
<飛幡祐規>
レイバーネットの前回のコラムの最後に書いたように3月15日、フランス市町村選挙の第1回投票で「服従しないフランス」LFIと共産党の統一候補バリ・バガヨコは、過半数を取ってイルドフランス地方でパリに次ぐ人口のサン・ドニ=ピエルフィットの市長に当選した。大規模な市で初めて、急進左翼の黒人市長が誕生しためざましい出来事だ。ところが、大勢の市民の歓喜とは裏腹に、新市長は極右などの政治家、メディアのコメンテーター、ジャーナリストから、フェイクニュースにもとづく数々の差別的中傷と発言を浴びせられ続けた。22日の第2回投票で当選した他の市の移民系市長(黒人やアラブ系)と市議たちも、レイシズムが表れた否定的コメントや中傷を受けた。多くの移民系市長と市議が当選したことで、猿や「部族の男首長」に黒人を結びつける19世紀からのレイシズム、移民系市民をディーラーやごろつきだと見る植民地主義、市政を行う権利は従来どおり支配的ブルジョワにしかないと考える階級的蔑視が一気に噴き出たのだ。




明らかな差別主義者だけでなく、極右や保守、与党、一部の社会党の政治家が流したフェイクニュース(サン・ドニのことを「黒人の町」と言ったとか、ディーラーのおかげで当選できたとか)の真偽を確かめずに、それらを垂れ流したジャーナリストたちも、無意識のレイシズムや階級的軽蔑がその行為と質問の仕方に表れていた。
2週間以上にわたり怒涛のようにメディアを覆ったこの破廉恥なレイシズム洪水に、多くの市民は愕然として衝撃を受け、移民系フランス人は深く傷つき、怒った。異常なレイシスト攻撃に対して即座に激しく抗議したのは、「服従しないフランス」LFIと左派の市民たちだったが、政府の反応は遅く、国会で問い詰められた後にようやく首相と反差別担当大臣はバガヨコ市長への支持を表明した(10日以上経ってから)が、マクロン大統領は依然として無言だ。社会党や緑の党の反応も一部を除くと鈍かった。
バガヨコ市長はひどい差別発言を流した極右系24時間テレビ放送C NEWS を訴え、4月4日にサン=ドニ市庁舎前でレイシズムと全ての差別に反対する集会を呼びかけた。40の団体が賛同し、市庁舎とフランスの歴代の王の墓があるカテドラル前の広場とそこに続く道は当日、ものすごい数(ゆうに1万人以上)の人々で埋められた。大勢のサン・ドニ市民に加え、パリや近郊、ルーべなどからも人々は集まった(私たちパリから行った人はメトロ13号線の停電のせいで、途中から郊外急行に乗り換えたり、徒歩で赴いた)。レイシズムにノンを突きつけ、多くの移民系市長と市議の当選を喜び、「新しいフランス」の存在を誇らかに示したのだ。大勢の若者たちは市議や市民のスピーチに拍手、コール、歓声で応え、「私たちはみんな反ファシストだ」というイタリア語のスローガンを一緒に叫んだ。
最後にスピーチしたバガヨコ市長は、若い世代が政治意識をもって反レイシズム運動を進めていると賞賛し、これまでこの闘いを担ってきた親や祖父母の世代の人々に感謝を捧げ、何度もレジスタンス(抵抗)を呼びかけた。そして、今日が極右とレイシズムに対する新たな闘いの出発点であると述べた。具体的な措置を進めるために、自治体の議員のネットワークを作り、首相にも反レイシズムの具体的な政策をせよと言いに行くと語った。「市民、子どもたちにとって平等が空約束ではなくて現実となるように、反レイシズム・反極右の闘いを勝ち取ろう」。大勢が一緒にやればその闘いに勝てるはずだ、恐怖を抱かず、誇りをもって進もう、と呼びかけた。フランス共和国市民の普遍的な意思、「自由、平等、友愛」を実現しようと。
LFIの議員や市議たちも大勢参加していた。ジャン=リュック・メランションはインタビューに答えて、これはフランス共和国の歴史的瞬間だと述べた。フランスの民衆の統一を保つために必要不可欠な変革が、この歴史的な場所で起きた。移民の子孫たちが市民として重要なポストについた、新しいフランスがここにある、と。
4月4日のサン=ドニ大集会は、10年来政界とメディアで強まり、とりわけこの数週間で激しく吹き荒れた極右とレイシズムの嵐に対抗する、力強い出発点になった。バガヨコ市長は5月3日、より大きな反レイシズム・反極右のデモを催そうと呼びかけている。フランス市民の抵抗力に期待したい。
(2026.4.6 飛幡祐規 たかはたゆうき)


