
<伊藤千尋(国際ジャーナリスト)>
今回の選挙結果にショックを受けていませんか。当選議員が自民党だらけになった日本列島の政治地図を見て、ため息をつく人は多いでしょう。なぜこうなったのか。第1に、高い支持率を背景に「今なら勝てる」と抜き打ち解散した高市早苗首相の計算が図に当たったこと。第2に、「強く明るいサナエ」イメージを拡散した高市陣営ネット戦略の成功、第3に、いやこれが最大の理由かもしれませんが、安保や原発の党是を捨て野党共闘を放棄し存在意義すら失った立憲民主党のていたらく。対抗勢力が消えれば与党が勝つのは小選挙区制では当然です。第4に、国民の生活感覚から遊離し親近感を得られなかった左派の姿勢(米国の民主党の失敗そっくり)。このような点が挙げられます。
昨日(2/9)は広島で平和憲法の講演をしました。聴かれたみなさん、最初は選挙結果を受けてがっかりした表情でしたが、講演が終わると元気になりました。理由は二つ。まず、政治は選挙でなく市民運動で変わるのが今の世界だと知ったこと。次に、平和憲法の力をあらためて強く認識したこと、さらに、今どうすればいいのかのヒントをつかんだことです。
政治が変動するとき、これからどうなるのかという声をよく聞きますが、どうなるかと悩んでいる場合ではありません。圧倒的な力を握った高市首相は改憲を目指し、矢継ぎ早な改革を進めるでしょう。問題はこの機に私たちがどうするか、です。戦後80年を超えて、日本の平和はまさに正念場を迎えました。
怪物のような政治家が国をメチャクチャにするのは、すでに先例が進行中です。トランプ米大統領はグリーンランドまで手に入れると豪語し、国連に代わって世界の平和を主導する組織として「平和評議会」を創りました。世界の帝王になろうとしています。高市首相の何倍も大掛かりな嵐が、米国でこの1年吹き荒れ、これから3年も続きます。
戦後この方、世界は理念や理性を基盤に据えてきました。国連憲章は国の規模の大小にかかわらず1国1票の公平性をうたいます。それをただ力が強い者が勝ちカネがすべての世界に根本から変えようとするのがトランプ流です。人間性を破壊し暴力ですべてを支配する考え方です。ハリウッド映画に出てくる「悪の帝国」そのもの。これに追従するのが高市首相の基本姿勢です。このまま進めば世界も日本も、軍事と経済で強い者が支配することになります。どうしたらいいのか、と悩む前に私たちの基本的な立ち位置をしっかり見据えることが重要です。
国連憲章が冒頭で掲げるのは、国際紛争を「平和的手段によって、かつ正義及び国際法の原則に従って実現すること」です。キーワードは「正義」です。社会正義、国際正義に基づかない身勝手な行動は許さない。それをすべての国、すべての人々が基本に据えることが平和な世界を構築することにつながります。
私たちはあくまで正道を歩もうではありませんか。私たちだけではない。カナダのカーニー首相も「ポピュリズムと民族ナショナリズムが台頭する時代にあって、カナダは多様性が弱みではなく強みになり得ることを示すことができる。進歩と正義へと向かう余地は、なお残されている」と述べました。米国でもニューヨークに民主的社会主義を掲げるマムダニ氏が元旦、市長に就任しました。トランプ大統領の支持率は急速に低下しています。秋に行われる米国の中間選挙では共和党の敗北が予想されます。
私たちはどうすればいいのか、端的に言いましょう。私たちの立ち位置「正義」の基本を譲らないことです。本当の強さはそこにあります。9条を今まで以上に高く掲げましょう。混迷した世界を救うのにどうしたらいいか。答えは出ています。世界に9条を広めることです。今の世界でそれができるのは、日本で9条を守ってきた私たちです。
長くなりました。市民運動の件はあらためて書きます。(伊藤千尋さんのFBより。写真は2月11日の練馬講演会)


