アレックス・ハン(2025年12月4日)

【解説:2026年最初のレイバーノーツ誌翻訳記事はゼネストの準備を論じるアレックス・ハンの投稿記事である。この記事に注目したのは、ゼネストを挑発的な荒唐無稽な提案として捉えるのではなく、この20年間のアメリカの労働運動と社会運動の実践を踏まえて現実的な構想として提起している点にある。レイバーネツト日本国際部 山崎精一】                                

2016年4月1日、シカゴでの統一ストライキ

トランプによる労働者への攻撃が余りにもひどいので、多くの人々がゼネストについて検討し始めている。トランプ政権は主要都市に軍隊を派遣すると脅かし、百万人の連邦職員から団体交渉権を剥奪し、憲法違反の域に迫るような移民取締りの恐怖キャンペーンを展開している。ゼネストの呼びかけをいつも発しているような人たちからだけではなく、私が住んでいるシカゴの市長である元シカゴ教職員組合指導者兼組織者ブランドン・ジョンソンからも発せられている。

ゼネストの呼びかけは以前からも発せられていた。それは真剣な提案や戦略としてではなく、労働者が既存の政治・経済権力から日常的に受ける攻撃への反発としてであった。こうした呼びかけは簡単に無視できる。なぜなら、ストライキを単一の職場でさえ開始し勝利させるのがいかに困難か、ましてや3億3千万人の国民が暮らすこの国でそれを実現する難しさを理解していない善意の人々から発せられる傾向があるからだ。アメリカでは150年近く、全国規模のゼネストのようなものは全くなかった

仲間を組織化し、労働組合の認証を獲得し、頑なな使用者と交渉するという困難な作業を経験してきた私たちも、このゼネストというアイデアを即座に却下することが多かった。しかし2年前、米国三大自動車メーカーでの「立ち上がりストライキ」を受けて、全米自動車労働組合(UAW)のショーン・フェイン会長が2028年5月1日に共同ストライキの準備を進めるよう全労働組合に呼びかけたことで、この構想が現実味を帯び始めた。

一見不可能に思えるが、過去20年間の協調ストライキと闘争の激化を戦略的に振り返れば、想像以上にその実現に近づいていることがわかる。基盤は整った。今こそ過去の闘いから得た教訓を活かし、より大規模で破壊的な行動へと飛躍的に突き進む時だ。

挑発的な状況

大規模な協調行動の前提条件ははっきりと見えてきている。移民取締りの名目を借りた、移民コミュニティ全体に対する苛烈な人種差別的攻撃が行われている。富裕層と企業への巨額の減税も進められており、減税は経済縮小と連邦予算削減と相まって、全国の州議会や市議会に深刻な財政危機をもたらすだろう。

民主主義、移民、法の支配への攻撃は、すでに米国史上最大規模の動員を引き起こしている。2025年10月18日には全国で700万人が「ノー・キングス」抗議行動に参加した。労働運動にとっての問いは、いつ大規模動員から大規模争議行為へ移行するかだ。

2026年前半が決定的瞬間となる。全国の州議会は、連邦政府の機能空洞化に阻まれながら予算審議を開始する。同時にICE(移民関税捜査局)予算1700億ドル増額が本格化する。公立大学はトランプ政権の予算削減と攻撃による深刻な打撃をさらに受け、巨大IT企業と金融資本は労働者と公共部門からの搾取を続ける。

今こそ、各市・州でこれらの闘いを結びつけ調整する計画を立てる必要がある。トップダウンの全国計画や一斉行動ではなく、各州で計画を策定することだ。

四つの教訓

最近の過去から学べる四つの重要な教訓は以下の通りである:

1 移民コミュニティの防衛を経済的行動として捉え強化する。

2006年、全国的な「移民のいない一日」運動は3月10日の10万人の行進で始まり、5月1日に50万人の移民と支援者がシカゴ中心街を行進したことで頂点に達した。「グレート・アメリカン・ボイコット」とも呼ばれるこの日の行動には、非常に多くの移民労働者とその支援者が参加したため、シカゴ地域の大部分は事実上経済活動が停止した。店舗やレストランは、従業員への連帯から、あるいは必要に迫られて閉店した。十分なスタッフがいなかったのだ。

