取材・文責/黒鉄好

2025年参院選で「日本人ファースト」のスローガンを掲げ躍進した参政党。神谷宗幣代表は、献金のほとんどは個人だと述べ、党のクリーンさを売りにしてきた。

確かに、公表された2022〜2023年の政治資金収支報告書を見ると9割を個人献金が占めている。昨年11月公表の2024年版収支報告書では、2024年に入ってからの党費・個人献金だけで約5億2千万円もの収入を集めている。だがその一方で、参政党には「思想的に共鳴」しあう資金源の存在がある。

●「資金源」東証プライム上場企業とは

参政党の資金源になっているのは、大阪府岸和田市の不動産会社「フジ住宅」。創業者の今井光郎氏が、80歳になった今なお代表取締役会長として君臨し続ける。典型的ワンマンオーナー企業だ。

フジ住宅は、2013年以降、職場内で韓国・朝鮮人や中国人を侮辱する文書を繰り返し配布していた。この会社の行為により精神的苦痛を受けたとして、在日韓国人女性従業員が会社を提訴した。1審・大阪地裁では会社の行為を民族差別と認め、原告が勝訴。2021年11月、大阪高裁も、文書にはヘイトスピーチにあたる差別的な言動が含まれると指摘。「職場での配布を正当化する理由は見当たらない」「『朝鮮民族はすべてうそつき』といった意識を醸成させ、現実の差別的言動を生じさせかねない温床をつくりだした」として、会社に対し、原告に132万円を賠償するよう命じる判決を出した。

この判決は、2022年9月、最高裁が会社側の上告を退ける決定を出し、確定した。原告側代理人弁護団は「あらゆる職場の使用者は、差別的言動や思想良心の自由を脅かす言動を行わず、差別的思想が醸成されることのないよう求める」とする声明を公表した。

だが、会社側は「主張が受け入れられなかったことは極めて遺憾だ。原判決でも、社員に対する差別的扱いがないことは認められている。今後も当社の経営理念に沿って、社員のため、社員の家族のため、顧客・取引先のため、株主のため、地域社会のため、ひいては国家のために経営していく」と反論するコメントを出し、反省の色は見えない。

単に民族差別を公然と肯定しているだけではない。このコメントからは、「従業員は国家の方針に従わなければならない」という今井会長の危険思想もかいま見える。

今井会長は、フジ住宅にワンマンオーナー経営者として君臨し続ける一方、一般社団法人今井光郎文化道徳歴史教育研究会という団体を立ち上げ、助成活動を行っている。対象となるのは「日本人として正しい文化・道徳・歴史・教育を広く後世へと伝えていくため、優れた日本の文化・道徳・歴史・教育に関する活動を行っている個人・法人・グループ」(同財団ホームページ)であり、神谷代表が創業した「イシキカイカク株式会社」にたびたび助成を行ってきた。

同社は、神谷氏が「政治的な思想教育や意識改革を目的とした発信・活動を行う拠点として設立」したもので、「“日本人としての誇り”を取り戻すには、政治だけでは足りない。教育と情報の再構築が必要だと思ったんです」(神谷氏の講演より)というのが会社設立の動機のようだ。神谷氏が創業以来代表を務めてきたが、同社ホームページ上では現在、神谷氏の妻・ふみ氏が代表取締役と記載されている。

●「今井財団」のトンデモ助成先

「今井財団」のホームページには助成先も記載されているが、中には目を疑うような団体もある。とりわけ噴飯ものなのが「テキサス親父日本事務局」なる団体だ。

これに関しては、少し説明が必要だろう。「テキサス親父」ことトニー・マラーノ氏は米国コネチカット州生まれ。ニューヨーク生活などを経て、現在は米中西部で典型的な保守地盤とされるテキサス州に住む右派のイタリア系アメリカ人だ。「日本軍の従軍慰安婦などいるわけがない」と主張。韓国の市民団体が米国内各地に建立した「慰安婦像」をブルーシートで覆い隠す活動を続けている。日本のネトウヨたちがこの活動を「賞賛」し、親しみを込めてマラーノ氏をテキサス親父と呼んだところ、本人もそれを気に入り、自称するようになったという。私はこの話を知ったとき、怒る以前に脱力してしまった。

