぜ労働組合幹部たちは、公共の安全を脅かす存在を地域から排除するのに反対するのか?」と付け加えた。

ミネソタ州民はまた、ターゲットと国内最大の一戸建て住宅開発業者D.R.ホートンに対し、ICEとの協力を停止するよう求める平和的抗議活動や座り込みを組織した。郵便労働者と空港労働者も、ICE職員を郵便施設から排除し、ミネアポリス・セントポール空港(MSP)から連邦移民職員を締め出すよう要求する集会を開いた。

「人々が一丸となって行動する姿を見ることで、私は前へ進めるのです」と、エリトリア出身の空港飲食サービス従業員でUNITE HEREローカル17の組合役員であるフェベン・ギラガバーは、1月23日の空港集会において語った。「寒さは怖くない。今一番怖いのはICEだ。ICEは多くの仲間を拉致している。それに仲間たちは仕事に行けていない。家に隠れているんだ」昨年以降、ツインシティーズ地域ではUNITE HEREローカル17とSEIUローカル26の組合員計36名がICEに拉致されている。

SEIUローカル26で組合組織化を進めているソマリア人ウーバー運転手ハムサ・フセインは、収入が30%減少したと語る。「誰も外出しない。人々は食料品店や学校に行くのを恐れている」
空港でタクシーが客待ちする駐車場でさえ、ICE捜査官に嫌がらせを受けると彼は付け加えた。「『市民権を持っていますか?』と尋ねてくる。『はい、市民です』と答えると、『どこで生まれた?』と聞いてくる。これは違法な質問だ。私は17年近くここにいる。だから権利のために立ち上がることを恐れない。ICEは毎日2、3回も私を止め、受け入れられない馬鹿げた質問をしてくる。『私は米国市民です』と言うと、私のアクセントを聞いて、『いや、お前のアクセントはおかしい』と言うのです」

こうした威圧が運転手たちの決意を固めた。フセインによれば、組織化委員会は3年前には数百名のメンバーだったが、今では3,000名に増えた。「組合の活動を見れば、人々は活気づき自信を得るのです」と彼は語った。

空港での逮捕

約2,000人が空港経由で国外退去させられた。「我々はICEの撤退を求め、ミネアポリス・セントポール国際空港が何らかの対策を講じることを求めたい」と、全学年・全教科を担当した元准教師レニーは語る。「私がかつて勤務し、現在はボランティアとして関わる学校に通う子どもたち、特に有色人種の子どもたちは、学校に来るのが怖いのです」
空港では、機動隊が聖職者の列の後方に並び、制服に結束バンドを装着し、道路封鎖を中止するよう警告した。「生きる権利は誰にでもある」と聖職者たちは歌った。みな防寒スーツ、厚手の冬用コート、スキーゴーグル、防寒ブーツを身に着けていた。「全員が逮捕覚悟で戦い抜く」その後、警官たちは一人ずつ道路から引き離し、手錠をかけ、スクールバスに積み込んだ。

数千人が病欠申請

セントポール市の教育関係者は教育委員会に閉鎖を迫った。「1946年、私たちの先人たちは米国史上初の組織的な教師ストライキを決行しました。当時差し迫った必要性であったトイレットペーパーと教科書を求めてのストライキでした」とセントポール教職員連盟SPFEローカル28執行部は1月13日の組合員向けメッセージで記した。「そのストライキは違法でした。その決断は軽々しく下されたものではなく、教職員たちは生徒のニーズを満たすために必要な行動を取ったのです」「今こそ人々がどちらの側に立つかを選ぶ時です。1946年と同様に、SPFEは生徒とセントポール住民の側に立つことを選択します」と執行部は述べ、ただし「SPFEは各組合員に対し、この行動の日に、そしてこの重大な瞬間にどう応えるかを自ら判断するよう求めています」と付記した。

このアプローチは功を奏した。1月22日、教職員たちは生徒とコミュニティを支援するステッカーを身に着け、行動を起こした。1月23日前に数千人が病欠を届け、代替教員の手配は間に合わなかった。教育委員会は極寒のため学校を閉鎖した。

ミネアポリス教職員連盟(MFE)の組合員はとっては1月23日が採点日だったため、教員は学校またはリモートでの採点を選択可能だった。しかし大規模な行進では青いMFE帽子の海が目撃されたが、組合員の公式参加人数は公表されていない。

ストライキ禁止条項の回避策

この日のストライキを組織した組合には、SEIUローカル26、ホスピタリティ労働者(UNITE HEREローカル17)、通信労働者(CWAローカル7250)、大学院生労働者(GLU UEローカル1105)、バス運転手・整備士(都市交通連合労組ATUローカル1005)、舞台係(IATSEローカル13)、 事務職員(OPEIU地方支部12)、自治体職員(AFSCME評議会65)、医師(SEIU-CIR)、ミネアポリス・セントポール教職員労組が含まれていた。

