「資料箱」には、共同代表の松原明が執筆したものを中心に収録しました。古い順から載せています。2023年12月からは、季刊『フラタニティ』に「歩み続けるレイバーネット」の連載を始めました。連載記事のPDFはリンク先でダウンロードできます。
●自由でゆるやかなネットワーク〜レイバーネット18年の歩み(2018年2月)
インターネットを使って労働運動を活性化させたい。「はたらくものの情報ネットワーク」レイバーネット日本が設立されたのは2001年2月だから、ことし2018年2月で満18年を迎えることになる。こうした長い間、活動が続いたということは、それなりに存在根拠があったということだろう。当初始めたときは40人だったが、現在は560人の会員組織となった。しばりのないフラットなネットワーク体であるが、その中で有志による国際部・報道部・技術部・川柳班・音楽班・ブッククラブなどの「部会活動」もできるようになった。
レイバー(労働)という看板を掲げているが、労働運動の活動家の集まりではない。「労働問題はじめ社会問題」に広く関心のある「個人」がベースになっている。年3000円の会費でだれでも入れるので、メンバーは労組員はじめ、学生・市民・研究者・弁護士・ライター・ジャーナリスト・編集者・表現者などさまざま。比較的多いのがメディア系である。レイバーネット日本の設立に関わったのは、ビデオプレスの私と佐々木有美、全港湾の伊藤彰信、労働情報の高幣真公、JCA-NETの安田幸弘である。ビデオプレスは国鉄問題のドキュメンタリー映画『人らしく生きよう-国労冬物語』の制作・上映運動の中から、「運動+メディア」の重要性を意識していた。また他のメンバーも韓国労働運動の体験などから「労働運動とインターネット」の必要性を感じていた。そもそも運動とメディアは車の両輪であることは間違いないが、それまでの左翼・労働運動にとってメディアとは活字であり、機関紙や出版物だった。それが技術進歩のなかで、インターネットという強力なツールが生まれたのだ。これを使わない手はなかった。
2001年にスタートしたレイバーネットが一番力を入れたのが、ウェブサイトを使った「報道」だった。この問題について、2009年に書いた文章「レイバーネット報道のめざすもの」があるので、以下その一部を紹介したい。そこに私たちの考えの基本を垣間見ることができるだろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<レイバーネット報道のめざすもの>
「レイバーネットの報道って何なの? ジャーナリズム? 政党・労組の宣伝媒体? オルタナティブメディア?」--最近、よく聞かれる。マスコミのように第三者的に客観報道する立場でないことは確かだ。かといって、特定の政治党派や労働組合に寄り添っているわけでもない。「労働運動をベースに社会を変えたい」という思いの人々がネットワークをつくり、生みだした「運動メディア」である。
「集会に来てほしい」「デモに参加を」・・告知はすごく熱心、しかし終わったらそのまま、というケースが多い。これではやりっ放しである。国労闘争団の最古参活動家・佐久間忠夫さんの名言のひとつが「やったら返す」である。「運動で大事なのは、やったら必ず返すこと。集会をやったら何人集まってどうだった、と報告する。カンパを集めたらこう使った、と報告する。返すことで、じゃ次は参加しようかとか、次もカンパしようかとなり、拡がっていく。運動なんてこれのくりかえしだ」。まったく同感である。告知と報告はセットだが、じつは報告(メディア化)のほうが、運動をつくるという点ではとても大事なのだ。私たちの報道がマスコミと違うのは、「運動を広げていく、運動をつくっていく」という観点がしっかりあることだと思う。
レイバーネットのウェブサイトのつくりは、他とはずいぶん違っている。2001年の発足当初から、技術部の提案でZOPE(ゾープ)方式という日本で初めてのウェブ管理システムを導入した。いままでのホームページといえば、ひとりの管理者がいて、その個人が他の人から寄せられた情報を編集してアップをしてきたが、ZOPEは、完全なグループ管理型のシステムだった。つまり、IDさえあれば、だれでもホームページにアクセスし、管理者と同じように情報をアップできるのである。このトップダウン型でなくボトムアップ型は、レイバーネットのめざす「一人ひとりが主人公のメディア」にぴったりだった。
