<竪場勝司>
コカ・コーラ自販機の補充配送会社シグマベンディングサービスで働いていた男性が仕事中に熱中症で倒れ、その後死亡した労災をめぐり、遺族や労働組合の関係者が3月19日、事実上の元請けである日本コカ・コーラ(本社・東京都渋谷区)に対し、シグマ社に厳しく指導することなどを求める申し入れ行動を実施した。


過酷な労働環境で熱中症になって倒れ、闘病後に死亡
ドライバー助手として勤務していたAさんが熱中症で倒れたのは、2020年8月。その日の最高気温は36度を記録し、Aさんは炎天下、自販機の設置場所の間を歩いて移動することを会社から命じられた。補充作業中はエアコンを切ったトラックの助手席で2時間以上待機させられた。仕事が終わった直後に倒れて、Aさんは病院に救急搬送された。重篤な症状が続いた後、2022年12月に64歳で亡くなった。会社の安全配慮義務違反によって熱中症になったのは明らかで、死亡労災としての認定も出ている。
Aさんの妻と兄が遺族として全国一般東京東部労組に加入し、会社に対して謝罪や損害賠償、再発防止策の徹底を団体交渉で要求したが、会社は「遺族に団体交渉権はない」という理由で回答自体を拒否した。このため、遺族が原告となって2024年3月、会社に損害賠償を求める裁判を東京地裁に起こした。現在も訴訟は続いている。
元請け企業としての責任を厳しく指摘
19日の申し入れ行動では、日本コカ・コーラ本社前に約50人が集まった。まず参加者全員でAさんに対する黙とうを捧げた後、東京東部労組の須田光照書記長が、これまでの経緯を説明。須田書記長は「この死亡労災に関し、日本コカ・コーラは当事者中の当事者だ。亡くなった労働者だけがなぜ自販機と自販機の間を歩かされていたか。その日の現場は、コカ・コーラグループへの引き継ぎ業務を兼ねていた。会社の説明によると、トラックの定員は2人で、シグマの運転手とコカ・コーラグループの社員が乗ったので、ドライバー助手として働いていた労働者は歩くことを命じられたらしい。コカ・コーラの社員が冷房のきいた車に乗れるのに、なぜこの労働者が炎天下、歩かされなくてはいけないのか。下請け会社の労働者ということで、軽くみているのではないのか」と語気を強めた。
さらに須田書記長は「シグマの現役労働者を組織している総合サポートユニオン、自販機ユニオンからも再三にわたって、再発防止策の徹底を訴えてきたが、シグマは全くまともに対応しない。回答しないどころか、お悔やみの言葉すらかけることがない。日本や世界を代表する大企業であるコカ・コーラに、労働者の命を守れ、ただちに下請け会社を指導しろ、死亡労災をすみやかに解決するように対応しろ、とみんなで強く申し入れていこう」と訴えた。
続いてAさんの兄が「弟は危篤状態が続いて、何とか命を取り留めた。約400日間、闘病をした。今でも一番印象に残っている弟のことは『兄ちゃん、俺、歩かされて悔しいんだ』とかすれ声で言ったことだ。死亡労災が決まった後、私たちが組合員として交渉した中で、シグマは遺族の気持ちを無視し、『私たちは悪くない。文句があるのだったら、顧問弁護士がいるから、そっちへ言ってくれ』という回答だった。まったく卑劣な回答だと思う。弱い立場の現場労働者に、熱中症その他で労働災害は起きているし、これからもどんどん増えると思う。コカ・コーラ社にきちんと下請け会社の指導していくよう求めていきたい」などと語った。
ストライキをして申し入れ行動に参加したシグマ社の現役労働者は「長時間、重労働、低賃金、過酷な労働環境に耐えられず、人が次々辞めていく、それがコカ・コーラ協力会社、シグマの実態だ。あろうことか、会社は労働者が亡くなったことを理由に、ご遺族との団体交渉を拒否した。私たちはその話を聞いた時に、あまりの不誠実さに唖然とした。シグマでは何年にもわたって劣悪な労働環境が放置されて、その結果、今回のような不幸な事故が起こってしまった。コカ・コーラは協力会社シグマの現状に正しく目を向け、サプライヤー基本原則に定めた通り、指導を行なうべきだ。利益のために人の命が犠牲になることは絶対にあってはいけない」と力強く訴えた。
遺族らは社屋に入れず、コカ・コーラ社は申し入れ書の受け取りを拒否
参加者たちが「コカ・コーラは労働者の命を守れ!」、「下請け会社を指導しろ!」、「熱中症労災をなくせ!」、「社会的責任を果たせ」、「遺族に謝れ!」などとシュプレヒコール。社長宛ての申し入れ書を持った遺族や労組関係者がコカ・コーラ本社内に入ろうとしたが、コカ・コーラ社の指示を受けた警備員が社屋に入ることを阻んだ。10分近く問答が続いたが、結局、遺族らは社屋に入ることはできず、コカ・コーラ側は申し入れ書を受け取ることもしなかった。
遺族らを門前払いする不誠実な対応に対して、参加した労組関係者からは次々と怒りの声を上げるスピーチが続いた。

