夜市(報告)
「ストップ!再開発」のディスカッション&ビデオ、それに続く講談・鶴彬伝。会場は満
席、熱気は最高潮に…そして、斯道の先達・鶴彬の遺志を継ぐのは我らなり!との自負と
緊張の面持ちで登壇したのが、レイバーネット川柳班を代表する3名=乱鬼龍・幸柳・夜
市。

実行委が「2025を振り返って」のテーマで募った川柳作品と今年のレイバー川柳句会での
高得点句、合わせて21句から、秀作が3句ずつ壇上のスクリーンに映写される。幸柳さん
が明るく澄んだ声で詠み上げる。乱さんと夜市はコメンテーター。

優秀作から発表。16句。
コメ作りメシが食えぬと米農家 芒野
物価高もやし料理の腕あがり 八金
あっそうと加害の歴史スルーする 為子


「この夏米価が爆上がりする一方、米農家の収入は時給換算で10円、という矛盾。農政の
貧困。安いもやしで自衛する庶民」と乱さん。続けて「兼題で『天皇』を掲げるなんて、
我がレイバー川柳句会だけ。その時の最高点句が為子さんの作品。戦争責任に向き合わず
すっとぼけ続けたかつての総帥とその責任を不問に付した国民」と乱さん。

聖戦を呪うアジアの二千万 奥徒
国難に挙国一致が待っている なずな
自分から殺せる国に飛躍する 春うらわ


レイバー川柳班は今年、この5年間の句会で生まれた秀句をまとめて『抵抗川柳句集』を
発刊。「戦後80年 治安維持法100年」にあたる本年に、我らまつろわぬ民の声を五七五
作品集の形にして世に問うた。

一方で、「初の女性首相」の高市政権が発足。アジア諸国に対するかつての加害などなか
ったことにして、戦争を煽り巨大軍拡に突き進む。異論を封じるための立法も画策。2000
万の怨嗟の声が聞こえぬか。

老人もスキマバイトの説明会 ソロンゴ
学問も戦争準備の民営化 AIKO
見ないふりしても足元活断層 J.ポンド


夜市(私)がマイクを握る。「スキマバイト、今年流行りました。介護でも、私の携わる
保育でも、人出不足が深刻。低賃金・重労働だからです。1時間だけ2時間だけでも人が欲
しい。そんな中、70代80代の高齢者は年金だけでは生活できないから…切実です」「今年
強行された学術会議法改悪。まさに学者を軍事研究に動員するものです」「私の実家は柏
崎刈羽原発から約20㎞のところにあります。活断層にプレートの境目。目を背けても厳然
とある。世界で最も原発を作ってはいけない所に立ててしまったのが柏崎原発。その再稼
働に県知事は踏み込みました」

軍拡の陰で破裂の下水管 かぼす
不都合なやつはスパイかテロリスト 笑い茸
戦争がつくり笑いで立っている 一志


「埼玉で下水管が破裂して道路が陥没。全国至る所でインフラが老朽化。それを放置して
軍事費は9兆、10兆、11兆」「スパイ防止法という名の現代の治安維持法が出てきました。
戦争に反対する者にスパイのレッテルを貼って取り締まる」「言わずと知れた渡辺白泉
の名句『戦争が廊下の奥に立ってゐた』へのオマージュ。作り笑顔で戦争を推進する首相。
うまいです」

白真弓平和の思い未来射る 芒野

川柳班の仲間・白真弓さんこと、笠原さんが今年亡くなりました。反戦平和の活動に精力
的に取り組んでこられた方。その弓から放たれた矢はまっすぐに戦争のない未来を目指す。

八十年あっという間で片付かず わかち愛
トランプのディールでもらう平和賞 奥徒
『非国民』この一言で黙らせる 一志


「戦後80年、と言いますが、本当に戦後なんでしょうか?このかんの最大の問題は、戦争
責任、日本の戦争犯罪に向き合ってこなかったこと」「イスラエルによるジェノサイドに
最大の支援を続けてきたアメリカの大統領。とんでもない平和賞」「私は日々あちこちで
、パレスチナ連帯、ガザの子どもたちを殺すな、の声を上げていますが『外国でやれ』な
どと心ないことばを浴びせられることがあります。嫌な空気をひしひしと感じる」と夜市。

軍拡原発どうかしてるぜこの国は 乱鬼龍
資本主義その先見たい死ぬ前に 幸柳
熊に向く銃口やがて我に向く 夜市

乱さん「人の命を奪う武器や基地や原発をしゃにむに増強、稼働する愚かしさ。その根源
にあるのが資本主義」「いま熊に向けている銃口を他国の人に向ける。誤ちを繰り返して
はいけない」

最後に最優秀作2句。
前文を読んで読んで読んで総理 今明
ぬくぬくと裏金議員年を越し 笑い茸


今明さんの句。「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起き」ようとしている今、切実な
訴え。幸柳さんの朗唱、「読んで読んで読んで」に万感を込める。

笑い茸さんの句。
「物価高に低賃金。年を越すにも汲々とする庶民を尻目に、不正利得で私腹を肥やした連
中は暖衣飽食」と乱さん。

お2人には乱さんから「豪華粗品」が贈呈されました。以上21句は、労働者・市民の側か
ら捉えた2025年の社会・政治状況であり、この国の『戦後80年』の姿です。

*写真右は受賞した今明さん。