問題もある。ボトムアップを実現するには、多くの会員が意識的・自発的に情報発信することが前提になる。「だれかがやってくれるのではなく、まず自分がやる」人が増えることである。幸い「ネットは運動の武器になる」と確信したメンバーらの努力で、年ごとにニュースやイベント情報が集まるようになった。特別に編集会議を開いたこともないが、レイバーネットの報道スタイルは、試行錯誤を繰り返しながら、自然に今の形が作られてきた。JR問題・トヨタ・労働争議・イラク反戦・共謀罪・教育基本法・反貧困・デモ弾圧事件など、ホットな事件を運動内部から報道する姿勢が評価され、年々アクセス数が増えた。2001年からの通算アクセス数は210万をこえ、現在も一日1600人(ページビューでは6000)あり、一定の影響力をもつにいたっている。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<継続は力> レイバーフェスタ・レイバー映画祭・レイバーネットTV
前述の2009年の文章では、「通算アクセス数は210万をこえ、現在も一日1600人(ページビューでは6000)あり」と書いてあるが、2018年1月現在では、「通算アクセス数は745万をこえ、一日6000人(ページビューは30000)」となった。まだまだ小さな存在ではあるが、一定程度の市民権があり「レイバーネット、知ってます」「レイバーネット、見てます」という声をよく聞く。グーグルニュースにも登録されているので、マスコミがやらない労働問題のニュースなどが大きな広がりを見せることがある。最近では、アリさんマークの引越社やメトロコマースの争議、渡辺照子さんの雇い止め問題の記事・動画などはまさにその典型で、「運動+メディア」が相乗効果を生んだ成功例となった。
●レイバーフェスタ
2002年12月に始めた「はたらくものの文化祭=レイバーフェスタ」は、先行する韓国・サンフランシスコに影響されて日本でも行うようになった。「暗い・ダサイ・固い」運動から「明るい・楽しい・やわらかい」運動へ。日本の運動には文化が足りなかった。フェスタは、映像・音楽・演劇などを皮切りに川柳・講談などさまざまな文化活動を発表する場になった。メインの映画以外はほとんどが、みんなでつくる下からの参加型スタイルだ。なかでも「3分ビデオ」はフェスタの目玉で、だれもが映像を使って表現し伝える場となった。2002年から始まって毎年12月に開催しているが、昨年2017年で15回目を数えている。
●レイバー映画祭
レイバー映画祭は2007年からスタート。毎年7月に開催し、昨年で11回となった。2007年はハケン問題など労働問題が世間の注目を浴びた時期で、「労働問題の解決は組合をつくること」を訴えるキャンペーン「ユニオンYes! キャンペーン」を私たちは展開した。レイバー映画祭はその一環として企画されたものだった。第1回は「怒りの葡萄」「移民の記憶 」「ピケをこえなかった男たち」「君が代不起立」「本山闘争激闘34年の軌跡」「娘の時間・息子の場合・3 分間の履歴書」「遭難フリーター」「フツーの仕事がしたい」を上映し、大きな反響があった。それに力を得て、その後毎年充実したラインナップを組み、定着していった。参加人数も多く450人を超えたこともあった。とくに2017年では、「原発の町を追われて3」(堀切さとみ)「共謀罪が通った日」(湯本雅典)「コンビニのひみつ」(土屋トカチ)「トゥジェン!〜韓国サンケン労組は行く」(ビデオプレス)など、レイバーネット会員の作品が中心を占めるまでになった。それぞれ「3分ビデオ」などを出発点にして力をつけていった人たちだ。映画祭はいま花盛りだが、レイバー映画祭がもっている特徴は、単なる映画鑑賞ではなく「アクティブでラジカル」なところだろう。現実に寄り添いながら、現実を変えていこうという「姿勢」がどの作品にも共通しているからだ。いまや新しい「映画ムーブメント」として進化している。
●レイバーネットTV