AFL-CIOの州組織であるミネソタ州労働組合評議会も、傘下の5加盟労組に続きストへの参加を表明した。その他の支持団体には、宗教施設、移民権利団体、女性団体、賃借人団体、人種正義団体、ヒスパニック労働者センターの「闘う労働者連合(CTUL)」が含まれた。

ストライキ禁止条項を回避するため、安全上の懸念を理由に、または病欠や私用休暇を利用して、仕事を休むよう組合員に暗黙の了解を与えていることを複数の組合関係者は認めた。セントポール教職員連盟ローカル28とSEIUローカル26はまずストライキ闘争への参加を表明し、その後にロックアウトや報復を招かずに大規模な職場放棄を成功させるための回避策を構築した。

UNITE HEREローカル17の組合員は経営者に押しかけて営業停止を要求、さらに労働者がこの日休んでも懲戒処分を受けないよう求める請願署名に取り組んだ。これらの要求を押し進める上で強力な保護があったのは、ミネソタ州の「有給病気・安全休暇法」が、ほとんどの雇用主に病気・負傷・予防医療・雪で休校した子供の世話のための有給休暇提供を義務付けているためだ。
教育委員会が学校閉鎖を決めたことで労働者には追加の保護が生まれたと、UNITE HEREローカル17の書記・会計担当シェイ・フリーバーグは述べた。レストランやその他の施設から約500人の組合員が参加したと推定している。

組合認証の後最初の労働協約締結を目指しているスターバックス労働者連合は、不当労働行為ストライキで6店舗を閉鎖し、ICEの州からの撤退を要求した。

ミネソタ大学では、組合員と学生団体が業務を縮小。大学側は極寒を理由に挙げ、教員と大学院生労働者にリモート勤務を許可した。しかし同時に、病欠休暇の使用に対して厳しい警告を発し、休暇や私用休暇は上司の事前承認を得た場合のみ使用可能と通告した。

大学院生労働者はこうした制限を巧みに回避した。「学部と直接話し合ってはいないが、学科長は労働者に非常に理解がある」と人文科学部の匿名希望者は語る。「大学からのメール後、協約に違反せずに休暇を取る方法について学科長がメールを送ってくれた」別の学部の労働者は、上司が出勤管理に厳格ではなかったと語った。「私の場合、時間を柔軟に調整できました。つまり、週の前半に仕事を少し多くこなすことで、その日を部分的または完全に休むことができたのです」

ミネソタ州看護師協会と都市交通連合労組(ATU)ローカル1005はストライキの呼びかけを支持したが、その組合員は仕事を続けた。「何人かは欠勤したと思うが、その数は少なかっただろう」と、バス運転手でATUローカル1005の職場委員を務めるライアン・ティムリンは語った。「私の知る限り、ライトレールの運行に若干の混乱があった程度だ」バスに主な影響を与えたのは、ミネアポリスの市中心部行われた大規模なデモ行進だった。

ICE が戸別訪問

ゼネコンは建設労働者を確保するのに苦労していた。労働者の 80% もの欠勤者が出る現場もあるという噂も飛び交っている。地元の活動家が、ミネアポリスのラテン系住民が住む地区で、ICE の捜査官が戸別訪問している様子を捉えた 監視カメラのスクリーンショットを見せてくれた。その家の労働者が迅速対応ネットワークとこの情報を共有したため、誰かがその地域を偵察して、連邦捜査官がいつ立ち去ったかを知らせることができた。

「移民取締りが行われていたので、ここ数日は仕事をしていません」と、サイディングと屋根の作業員であるアレクサンダーはスペイン語で語った。彼はファーストネームのみの使用を希望した。「上司は、そのリスクを考慮して、仕事を休む決断を下しました。私たちはすでに 4 週間も仕事を休んでいます」。この 4 週間、私たちは労働者センターCTUL の支援と、私の教会に通う仲間たちの支援に頼って過ごしてきました」と彼は語った。

この恐怖は学校の校庭にも広がっている。「私の教室では、自宅で学習している子供たちがいますが、子供たちが連行されるのではないかと恐れて、外で休憩を取ることができません。職員が連行される恐れもある」と語るのは、ミネアポリス市ピルズベリー小学校の1年生担任でミネソタ教職員連盟ローカル59のメンバー、アシュリー・ペニー。多くの保護者が抗議活動に参加できないのは「自宅に子どもがいるため、ICEがどう行動するか、ここに来て子どもたちに脅威を与えるか分からないからだ」と付け加えた。

「米国市民であっても、単に白人でないというだけで安全を脅かされる人々がいる」とペニーは指摘。抗議活動については「全員が参加している。ただ、安全が許す範囲でどの形で参加するかの問題だ」と語った。