児玉 繁信 <全労協全国一般 福山ユニオンたんぽぽ 執行委員>
トランプは、イランがまさかホルムズ海峡を封鎖するとは、予想さえしていなかったようだ。

1) 戦争の性格――米・イスラエルの侵略戦争、イランにとっては、自衛の戦争
トランプとネタニヤフは、2月28日、突然イランを奇襲攻撃した。これは国際法違反である。
最高指導者ハメネイ師、革命防衛隊司令官、イラン国軍参謀長など、政治・軍事指導者を殺害したし、イラン南部、ミナブの女子児童165人を殺害した。アメリカとイスラエルは、まがうことなきテロ国家だ。アメリカを批判しない日本などは、テロ支援国家だということになる。トランプは、戦争目的を「政権転覆」だと宣言した。
一方的に奇襲攻撃したアメリカ、イスラエルに対して、イランは自衛の戦争を戦っている。戦わなければ滅ぼされてしまう。イラン存亡をかけた反撃なのだ。そのため、イラン政府だけでなく、全国民が団結して反撃を戦っている。
合言葉は、「リメンバー ハメネイ師脱害!」「リメンバー ミナブの165名女児殺害!」である。
イラン政府もイラン国民も、存亡の危機に瀕していること、反撃するしか打開する道筋はないこと、をよく理解している。
アメリカは「独裁反対」、「自由と民主主義」、「人権と女性の権利」を掲げて、イラク戦争、アフガニスタン戦争を始めた。リビアとシリアに軍事介入した。その結果、どうなったか? イラクも、アフガンも、リビアもシリアも、破壊国家となった。イラン国民は、アメリカによる戦争と軍事介入が何をもたらすかをよく知っている。知らないのは、偽情報の影響下にいるアメリカやヨーロッパ、日本を含む西側諸国の市民だけだ。
2)ホルムズ海峡封鎖――イランの捨て身の戦略
イラン指導部は、攻撃された時に対応する戦略・プランを長年にわたっていくつか想定し準備してきた。どの戦略をとるかを、あらかじめ定めていたようだ。ハメネイ師殺害で、最大の反撃、捨て身の戦略を発動したと思われる。それがホルムズ海峡封鎖だ。それを実行できるイランの戦力が、地下基地の弾道ミサイルとドローンである。
イランは、建設した地下基地に大量の弾道ミサイルとドローンを準備した。米・イスラエル軍の空爆では破壊されていない。現在もなお、戦力を保持し戦況を支配している。
2月28日から最初の4日間でイランは、ペルシャ湾岸諸国の米軍基地の高性能レーダーを破壊した。そのことで米軍基地は目と耳を失い、イランから発射される米軍基地向け、イスラエル向けのミサイルやドローンを捕捉できなくなった。湾岸諸国の米軍基地と戦力は、機能不全に陥ったのである。
3)現時点での戦況は?
イランは、今回の戦争の主敵を米軍だと定め、米軍と米軍基地を破壊することをめざし、一定の成果を得た。湾岸諸国の米軍基地からはミサイルも戦闘機も、ほとんど発射。発進できていない。米軍の主要戦力はアラビア海に展開するエイブラハム・リンカーン空母打撃群となったのであるが、イラン・ミサイルの脅威のため、いまだにペルシャ湾に入ることができない。
イランは、イスラエルに対しては、米軍に大きな打撃を与えた後で対応するかのような戦術をとっている。イランにとっては、イスラエル軍の単独攻撃であれば、十分に反撃できるという判断があるかのようだ。当初イランは、旧式のミサイルやドローンを発射し、イスラエルのアイアンドームの迎撃ミサイルを枯渇させる戦術をとり、実際に枯渇させた。すでにイランのミサイルがイスラエルを破壊しているが、米軍の脅威が一定程度後退すれば、更に破壊するだろう。
トランプはホルムズ海峡開放のために、「地上軍を派遣する」、「重大な攻撃を行う」、「イラン最大の発電所を破壊する」・・・などと、いくつか発言しているが、ほとんど現実性はない。トランプ特有の「脅し」による「取引」の持ちかけであることを、イランはすでに見抜いており、交渉にさえ応じていない。
イランは現在もなお、ホルムズ海峡を封鎖し続ける戦力を保持している。
4)イランの狙い:世界エネルギー市場を人質に!