2 労働組合と地域社会を結集し、運動を連携させる。

メーデーが再興してから10年後、億万長者の共和党知事のもとで2年間に及ぶイリノイ州予算の膠着状態が続く中、シカゴ教員組合(CTU)は予算行き詰まりに抗議し、学校への十分な資金提供を求めるため1日ストライキを決行した。2015年の大半、CTUとサービス産業従業員組合SEIUヘルスケア・イリノイは、進歩的な労働者階級の政治と闘争的行動を進めるために地域の労働組合の共闘を一緒に立ち上げ、キャンペーンの調整と戦略共有を進めた。この共闘の活動により、2016年の1日ストライキには12の組合が参加した。ファストフード労働者団体「ファイト・フォー・15」、シカゴ州立大学・北イリノイ大学の教職員組合、SEIUヘルスケアイリノイの保育・在宅介護労働者に加え、長年活動する地域団体とブラック・ライヴズ・マター運動の主要組織者が率いる大規模な地域共闘も参加した。

3 特に重要分野において、労働組合にさらなるリスクを取るよう働きかけよう。

2018年2月、別の億万長者共和党知事による侮辱的な賃金提案に激怒したウェストバージニア州の教員たちは、後に全国的な都市・州規模の教師ストライキの波となる「レッド・フォー・エド」(注)運動を発動した。中には「行動の日」と銘打った1日ストライキもあれば、数週間にわたって継続されたものもあった。重要なのは、複数学区や州全体にわたるストライキのほとんどが、教師のストライキを法律で禁止している州で発生したにもかかわらず、敢えてストライキを決行した点だ。

公立学校の教師は、その性質上、地域社会に深く根ざしている。州政府や郡政府、介護施設や診療所、コミュニティカレッジ、食料品店、飲食店など、他の多くの労働者たちも様々な形で地域に根ざしている。これらはすべて、多様なコミュニティに公共的な影響力と可視性を持つ潜在的な重要分野だ。

4 産業横断的に労働協約の期限と要求事項を調整し、地域社会と連携して公益のための要求を明らかにしよう。

2024年3月、ミネソタ州ツインシティーズで15,000人以上の労働者を代表する複数の組合が、複数の産業にわたってスト権投票の期日を統一する取り組みを行った。2023年10月に公に開始されたこの取り組みには、6つの異なる組合に所属する教員、交通労働者、清掃労働者、介護施設労働者、小売労働者が参加した。これは緊密な共同キャンペーンとリーダー育成の成果であった。

協調ストライキ行動の脅威そのものが、都市交通労働者、ミネアポリス市職員、警備員にとって大きな協約勝利をもたらした。さらに広範な労働組合と地域社会の共闘が、清掃労働者、介護施設労働者、小売労働者のストライキを支援した。

激動の中の進歩

今後数ヶ月で確実なのは、トランプとその仲間の企業による攻撃がさらに激化することだ。そして今存在する組織が反撃を組織するための手段なのだ。それは移民の正義、賃借人の権利、公正な経済を求めて闘う労働組合やその他の組織団体であり、たとえ分散し弱体であっても、他には存在しない。

この国の歴史において、労働者運動は正義と平等に向けた決定的な原動力となってきた。しかし労働者は常に、混乱させ組織化を阻む強力な敵対勢力という圧倒的な困難に直面してきた。

進歩は直線的ではなく、激動と高揚の瞬間に起こる。私たちの任務は、大衆が従うべき完璧な戦略を創り出すことではない。過去の教訓を活かし、未来の闘いの土台を整えることにある。

【アレックス・ハンは『イン・ジーズ・タイムズ』誌の編集長であり、労働組合の元オルグ、で選出役員であった。】

(注) Red for Ed「教育のために赤を着る運動」共和党(赤)が支配する州、市で赤字財政で切り捨てられている教育行政への予算増と待遇改善を求めて草の根の教職員たちが赤い服を着てストライキに立ち上がった運動。