1990年代から「自主メディア運動」をしてきた私(私たち)の当時の夢は、自分たちのTVチャンネルを持ちたい、ということだった。しかしそれは夢のまた夢だったが、わずか20年でそれが現実のこととなった。2010年に「ユーストリーム」という生中継技術が普及した。リアルタイムでインターネットを使って「生中継」できる技術である。しかも無料。これは事実上のテレビだった。NHKよりすごいのは、ネットなので世界に配信できることである。実際、レイバーネットTVではフランス・カナダに視聴者がいるし、中継でつないだこともある。2010年5月10日に初めて「試験放送」を行ったとき、ジャーナリストの山口正紀さんは「画期的なことが始まった」をそのときの感慨を語っていたが、私も同感だった。月1回の放送だったが3.11以降、原発問題を多く取り上げるようになり月2回になり、これまで127回の放送を積み重ねた。視聴者はアーカイブを含めて各番組で、数千〜数万になる。
レイバーネットTVが力を発揮するのは、マスコミがやらないテーマやたたかう当事者が出演することだ。たとえば「原発番組」。3.11直後は、原発危機報道や計画停電など社会全体が異常な雰囲気に包まれていた。そんななか3月17日に原発事故番組をつくった。たんぽぽ舎のメンバーをゲストに、事故の正確な見方、放射能の怖さやその対処方法を伝えた。これを観た人から「テレビの原発報道で窒息しそうだったが、やっと前向きになれた」との感想をもらった。まさに「オルタナティブメディアの面目躍如」だった。その後も、さまざまな問題を取り上げ、ゲストを呼び、レイバーネットの広がりを一層大きくすることになった。すべてアーカイブが残っているので、活用してほしい。(*レイバーネットTVで検索してください)
<民主主義をつくる力>
ざっと振り返ってみても、この17年間休むことなく着実に一定の活動を積み重ねてきた。問題点としては、中心メンバーの高齢化・固定化、首都圏中心の運動から広がっていない、財政が厳しい、などいろいろある。しかし、これまでの活動のなかで「社会運動+メディア」のひとつのスタイルをつくったことは間違いない。2009年12月にレイバーネットが発行したパンフレットのタイトルは「文化のないたたかいなんてありえない!」だった。文化はメディアとも言い換えることができる。文化をつくる、メディアをつくることは、主権者である私たちが表現すること、伝えることである。マスコミ頼りではなく、自らが声を上げ「表現者」になること、それは「民主主義」をつくる第一歩である。いま求められているのは「下からの民主主義」の力。それは企業の専制支配をとめ、国家の戦争への道をとめ、翻って運動側の官僚主義を正す力である。
昨年レイバーネットに加わったMさん(40代・女性)は、いきなりビデオカメラを買い、教わりながら、運動現場の動画を撮るようになった。いまや見習いとはいえ、いっぱしの「メディアアクティビスト」だ。川柳で社会風刺を始めた人もいる。今の世の中に声を上げたい、書きたい、撮りたい、表現したい人はたくさんいる。しかしその「場」はなかなかない。政治色が強い場合は、敬遠される。レイバーネットというネットワークのユニークさは、自由でゆるやかなところだろう。誰でも参加できるし嫌ならやめるのも簡単。だからこそ、そういう人たちに「場」を提供できたのではないか。一人でできなくてもネットワークの中で可能性は広がり、新たなものを生み出していく。今後もそんな役割をレイバーネットは果たしていきたいと思う。(まつばら・あきら/レイバーネット日本共同代表)
●「小さな穴」を開けるメディアとして(2019年12月)
*以下は「労働大学」発行『まなぶ』2019年12月号の特集「ジャーナリズムの役割を問う」に寄稿したものです。(松原明)
「非営利メディアの可能性」というテーマで原稿依頼を受けたが、「非営利メディア」という表現には少し違和感があった。私はレイバーネットでメディア活動を19年やってきたが、じつは自分たちのやっているメディアをずばり表現する言葉をいまだにもっていない。市民メディア、民衆メディア、オルタナティブメディア、独立メディア、ネットメディア、市民ジャーナリズム等々、いろんな言葉があるが「帯に短しタスキに長し」なのだ。しいていえば「社会運動系ネットメディア」というところか。
私たち普通の市民・労働者がマスコミ並みに情報発信ができるようになったのは、技術革新のおかげだ。1990年代に小型ビデオカメラが登場し、1995年からはインターネット、そして2005年からはYouTubeが始まり、個人がその気になれば、テキスト情報から動画情報までほとんど無料で発信できる時代になった。