私たちからすると歴史修正主義以外の何ものでもないが、今井氏にとってはこれも「日本人として正しい文化・道徳・歴史・教育を広く後世へと伝えていく」活動として、助成に値するのだろう。

●「ユダヤ陰謀論」唱えながら「ヤマト・ユダヤ友好協会」役員を務め、こっそり辞めたでたらめの過去

話を神谷代表に戻そう。彼は、2022年の参院選挙の際、「参政党は日本をユダヤ資本に売り渡したりしない」と演説。2022年の編著『参政党Q&Aブック基礎編』(以下Q&A)では「ワクチンや医薬品販売による莫大な利益獲得を目的とする『あの勢力』が、コロナ禍の恐怖を過剰に煽るために、新聞やテレビなどのメディアを利用して盛んにマスク着用を呼びかけている」と記述していた。Q&Aでは「あの勢力」とは国際金融資本や多国籍のグローバル企業のことを指すと説明。Q&Aではないが、これらの組織の総称として「ユダヤ系」と記述した関連書籍もあるという。

当選し、参院議員となった直後の2022年8月18日、BS日テレ「深層NEWS」に出演した際、これらの見解の妥当性を問われると「ユダヤ資本が入ってるのは事実だが、全てユダヤ人がやってるというふうに誤解されるような書き方はちょっとまずかったなというふうに思っていて、今後修正をしていかないといけないなというふうには考えています」と釈明した。その後、2024年に改訂した『参政党ドリル』では、「あの勢力」についての記述は「国際金融資本家」に変更され、「ユダヤ系」の表現は消えている。

このような「ユダヤ陰謀論」とでもいうべき説を唱えながら、それとほぼ同時期に、神谷氏が「ヤマト・ユダヤ友好協会」なる団体の理事を務めていたとする情報も筆者は得ている。注目すべきホームページの過去の情報を蓄積しているアーカイブ専用サイトに、同協会ホームページの過去の情報が残されていた。2022年7月13日現在における「役員紹介」を見ると、会長・副会長以下、計9人いる役員のうち、6人目に理事として神谷氏の名前がある。

ところが、今日現在の「ヤマト・ユダヤ友好協会」ホームページで「役員紹介」を見ると、神谷氏の名前だけがすっぽりと抜けている。会長、副会長、他の6人の理事は全員が変わっていないにもかかわらずだ。つまり、理事に就いていたことが確認できる2022年7月13日以降、今日までのどこかの時点でその役職を退いたことになる。

<参考>
・「ヤマト・ユダヤ友好協会」役員紹介(2022年7月13日現在)
https://web.archive.org/web/20220713223713/https://yamato-judea.org/officer/
 上から6番目に「イシキカイカク株式会社」代表取締役として神谷氏の名前が載っている。
・「ヤマト・ユダヤ友好協会」役員紹介(2026年1月31日現在)
https://yamato-judea.org/officer/
 神谷氏の名前だけが忽然と消えている。

この間の経緯については、わからないことも多い。1つだけ確実に言えるのは、神谷氏の理事在任が確認できる2022年7月13日時点では、イスラエルによるガザでのジェノサイドはまだ始まっていなかったということだ(それが始まるのは、2003年10月、ハマスによるイスラエル「侵攻」を受けてのこと)。過去の「ユダヤ陰謀論」との整合性を取るのが難しくなったのか。あるいは、ガザでのイスラエルの蛮行後も同協会理事にとどまり続けることが今後の自分の政治活動にとってマイナスと判断したのか。

この問題を、2025年8月5日号で取り上げた「週刊現代」の取材に対し、参政党は「神谷代表がかつてヤマト・ユダヤ友好協会の理事を務めていたのは事実ですが、同団体は宗教団体ではなく、民間の友好団体」であると回答したという。