そもそもイランは、アメリカ本土を攻撃する戦力は持っていない。長射程のミサイルもアメリカ本土には届かない。したがって、イランがアメリカとの戦争を始める動機もなければ戦力もない。この戦争は、アメリカとイスラエルが始めたものであり、決してイランではない。
アメリカ国内で盛んに煽られた「イランの脅威」宣伝は、アメリカがイラン戦争を始めるために、イスラエルロビー、米メディアの流した「偽情報」に他ならない。日本の主要メディアもこの偽情報を流している。偽情報であることはすでに判明しているし、アメリカ社会でもそのような指摘が出はじめている。
イランによるホルムズ海峡封鎖で、石油が止まった。国際エネルギー市場は混乱に陥っている。この混乱が長期化すれば、世界的なインフレ、経済危機、金融危機に発展するのは確かだ。どのような道筋を通って、いつごろ危機が激化するかは、誰にも分らないが、世界が危機に向かっているのは確かだ。
イランの戦略は、国際エネルギー市場を人質にとることで、米軍攻撃の停止、中東からの米軍撤退、米基地撤去を引き出そうとしている。これはイランにとって、自身の存亡をかけた最終戦略である。イランがこの戦略を事前に綿密に計画し準備してきたことは、よくわかる。
戦争が長期化すれば、各国に石油は入らなくなり、ナフサや天然ガス、ヘリウム、尿素肥料も止まってしまう。エネルギー価格は上がり、プラスチック各製品価格は上がり、肥料不足から食糧危機もいずれ起きる。
・ナフサ: 湾岸諸国はナフサ輸出国でもある。各プラスチックの原料。
・ヘリウム:カタールが世界需要の3分の1を供給している。半導体生産や医療機器に欠かせない。
・硫黄、尿素、アンモニア:肥料不足となる。北半球は植え付けの時期に来ている。肥料が不足すれば、いずれ食糧不足となる。肥料は、湾岸諸国とベラルーシ、ロシアが最大の生産国。
世界中がインフレとなり、インフレから金利が上がり、投資は減退し、破綻するファンドも出てくる。株安、債券安から、金融不安、金融恐慌を通じて世界恐慌に入る道筋が見えてきた。イランはここまで睨んでいる。
戦争を耐え抜き長期化させ、ホルムズ海峡を封鎖したままにすれば、世界が経済的な混乱に陥り、アメリカとイスラエルは、譲歩と敗北を認めざるを得なくなるという戦略なのだ。
責任は、戦争を始めたトランプとネタニヤフにある!
5)トランプには手段がない
トランプは戦争を始めた後も、「イランなど脅せば抑え込める」と安易に考えていた。
イランがホルムズ海峡を封鎖したのを見て初めて、イランの覚悟を知ったのである。しかも、弾道ミサイルとドローンにより、米海軍はペルシャ湾内に入ることができず、事態を打開できない。
これを見て初めてトランプは、この戦争は直ぐに終わることができないことを理解した。ガソリン価格が上がれば、支持率は落ちる、何とか早く戦争を終えなければならないところに追い込まれているのである。
6)イランの停戦・戦争終結の条件
イランにとって、停戦と戦争終結の条件は、アメリカとイスラエルによって二度とイランが攻撃されない安全保障である。それは文書や条約ではない。文書や条約などあてにならない。アメリカとイスラエルは、交渉中にm三度も攻撃してきたし、条約など何度も破ってきた。アメリカとイスラエルには何の信用もない。もちろんイランもまったく信用していない。
イランにとって、二度と攻撃されない安全保障とは何か?
それは、中東からの米軍撤退と米軍基地撤去である。中東からのアメリカの影響力の排除だ。トランプの対応によっては、湾岸諸国の米軍基地の破壊を続けるだろう。
また、イスラエルに対しては、二度と攻撃できないイスラエルとなることだ。まず、200発もの核兵器を廃棄させることだ。簡単に応じないだろうが、であれば二度と攻撃できないように、イスラエル経済力を徹底的に破壊するつもりだ。
7)苛立つトランプ
トランプは、イランの戦争終結の条件を飲むよう迫られている。
現段階では、トランプはとても飲めない。戦争をエスカレートすると脅しをかけている。イランは応じない。
「イラン最大の発電所を破壊する!」と脅したところ、イランは「もし攻撃をするなら湾岸諸国の石油施設を破壊する」と応じてきた。アメリカ軍が全面攻撃をしてくるならば、湾岸諸国の淡水化施設を破壊すると応じてきた。なお、イランの淡水化施設を米・イスラエル軍はすでに攻撃し破壊しているが、イランは反撃を留保している。
トランプには、とるべき手段が残っていないようだ。長引けばトランプ人気が下がるので、ますます選択肢はなくなる。トランプの発言がコロコロ変わっているのは、あるいはイライラしているのは、採るべき選択肢がない、出口が見つけられないからだ。
トランプにとって、嘘でもいいから「勝利宣言」して、米軍が撤退する選択肢が残っている。2025年5月、イエメンから撤退したように、だ。ただ、「勝利」だとは装い切れないし、なかなかトランプのプライドが許さない。
しかし、いずれ、トランプは中東から米軍と米軍基地を撤去するしかなくなるだろう。最終的にはこれしかないだろう。世界の平和のためにはそれが一番いい。
高市政権はトランプのコロコロ変わる言葉に反応し、トランプと同期して一喜一憂するという滑稽な姿を見せている。
