小泉雅英

 年末に「レイバーフェスタ2025〜文化で時代に立ち向かおう」が開催され、参加した。
(板橋グリーンホール 2025/12/28)
以下は、その感想。

 まずは本邦初公開のドキュメンタリー映画『高空籠城600日』(制作:高空籠城600日監督連
帯、韓国2025年 49分)。

 日本企業が、海外でどんなことをしているのか、国内にいてはなかなか見えないが、この
ドキュメンタリーは、韓国での事例を極めて具体的に分かりやすく見せてくれる。日東電
工は、絶縁テープなど、いろんな形で、私たちにも身近な製品を作っているが、この作品
を見ると、この企業の100%子会社(韓国オプティカルハイテック)が、資本の論理を剥き出
しに、韓国の労働者を使い捨てにしていることがよく分かった。ほんとうに酷い企業のや
り方に、現地労働者は起ち上がり、残された工場建物の屋上にテントを張って籠城する。
その決死の行動を記録した作品だ。


 酷寒の冬も酷暑の夏も越えて、何と600日間も籠城闘争を貫徹し、「共に民主党」の国会
議員らも、彼女たちの健闘を讃えた上で、籠城の終了を提案する場面もある。労働者は、
血の通わぬロボットではないのだ。火災があったからと言って、勝手な資本の論理で、工
場を閉鎖し、職場を奪われることに、黙って従うわけにはいかない。労働者の誇りも、人
間としての尊厳も無視し、生存権を奪うような所業には、徹底抗戦あるのみだ。日本での
遠征闘争も含め、韓国の若い労働者の闘いに、大きな刺激を戴いた気がする。現地で様々
な優遇策を受けて操業する日本企業が、こんな形で、恩を仇で返すようなやり方で、撤退
する姿を見るのは、ほんとうに情け無く、憤りしかない。日東電工は、徹底糾弾されるべ
きだろう。この闘いを分かりやすく伝えてくれた本作は、素晴らしいドキュメンタリーだ。

 映画の後は、音楽の時間。生田まんじ&SOSOの、パワフルで華麗な演奏に圧倒された。
まんじさんの歌唱も、絶好調だった。どの歌も素晴らしいが、ガザのことを訴え続けて来た
彼の音楽の力に、あらためて感じ入った。故郷の長崎弁で歌われる、まんじ版「ヨイトマ
ケの歌」を、初めて聴いたが、深く胸に沁み入って来た。いつかまた、どこかで聴けるこ
とを願う。

 休憩を挟んで、本日のメインと言える、「ストップ再開発」の映画とトーク。
 まずは、『東京タワマンストーリー』(制作:津田修一)、次に、『ハッピーロード〜大山
再開発のゆくえ〜』(制作:楠城昇馬)、さらに『赤羽せんべろ街を守れ!』(制作:堀切さ
とみ)の三本立て。短編ドキュメンタリー作品を、続けて観る。

 商店街の「再開発」という名の解体・再編は、各地で見られる風景だが、それに反対する
地元の人々の闘いは、あまり見られないからだ。どこでも、八百屋さん、肉屋さん、煙草
屋さん、駄菓子屋さん、雑貨屋、町中華、飲み屋など、小さな商いの店(商店/小店)の多
くがなくなり、全国チェーンのドラッグストアや、ファミレス、スーパーなどが中心の街
になってしまえば、これまでの歳月に染み込んで来た匂いも、佇まいも、味わいも消え、
面白くもおかしくもない、よそよそしい均質空間となり、やがて商店街は消滅するしかな
い。まして、大山商店街のように、アーケードが撤去されて仕舞えば、天気にかかわらず
買い物や遊歩を楽しむこともできず、賑わいもなくなるのは、自然の成り行きではないか。
商店街だけではなく、タワマンなどの再開発には、その地に住む人々の意志を、十二分
に反映されなければならない、ということだ。

 短編ドキュメンタリーの後のトークも、大野厚さん(大山問題を考える会)、藤平輝明さん
(やさしいまちをつくる会)、まとめ役の和田悠さん(オール板橋)の三人が、それぞれのリ
アルな経験と知恵に基づいて、再開発のあり方について、徹底批判する。この時間に、街
の再開発について、多くのことを学ぶことができた気がする。和田悠さんの提唱されてい
る「くらしにデモクラシーを」という発想には、未だ「新左翼」の古い尾骶骨を脱しきれ
ない者として、とても新鮮に感じ、刺激をうけた。この方向に、大きな可能性と、希望が
持てるのではないか、と感じた。

 この後は、講談「鶴彬」。抵抗の川柳歌人、鶴彬の人生を、講談という形で、語って下さ
った。あらためて鶴彬という表現者の抵抗について、認識を深めることができた。

 続いて、川柳の部。これが私は一番苦手のジャンルなのだが、今回、スクリーンに、大き
な文字で投影され、一つ一つの句を読むことができたのは、とても良かった。生活に密着
した句が多いが、「戦争がつくり笑いで立っている」(一志)という句には、笑えないだろ
う。ほんとうに怖い世の中に入って来た、ということか。川柳というジャンルは、こうい
うものかも知れないが、現状認識と批判の句だけではなく、今後の世界へ向かう、希望を
読む句もあれば嬉しいな、と思った。

 次に、レイバーネット恒例の「三分ビデオ」大会。どれも力作ぞろいで、技術的にも申し
分のないレベルの作品ばかり集まっていると感じたが、その中でも、次の作品が、印象に
残った。『スシロー•ストライキ』(回転寿司ユニオン)、『争議解決をめざして!JAL本
社包囲行動』(JAL争議団)。『普天間の空は何も変わらない』(湯本雅典)、『遼寧省の万
人坑を訪ねて』(佐々木健)、『双葉町•14年目の夏』(堀切さとみ)。あ、そうだ、イケガ
ミアツコさんの『再開発 OF THEDEAD』は、とびきりの作品だった。よくもあんなに
テンポ良く、短時間で、問題をまとめられるものだと、驚嘆する。杉並の岸本区政の問題
点も指摘されていて、勉強になった。

 レイバーネットも、2.0に更新されるとのこと、フェスタだけではなく、レイバーネット
という運動の今後が、ますます楽しみとなって来た。「文化で時代に立ち向かう」という
姿勢は、今後ますます重要だと思う。(2026/01/01記)