かわすみ かずみ
 2025年10月13日、大阪関西万博は閉幕した。吉村知事は「万博は成功した」とアピールを続け、運営費の黒字が300億となったことを強調した。跡地活用として大屋根リングを保存することを訴え、そのために運営費の黒字分を使うという案も出た。その陰で、万博工事費未払い問題の被害者らは放置された。実質的な対応がないまま、倒産や一家離散という状況に追い込まれた多くの人々がいる。事件発覚から1年経った今、万博工事費未払い問題被害者の会の代表Aさんに話を聞いた。

 Aさんは、未払い問題が発覚したときの最初の被害者だった。アンゴラ館の建設業者で、上位会社が持ち逃げしたために、未払いに遭った。被害者の会を結成し、たった1人で初めての記者会見に臨んだ。Aさんは、初めての記者会見に臨むとき、緊張して声が上ずっていたことを覚えている。その後何人かの被害者が名乗り出て、行政や政府への交渉も行なった。しかし、Aさんへの未払いを起こした会社は現在も音信不通で、未払金は一切払われていない。他の被害者も解決にはほど遠い状態だ。Aさんは昼夜を問わず働き、下請け業者への支払いや借金を返しながら活動を続けている。

 Aさんのもとに、今も多くの被害業者が連絡してきている。今年3月4日に、日本共産党の辰巳孝太郎衆議院議員が国会でこの問題を追及した。万博閉幕から1年後の今、新たに中国館の未払い問題が発覚したことがわかった。AさんはこのB社の相談を受けていた。B社は中国館の元請けで、中国政府から竣工の手続きが終わっていないために未払いとなっていると辰巳議員は述べている。Aさんは、「Bさんも我慢に我慢を重ねた末に相談に来られたのだと思います」という。このような業者はまだまだいるとAさんは肩を落とす。

 Aさんは、「今行政がやっていることは、道路交通法で言えば、『無免許運転の車だけ取り締まりました』、という状態です。信号無視や一時停止違反については何もしていないんです」と語る。4つの海外パビリオンで未払いを起こしたGLイベンツについては、今年9月に行われるアジア競技大会の運営等に関わっていることから、建設業法違反などについての調査も処分もなされていない。他のパビリオンでは不法就労もあると聞いているが、これも実態把握すらされていない。無許可営業の罰則はわずかな罰金と軽い刑事罰のみで、再発防止になっていない。下請けは上位会社の尻ぬぐいをさせられる。もっと処分を厳しくしてほしいという。

 万博工事費未払い問題について、人々はどう受け止めているのか? これまで、Xで未払い問題を発信し続けてきたAさんに、「応援してるから頑張りや!」「負けるな!」と声をかけた人々がいる。カンパや集会参加で支援してきた人たちもいる。一方で、「大阪府は関係ないやろ」「契約書交わさなかった自分らが悪いんやろ」と心ない言葉を投げかけてきた人たちが、今もSNSで中傷している。Aさんはこれらの誹謗中傷について、「吉村知事の事実と異なる発信に惑わされずに、本当のことを知ってほしい」と思い、事実を伝え続ける。

 先の大阪府知事選・市長選では、「END維新」という旗を持って抗議する人々が現れ、演説中に「万博工事費未払い 金払え」というプラカードを掲げた。Aさんは、SNSでこの状況を知った。未払い問題を含めた維新の会への不信感がそうさせるのではないかと、Aさんは考えている。

 昨年12月に提出された被害者のための救済法案は衆院選で廃案となった。法案提出に尽力した議員は、衆院選で多くが落選した。今、中道改革連合が中心となって法案の再提出に向けた話し合いが進んでいる。タイミングをみて再提出するという。

 Aさんはこれまで、「仲間を見捨てることはできない」と思い、被害者の会の代表として活動してきた。直接的な妨害を受けたことはないが、業者などから脅されたことはあるそうだ。放置されてきた未払問題について、Aさんは、未払い問題を解決しないと、建設業界の人手不足や、若者の離職に歯止めをかけられないと感じている。「下位の業者が安心して働けるよう、皆さんのご支援をいただきたい。吉村知事の『民民発言』に惑わされず、正しい発信をしてほしい」と訴える。