今のところトランプの頭には、戦争をエスカレートする案しか浮かんでこないようだ。
しかし、エスカレートすれば、ホルムズ海峡封鎖は長期化する。ホルムズ海峡を封鎖せずとも、イランは米・イスラエル軍から攻撃があれば、湾岸諸国の石油施設を攻撃・破壊すると宣言している。その結果は、ホルムズ海峡封鎖と同じことであり、長期にわたり石油を止めることになり、同じ結果を導く。
長期化すれば、ガソリン価格は上がり、それに反比例してトランプ支持率が落ちる。
トランプにはもはや、時間も残されていない。中間選挙で敗退すれば、トランプは裁判で弾劾される。その前に対処しなければならない。
イスラエルの思惑は、アメリカと少し違う。最近その違いが目立ってきた。イスラエルは、「イランの体制転換、核兵器開発、弾道ミサイルの揮発能力排除」という掲げた目的を、何一つ達成していない。今を逃したら、イスラエルにはイラン破壊の機会は二度と訪れない。だから戦争継続の姿勢をとっているが、それはイスラエルにとって破滅への道だ。
アメリカ軍が撤退すれば、イスラエルはイランの豊富な弾道ミサイルで、破壊され続けることになる。アイアンドームはすでに弾切れ。そうすると、イスラエルには、核兵器使用のオプションしか残らなくなる。
8)すでに湾岸諸国は大きく変わった
アラブ諸国はアメリカへの強烈な不信を持つに至っている。奇襲攻撃する前に、「アラブ諸国が巻き添えとなることを考えなかったのか!」と。
UAE、カタール、バーレーン、サウジは、国際金融、貿易・観光のハブ、データセンター、空港などを備えた金融都市となり栄えてきたが、今や文字通り「砂上の楼閣」となりつつある。すべての機能を失い、金融業などに従事する外国人は去りつつある。これを戦争前のような状態に立て直すのは、もはや不可能だ。復興するにも相当の期間と費用を要するだろう。
この戦争が終結したとしても、湾岸諸国は容易には復活しない。元には戻らない。イラク戦争終了後、ペルシャ湾の宝石と呼ばれたクウェートが復活しなかったのと同じように、だ。
湾岸諸国・アラブ諸国にとっては、イスラエルの存在そのものが危険きわまりない。米国も米軍も、米軍基地ももはや要らない。アメリカに再考を求めるだろう。
戦争が終結したとしても、ホルムズ海峡に対するイランの影響力、あるいは支配権はより強いものとして残る可能性が高い。
イランは、現在もなおホルムズ海峡を完全に封鎖してはいない。中国、インド、パキスタン、トルコ船籍のタンカーは通過している。中国・人民元で決済しているようだ。しかもトランプがこの通過を認めたというのだ。石油価格の上昇を恐れているからだ。
イランは、日本に対して、イランと敵対せず(交戦国とならず)、かつ人民元で決済するなら、通過を認めるとしている。(4月22日、イラン・アラグチ外相「日本関連船籍の通貨を認める用意がある」)
すでに、アメリカの力の低下、新しい世界が出現しはじめているようだ。
戦争は長期化し、アメリカはゆっくりと後退しつつある。
9)高市政権は、トランプに戦争を止めさせろ!
石油価格はすでに上昇している。ガソリン価格は上がった。この後、更に上がる。食糧価格をはじめ、あらゆるものの価格が上がり、人々の生活は苦しくなるのは確実だ。インフレが高進する。石油や肥料、ヘリウムなどがなくて、インフレなのだから、スタグフレーションとなりかねない。金利が上がり、投資は減退し、ファンドのいくつかが破綻し、金融危機となる近い将来が見えている。 これは日本だけではない。世界的な金融危機である。戦争が長びけば危機が来ることは、誰でもわかる。
高市政権は、そんなことくらいは見通さなくてはならない。アメリカとイスラエルに戦争を止めることこそ、世界と日本にとって必要なのだ。トランプに強く申し入れなければならない。
高市政権は、米・イスラエルが国連憲章違反、国際法違反のイラン攻撃をしたことさえ、いまだ認めていないし、批判していない。
3月19日、高市首相は訪米しトランプと会談したが、トランプの顔色を窺いおもねっただけだった。何しに行ったのか! 戦争を起こしたトランプに、危機を引き起こすトランプに、ペコペコしているだけだった。「世界中に平和をもたらせるのはドナルドだけだ」とおべっかを使ったのである。醜いものを見た。卑屈なまでに強者におもねる日本の政治家・エリートは、戦前からの伝統か!
日本の主要メディアも情けない。トランプとイスラエルのはじめた戦争が大きな間違いであり、世界経済危機の原因であることを報じない。「節約をしましょう!」などと言っている。米・イスラエルは、戦争を即時やめろ!ということができないのである。
高市政権は、イラン戦争はアメリカ・イスラエルによる侵略戦争であること、国際法違反であること、卑怯なパールハーバー攻撃と同じだ!ということを、はっきりと指摘し批判しなくてはならない。
戦争を止めなければ、日本と世界に石油が入らない! アメリカとイスラエルの勝手な戦争のせいで、日本と世界を危機に陥れている! なぜ、即時停戦をトランプに言わないのか!言えないのか!
イラン戦争の停戦、戦争終結だけが、経済危機の解決である。これこそが高市政権の最大の課題だ。
(2026年3月24日記)