レイバーネットはウェブサイト報道を軸に、レイバーネットTVなどを行っているが、私たちの基本は「伝えたいことを伝えるために」である。それまでは何か伝えたいことがあっても、マスコミに頼るしかなかった。しかし、いまは違う。自分たちで伝えることができるのだ。「当事者メディア」ともいえる。たとえばあるデモをする、これまではこれをマスコミが取り上げなければ、世の中に知られることはなかったが、いまは自分たちで伝えることによって思わぬ広がり、運動がうまれるのだ。
たたかいとメディアは車の両輪
労働問題についてマスコミの関心は少ない。だからこそ「私たちのメディア」が真価を発揮することがある。例を挙げよう。2013年3月に東京メトロ売店で働く非正規女性たちが「雇い止め」に反対してストライキに立ち上がった。このとき厚労省で会見も行ったが、1社を除いて大手メディアには報道されなかった。このスト現場を報道したのがレイバーネットで、そのYouTube動画はあっというまに広がった。そしてメトロ売店女性のたたかいが知られ、その後、NHKなども後追い報道をすることになる。2015年には「アリさんマークの引越社」の会社幹部の組合員に対する恫喝動画が200万再生を超えるということがあった。この動画によってブラック企業の実態が暴露され、「アリさん」争議の勝利和解のチカラになった。こうした事例は事欠かない。「たたかい」と「メディア」が車の両輪であることは、いまやアクティブな組合活動家には常識になっている。
レイバーネットは社会問題にも積極的にかかわっている。その中で、最近、もっとも反響の大きかったものは2019年9月7日の「渋谷・日韓連帯アクション」の報道だった。約1時間の小さなアピール行動だったが、このとき在日コリアンの女性がマイクを握った。そしてこう訴えた。「いま私たちは生きるか死ぬかの瀬戸際です。在日の人は、アメリカの日系人収容所送り、ナチスのガス室、ルワンダの隣人襲撃などの事件を想像してしまいます。あす殺されるかもしれません。どうかお願いします。マスコミは煽りをやめて、ちゃんと報道してください。日本のみなさんにお願いしたいのは、友人から韓国の悪口が出たときにごまかしたり聞き流すのはやめてください。おかしいことにはおかしいと言って下さい」と。彼女の短いスピーチは衝撃的だった。それがSNSなどを通じてまたたく間に広がっていった。
いま時代は危険だ。安倍政権のもと、日韓問題、天皇問題、オリンピックなど世の中はますますナショナリズムに傾斜し「戦争への道」に進んでいる。労働者の人権が無視され、表現の自由が危機に立っている。そんな状況だからこそ、民衆側のメディアが重要になっている。マスコミが忖度で報道できないことも、私たちにはできる。小さなメディアは「小さな穴」しか開けられないかもしれないが、そこに大きな可能性も秘めている、と私は思っている。
●小さなメディアの大きな役割(フラタニティ第1回 2023年12月)

<『フラタニティ』連載「歩み続けるレイバーネット」第1回 2023年12月> 松原 明
小さなメディアの大きな役割
「はたらくものの情報ネットワーク・レイバーネット」は2001年2月に発足したが、ことしで23年目になった。よく続いたと思う。そんなわけで、この連載タイトル「あるくレイバーネット」は、世界一貧しい大統領ムヒカの言葉「人生で一番大事なことは、成功することでなく歩み続けることだ」からいただいた。本誌の村岡到編集長の要望は「レイバーネットの主要動向をピックアップして紹介するコラム」を書いてほしいということだった。せっかくの機会なので、レイバーネット周辺の活動から見えてくることを、形式ばったレポートではなくエッセイ風に書いてみたい。
2001年に同会が発足したときは、私は50歳。他のメンバーも同じくらいで、それから22年経つわけだから高齢化は否めない。550人の会員がいるが、毎年訃報が出るようになった。最近では、中心で活動してきた木下昌明さん(映画批評家、享年82歳)や山口正紀さん(ジャーナリスト、享年73歳)が亡くなった。毎年10人ほどの新入会者がいるが、全体として高齢化が進んでいるというのがレイバーネットの現状だ。その傾向はどこの左翼系団体も同じであろう。
■高齢化の波をこえて
