児玉 繁信 <全労協全国一般 福山ユニオンたんぽぽ 執行委員>
1) 米・イスラエルは即刻、イラン戦争を止めよ!

2月28日朝(イラン時間)、イスラエルと米国はイランを突然攻撃し、ハメネイ師をはじめとするイラン政府・軍指導者を殺害した。また、イランの軍事基地、ミサイル基地を攻撃した。さらに、南部の小学校を攻撃し女子生徒100人以上を殺害した。米国とイスラエルの攻撃には何の正当性もない。
しかも、奇襲攻撃した2月28日は、オマーンで米・イラン間の核交渉中だった。だまし討ちに等しい。これは初めてではない。2025年6月のイスラエルによる奇襲攻撃も、米・イランの交渉中の出来事だった。やることが卑劣だ。
2001年9・11のテロ攻撃と何ら変わらない。9・11を国際法違反のテロ攻撃であると主張した米政府であれば、米・イスラエルのイラン戦争は、国際法違反のテロ攻撃だとする非難・批判を受け入れなければならない。
2) 政権転覆戦争であり、イランは自衛する権利がある
米国とイスラエルは、戦争の目的をイラン政権転覆だと公言しているが、こんな理由で戦争始めることなど決してしてはならない! 米・イスラエルは、弱肉強食の野蛮な世界に、引き戻そうとしているのだ。
これは、国連憲章第2条への明確な違反である。
<国連憲章 第2条 3項4項>
3項 すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危くしないように解決しなければならない。
4項 すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。
3) 消耗戦となり長期化する。米国は敗北する!
戦争は消耗戦となり、長期化する!
米国・イスラエルは、指導部を排除し政権交代を狙う戦争を始めた。
イランは、米国とイスラエルの防空能力を削り、先に敵を消耗させるという戦略だ。
① イランの反撃
イランは、攻撃があったにもかかわらず、戦力を維持し反撃し続けている。イランはこの30年間、反撃能力を準備してきた。各地に地下シェルターを設置しミサイルやドローンの破壊に備えるとともに、政治・軍指導部が破壊されても反撃できる「分散型モザイク型」と呼ぶ政治・軍事態勢をつくりあげてきた。
「12日間戦争」と異なり、イランは今回、①素早く態勢を立て直し、反撃した。政治・軍指導部は健在であることを示した。②反撃は、イスラエルと中東にある14もの米軍基地に及んだ。「12日戦争」では、反撃はイスラエルにだけだった。③すぐさまホルムズ海峡封鎖を宣言し、タンカーなどの航行を止めた。
イランは、イスラエル、湾岸諸国の米軍基地、米空母群に対して現在もなお反撃を継続しており、戦力を保持し続けていることが確認できる。米空母リンカーン打撃群はペルシャ湾に入ることができず、アラビア海に退避し、遠くから攻撃するしかない。クウェ-ト米基地から発進した3機の米戦闘機F15の撃墜が報じられている。米軍はペルシャ湾国の航空優勢を確保していない。
現在までのところ、イランの攻撃の仕方は、「12日間戦争」と同じだ。まず、旧型ミサイルとドローンを発射し、イスラエルや米軍基地のPAC3、ATACMSなどの迎撃ミサイルを枯渇させる。つまり、イランは事態のエスカレーションに備えているのだ。「12日間戦争」では、7~8日目にイスラエルのミサイル迎撃が極端に少なくなった。その後、イランは極超音速ミサイルによるイスラエルを攻撃に移行した。
今回も「12日間戦争」と同じ攻撃となるだろう。イランは保有する弾道ミサイル、ドローンの数を考慮しながら、慎重かつ計画的に攻撃を継続している。イスラエルと中東の米軍基地の迎撃ミサイルが枯渇すれば、イランはより戦況をコントロールできるようになる。
② アメリカの弱点
アメリカにとって重要なのは、攻撃用ミサイル、防御用ミサイルの在庫量だ(ダニエル・デイビス米退役中佐)。ダン・ケイン米統合参謀本部議長はトランプに、「米軍は数週間以上戦争は続けられない。そのための兵器、弾薬、ミサイルがない。」と報告した(2月26日ワシントン・ポスト)。米国の弱点は、長期間にわたる戦争を実行できないことだ。
ラリー・ジョンソン元CIA 分析官によれば、「PAC3,THAAD、アイアンドームの防衛システムは、1発のミサイルに対し2発の迎撃ミサイルを発射する。PAC3は年間550~800発、THAADは年間150発しか生産されない。したがって、しばらくすれば防衛システムは用を足さなくなる。・・・イランは1万発以上の弾道ミサイル、数万発のドローンを保持しており、6ヵ月は戦争を続けられるだろう」
長期化すれば軍事費が莫大な額になる。それ以前に米兵に死者が出れば、トランプ政権への非難が巻き起こる。戦争が2週間以上も続けば、トランプは「もうやめよう!損害が大きすぎる」ということになるだろう!
