ベネズエラに対するアメリカの攻撃に強く抗議するアピールも

竪場勝司
学者や文化人でつくる「世界平和アピール七人委員会」の新春講演会が1月4日、東京都西東京市で開かれた。前日の3日にアメリカがベネズエラを攻撃してマドゥロ大統領を拘束した事態を受け、同委員会は緊急にトランプ大統領に強く抗議するアピールを出し、講演会場で発表した。
この委員会は分野を超えた知識人による平和問題に関する意見表明のための会で、平凡社の創業者である下中弥三郎が呼びかけ、1955年に湯川秀樹、平塚らいてう、茅誠司ら7人によって結成された。現在の委員は大石芳野(写真家)、小沼通二(物理学者)、池内了(宇宙物理学者)、髙村薫(作家)、島薗進(宗教学者)、酒井啓子(国際政治学者)の6氏。
これまでも多くの平和に関するアピールを出し、各地で講演会を催すなどの活動に取り組んできた。2025年12月には高市政権の官邸幹部の「核保有」発言を受けて、核兵器依存・軍備増強をやめ、対話に基づく安全保障を求めるアピールを出している。
アジア・太平洋の人々と共に平和について考えていくことの重要性

新春講演会のタイトルは「世界平和と日本が進むべき道」。最初に講演した島薗さんは戦後、日本の宗教者の間で、平和のための宗派を超えた横の連携があり、「世界宗教者平和会議」の結成につながったことや、アジアの人々との交流の中で、日本の宗教者が被害の面だけではなく日本の加害の面も意識するように変わってきたことなどに言及。「日本の枠だけではなく、アジア・太平洋の方々と共に平和を考えていくということが、大国の下で暗い影が世界を覆っている今の状況を変えていける方向に、日本が貢献できる道が示唆されているのではないか」と語った。
次に登壇した酒井さん(写真)は、アメリカがチリ(1973年)、グレナダ(1983年)、パナマ(1989年)と軍事介入を繰り返してきた歴史を振り返り、「アメリカとしては、ラテンアメリカは『自分の庭』で、軍事介入をしても誰も文句を言わない、という認識が定着していた」と言及した。アメリカが行なったアフガニスタン戦争(2001年)とイラク戦争(2003年)については、酒井さんは結果として「失敗だった」と評価。ベネズエラへの侵攻は「アフガン戦争、イラク戦争での失敗を上塗りする成功例を作りたい、トランプにおけるMake Amerika Great Again の行為だったのではないか」と指摘した。
また、中東情勢に関しては、イスラエルが、ハマスの歴代の指導者をはじめ、敵対勢力の重要な政治家たちを次々に殺害していることに触れ、「イスラエルとアメリカは共同歩調を取っており、世界の『ならず者国家』2国が自分たちのやり方で軍事介入を他国に広げている」と厳しく批判した。
ガザに6000万トンの瓦礫、復興には7000億ドルの費用が
ガザをめぐる戦争は25年10月に停戦になったが、まだ58%の地域がイスラエル軍の支配下にあることを指摘。酒井さんはイスラエルの世論に関して、「ガザを次にどうしたいか」という問いに対し、3割近くが「外国人に任せたい」、約2割が「イスラエルが直接統治をする」、「パレスチナ自治政府が管理する」は6%にすぎないという数字を紹介し、「パレスチナ人を追い出すか、抹殺するかが、イスラエルの基本方針だ」と指摘した。今後については、ガザには6000万トンの瓦礫があって、処理には6年以上かかり、復興には7000億ドルという巨額の費用がかかると言われている、と言及した。
復興支援に関して、日本政府はアメリカが主導して行なっている「軍民調整センター」に積極的に関与しようとしているが、これはイスラエル軍が庇護する形で日本が復興に関与することで、「復興支援という美名の下に、加害者側の庇護のもとで支援を行なおうとしていることが、日本にとってどういう意味を持つのかを、みなさんに考えていただきたい」と呼びかけて、酒井さんは講演を締めくくった。
3人目の講演となった池内さんは、官邸幹部の「核保有」発言をテーマに、問題点、発言の重大性などについて指摘した。
講演に続いて、6人の委員が全員登壇してパネル討論に移り、ここで小沼さんがベネズエラ情勢に関するアピールを読み上げた。アピールでは「ベネズエラ首都攻撃と大統領拘束、米国への連行、米国によるベネズエラ『運営』との方針に強く抗議する」としたうえで、「これは国際法と国連憲章を完全に無視し、正当な理由なく、他国の政府を力で排除する暴挙である」と厳しく非難している。
委員と高校生・大学生との対話の時間も
講演会の後半では、6人の委員と、平和に関する活動に取り組んでいる高校生・大学生との対話の時間があり、高校生たちから「政治や社会の問題に関心のない人たちに、どうやって働きかけていったらいいか」などの質問が出され、委員たちは「同じ事実を見ながら、他の人はどういう風に正しいと思うのか、正しいと思わないのか、ということの想像力をとにかく広く働かせることが、対話のうえで重要だ」などと答えていた。