年をとるのは仕方がない。しかし問題は、人々が覚醒するような大きな社会運動が日本でつくれていないことである。世界をみれば、フランスや韓国ではたたかいの中で、若い世代はどんどん生まれて来ている。日本では労働運動が後退したあとに、比較的大きな運動としては、2008年末の「年越し派遣村」から生まれた「反貧困ネットワーク」の運動があり、2011年からは「脱原発運動」の高揚があった。レイバーネットもそうした運動に伴走しながら、ウェブサイト活動を通して「運動を伝えること・広げること」に関わってきた。
国会前などで取材活動をしていてうれしいのは、「レイバーネット見てますよ」の一言である。レイバーネットのサイトで一番アクセスの多いのが「イベントカレンダー」のページである。国会前で会った人は、「朝起きてからイベントカレンダーをみて、その日の行動を決める」という。そういう人が複数いた。うれしいが、ちょっと責任も感じる。というのはレイバーネットに載せているイベント情報は、投稿してきたものをほぼ「無審査」で載せているからだ。「これちょっと○○系でマズイかな」というのも確かにある。しかし線引きをしたらきりがない。あとはご自身で判断してもらうしかない。そうした選別しないことが、「自由で幅広い」レイバーネットのイメージをつくり、運動に役立ってきたのだと思う。
高齢化の波は、ウェブサイトのマシンでも起きている。わがレイバーネットのウェブサイトは、実はボロボロなのだ。レイバーネットは、2001年に日本で初めて「ZOPE(ゾープ)」というアメリカのソフトを使って立ち上げたサイトだった。IDがあればだれでも直接投稿できるなど双方向性があり、先駆的な仕組みだった。しかしそれも20年以上経つとマシンも劣化しトラブルが増えるようになった。2017年12月に17年働いた渡辺照子さんが「派遣切り」された記事をスクープ掲載した。これが大反響でヤフーニュースなどに取り上げられると、レイバーネットにアクセスが集中して、ウェブサイトが一日ダウンする事件があった。数十ならともかく数百レベルでアクセスが集中するとダウンするとは情けない。これを機会に、サーバーの新規入れ替え、システムの再構築を真剣に考えるようになった。
■情報「価値」は1000万円以上?
ことし7月、某ネット業者に相談してみた。データを全面移行し新サイトを作り直す場合の手続きや経費のことである。その返答がメールであった。「貴社のサイトには2万ページを超えるページ数が登録されているようです。1日に10頁ずつ移行したとしても、2000日かかることになります。金額的な見積りとして最低1000万円以上はかかるでしょう。また構築までに約半年程度の期間が必要になります」と。これには驚いた。100万円以下でできると思ったらとんでもない。単位が違うのだ。なので、全面作り直しはあきらめて別の方法を探ることにした。このとき「最低1000万円以上」と聞いて私はほくそ笑んだ。見方を変えれば「レイバーネット」の情報蓄積「価値」が1000万円以上ある、ということなのだ。ちょっと鼻高々・・。23年、コツコツやってきたことがこんな形で「評価」されてうれしかった。
最後に最近掲載した「尾澤孝司事件地裁判決」について触れたい。韓国サンケン争議で支援者の尾澤孝司さんは、話し合いを求めて構内に入ろうとした際に警備員を押したという理由で起訴されていたが、その「さいたま地裁」判決が9月11日にあった。法廷は「警備法廷」で建物のなかにも多数の警察官が配置された異常なものだった。判決は「罰金40万円」の有罪判決。サンケン電気・警察・検察・裁判所が一体となったこの弾圧事件は、戦争体制にすすむ日本の象徴的事件だった。つまり「モノいう労働者・労働運動の徹底排除」である。関西生コン弾圧事件も同じ流れだった。この判決の取材をしたのは、レイバーネットと韓国KBSのみ。日本の大手新聞に1行も報じられることはなかった。
こんな状況だからこそ、「レイバーネット」の存在と役割は重要なのだと改めて思った。世の中はユーチューバー時代で動画発信はあたりまえで、「レイバーネット」はけして目立つ存在ではない。しかし「たたかう当事者の声」「労働現場からの発信」「マスコミがやらない・できない情報発信」という意味での存在意義は大きい。いま9条をかなぐり捨てて「戦争する国」に向かう日本。「汚染水」という言葉さえ話せなくなった日本。そんな時代だからこそ、これに抗してしっかり発信していきたい。小さなメディアの大きな役割を信じて。(レイバーネット日本共同代表)