いずれにせよ、参政党Q&Aブックで「ユダヤ陰謀論」が宣伝されていたのと同時期に、神谷氏が「ヤマト・ユダヤ友好協会」理事を務めるという無節操が、参政党内で問題にもされずまかり通っていたという事実を、みなさんにお伝えしておきたい。

●参政党の稚拙な「新憲法草案」。気になる「あの表現」の原典(?)らしきものが・・・

「ヤマト・ユダヤ友好協会」ホームページに、同団体の紹介ページがある(「ヤマト・ユダヤ友好協会」について https://yamato-judea.org/about/ )。ここに驚くべき記述がある。『ヤマト人がユダヤ人同様、他民族から嫌われる条件にありながらも滅ぼされず、植民地支配もされなかったのは、極東の離れ小島に住んでいたからだという理由と、ヤマトが天皇のシラス国であるからだと言えよう。』

2025年参院選で「日本人ファースト」を公約に掲げた神谷代表が、一時期とはいえ理事を務めていた団体みずから「ヤマト人がユダヤ人同様、他民族から嫌われる」と記述していることにも驚かされるが、問題はそこではない。私が注目したのは『ヤマトが天皇のシラス国』という表現である。

その稚拙な内容でかえって注目された参政党の「新憲法草案」に、第1条として『日本は、天皇のしらす君民一体の国家である』という条文がある。私は、当初「しらす」の意味がわからなかった。一般市民であれば、「ウナギの稚魚」「江戸時代の裁判所」「鹿児島県・桜島周辺の火山性の土地」くらいしか思い当たらないだろう(大岡越前という時代劇ドラマがあったが、筆者より若い年齢層はすでに知らないと思う)。

このホームページを読んで合点がいった。「天皇のしらす」国の語源は「ヤマト・ユダヤ友好協会」にあったのだ。

●明日以降、総選挙の投票に行くみなさんへ

レイバーネット2.0をブックマークに入れ、日常的に見ている人の中に、まさか参政党に投票したいと思っている人はいないと私は信じる。だが、検索でたまたまここにたどり着いた心ある市民のみなさんに、私は訴えたい。

参政党は、こんな無節操ででたらめな党である。こんな党が伸びれば、日本の将来がどうなるか想像するのはそれほど難しくない。排外主義をあおり立て、日本社会を分断・破壊に導くこの党に、たった1票といえども渡してはならない。

<参考記事・資料>
・令和7(2025)年度公表 政治資金収支報告書(令和6(2024)年分/総務省)より 参政党
 https://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/seijishikin/reports/SS20251128/SF/000030.html

・参政党・神谷宗幣ファミリー企業の資金源はプライム上場企業会長だった! 参政党の化けの皮㈪(「週刊文春」2025年7月30日号記事)

・フジ住宅株式会社 役員一覧
 https://www.fuji-jutaku.co.jp/corporate/director/

・職場で民族差別文書を配布、フジ住宅への賠償命令が確定 最高裁決定(「朝日」2022年9月9日付記事)
 https://www.asahi.com/articles/ASQ99438WQ99UTIL00S.html

・敗訴のフジ住宅「今後も国家のために経営」 原告「会社は変わって」(「朝日」2022年9月9日付記事)
 https://www.asahi.com/articles/ASQ996796Q99PTIL007.html

・一般社団法人今井光郎文化道徳歴史教育研究会、助成先決定について(同法人ホームページ)
 http://www.imai-kenkyukai.or.jp/pdf/20250226.pdf

・“参政党・神谷宗幣氏を生直撃 “ユダヤ陰謀論”修正のワケは…【深層NEWS】”(「日テレ」公式サイト、2022年8月20日付記事)
 https://news.ntv.co.jp/category/politics/462ddc0a119d415192590dbcc95c9d29

・元党員が「もはや洗脳」と暴露…参政党を躍進に導いた神谷宗幣代表の「オカルト人脈」と「組織運営術」(「現代ビジネス」2025年8月5日付記事)
 https://gendai.media/articles/-/155096