では、トランプの停戦提案にイランは応じるか? 決して応じない! 戦争は続き、消耗戦、終わりのない戦争になる。
いずれトランプは、「これで終わりだ!」と勝利宣言して撤退するしかなくなる。そうすると、イスラエルは孤立し無防備となる。停戦の可能性はあるが、条件を決めるのはイランとなる。長期戦になればなるほど、米・イスラエルにとって戦況は悪くなる。あるいは、敗北となる。
したがって、戦闘開始から2週間ほど経てば、戦況はよりはっきりするはずだ。4週間は限界だ。現在もすでにそうだが、2週間後、トランプとネタニヤフに「崖っぷち」が近づく。
4) イランにとって
戦争が長期化すれば、イランの被害も続く。米国・イスラエルの攻撃でさらに犠牲者が出る。すでに原油輸出は止めているし、輸入も途絶している。戦力よりも食糧、日用品の不足が大きく影響してくる。しかし、この戦争はイラン政府と国民にとって、存亡をかけた戦争なのだ。イランにとって反撃する以外に打開はない。そのことをイラン政府も国民もよく理解している。
「イラン国民は指導者が倒されたら立ち上がる」というナラティブ(物語)を、トランプやイスラエルロビーはつくりあげ流してきたが、これは虚偽の宣伝だ。そのナラティブに捕らえられているのは、トランプやネタニヤフ自身なのだ。彼らの戦争戦略を見ればわかる。
5) 石油・ガス価格は高騰し、世界経済は混乱する!
戦争が始まってすぐさまイランは、ホルムズ海峡封鎖を宣言した。実際に、タンカーなどの艦船の通行は停止した。
イランは、湾岸諸国に米軍基地の使用停止を強く要請し、もしこれに反するならば脆弱な石油施設への攻撃もいとわないと通告した。サウジやUAEなど、両面的な態度をとる国の石油施設の一部にはすでに攻撃している。カタールやサウジは3月2日、一部石油施設の稼働を停止した。したがって、海峡が通行できるようになっても、石油・ガスの高騰はしばらく続くことになる。
戦争が長期化すれば、世界経済に与える影響は測り知れない。
6) 米国は敗北し、中東の支配権を失う
空爆だけでイラン政権を転覆できない。トランプは当初から「地上軍は投入しない」と言明した。イラク、アフガン戦争の経験から、犠牲者が出て長期化し、費用がかかるからだ。
2月28日、イスラエルメディアは「戦争は4日程度」と公表した。3月1日、トランプは英デイリー・メールに「最長4週間、戦闘は続く」と答えた。3月2日には「4週間~5週間、あるいはそれ以上だ」と語った。
トランプの「見通し」が狂ったのは明らかだ。そもそも、戦略などなしにイラン戦争を始めたのが実情だ。ほとんど子供じみている。
したがって、もはや米軍は傷の浅いうちに、何とか理由をつけて撤退する以外になくなるだろうが、トランプは「敗北を認めての撤退などできない」政治的立場にある。いずれにせよ、戦争が長期化しガソリン価格が上がり米兵の死傷者が出てくるから、トランプ人気は急降下し、中間選挙で大敗する! その前に動かなければならない。
イスラエルは、米国の参戦をうながし攻撃したが、事態を打開する戦力はない。前回は12日間の空爆で根をあげたが、今回はどうか?という状況下に置かれている。そうなればイスラエルの核兵器使用が視野に入ってくる。ロシアと中国がこれを最も警戒している。
7) ヨーロッパ諸国、G7は米国の戦争を支持
ヨーロッパ諸国、日本を含むG7政府が劣化している。カナダのカーニー首相は、米国のイラン戦争を支持した。英スターマー首相は、米・イスラエルを支持しイランを非難し、英軍基地の米軍使用を認めた。その後すぐに、イランはキプロス英基地をドローンで攻撃した。ドイツはイスラエルに大量の武器を支援しつつけている。ヨーロッパでは唯一、スペインのサンチェス首相が米・イスラエルの戦争を批判したが、ヨーロッパ諸国、G7諸国政府は、米国とイスラエルの不法な戦争を支持、または黙認している。ゼレンスキー大統領は、「イランはロシアの共犯者であるので、米とイスラエルのイラン軍事攻撃を支持する」と表明した(以上、3月4日日経)。
中国、ロシア、トルコ、パキスタンなどは、米・イスラエルのイラン戦争を国際法違反として激しく批判している。
日本・高市政権は、意図的に「戦略的あいまいさ」の態度をとり、平和の原則ではなく、利益に従って動く「ずるい態度」をとっている。
高市政権に、「米・イスラエルのイラン戦争は国際法違反である」と表明し、米・イスラエルに停戦を強く申し入れることを求める! 石油・ガスが入らなければ、日本経済は深刻な状態に追い込まれる。
8) イラン戦争は、世界を大きく変えるだろう。イスラエルは衰退する。
イランは戦争終結の条件として、二度と侵略しない、侵略できないイスラエルを求めている。「12日間戦争」で停戦に応じたが、8ヵ月もたたず攻撃されたのではたまらない。中東の安全保障、平和で安定した国際関係実現の要求である。米国とイスラエルによる軍事力で中東を支配してきた「従来の時代の終焉」を求めている。
モハメド・モランディ/テヘラン大学教授は「西側諸国には、世界を見る力がない。優越主義と人種差別主義の観点からしかイランを見ることができない」と指摘している。日本を含むG7は米国に従いイランに優越的に振舞ってきたが、その時代は終わる。
中国とロシアが、あるいはインドが戦争終結と新しい中東秩序形成のなかで、大きな役割を果たすはずだ。米国の属国となってしまったヨーロッパやG7諸国にはその出番はない。
戦争が終結したとしても、湾岸諸国の米軍基地は従来の役目を果たさないだろう。米国の信頼は失われ、中東への影響力は大きく後退する。米国の力の後退が目に見えた形で露呈するだろう。
イスラエルは、経済的な衰退に向かう。中東の軍事支配を追求してきたイスラエルの国家戦略は、もはや不可能であり維持できなくなる。それ以上に、10年後20年後、衰退して破滅することを考えなければならない。 (3月4日記)
*写真は3/1新宿南口の抗議スタンディング

