反貧困ネットワークが緊急集会

竪場勝司

 一般社団法人「反貧困ネットワーク」の緊急集会が12月5日、衆議院第一議員会館で開かれ、生活保護、非正規労働、外国人差別など様々な社会問題の当事者が登壇して、高市早苗政権が進める弱者切り捨て政策に「NO!」の叫び声を上げた。

 緊急集会は、軍事費の増大、労働時間規制の見直し、外国人排除政策の強化なと、高市政権が次々と打ち出す政策に危機感を覚えた同ネットワークが、「差別と弱者の切り捨てを許さない~当事者からの叫び」をテーマに、連帯して悪政に立ち向かっていこうと開いたものだ。

増える女性や若い世代からのSOS

 集会には約100人が参加。まず、同ネットワーク事務局長の瀬戸大作さん(写真)が、最近のネットワークの活動について報告した。困窮者支援と不正規滞在を中心とした外国人支援が活動の2本柱で、困窮者支援の面では①女性からのSOSが急増している②食料配布の現場に並んでいる人たちの多くが生活保護利用者に変化している③家賃が上がって、払えずに強制退去させられる例が非常に多い④20代、30代の若い世代からのSOSが増えている、などの点を特徴として挙げた。

 瀬戸さんは「夜、行き場所がなくて、でも生活保護だけは利用したくないという女性が反貧困の事務所の前にいて、『助けてほしい』と。こうした人は一人や二人ではない」と話し、「貧困の問題に対しては、共助ではなくて、連帯して声を上げ、政治的な問題として解決していくことをやっていかないといけない」と指摘した。

「非正規雇用の入り口規制」の立法化を

 続いて当事者からの訴えに移り、前参議院議員の大椿ゆうこさんが登壇して、自民と維新の連立合意書に労働政策が一つもないことを指摘した。大椿さんは、雇止めにあうなど自身が経験した非正規雇用の理不尽さに触れたうえで、「非正規労働者を増やさないために最も効果のあることは、そもそも非正規労働者をつくり出さないこと、非正規雇用という枠を設けないことだ」と強調。「本来であれば、正規で雇うべき仕事を非正規雇用に置き換え、使い捨てにしている」と現状を批判した。原則を正規雇用とし、非正規雇用にしてもよい仕事を限りなく限定する「非正規雇用の入り口規制」の立法化が必要だと訴えた。

 国による大幅な生活保護基準の引き下げをめぐる「いのちのとりで裁判」では、6月に引き下げを違法とする最高裁判決が出て確定したが、厚生労働省は新たな基準をつくって引き下げをやり直し、原告には特別給付金を支払う方針を示している。厚労省の方針について、登壇した東京の原告団副団長の木村良太さんは「これは生活保護を受けている人たちの分断を図るもので、絶対にやめさせなければならない」と厳しく批判した。

*緊急集会ではさまざまな問題の当事者が登壇した

 また、同ネットワークで、在留資格のない仮放免の状態で暮らしている高校生の支援活動に取り組んでいる加藤美和さんは、今年5月に出入国在留管理庁が「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」を発表して以来、支援対象の高校生の家族が突然、入管に呼ばれてその日に強制送還されてしまうケースが続いたことに触れた。「入管庁は『ルールを守らない外国人による国民の不安』としているが、具体的な統計データからは、犯罪率が上がっているとは言えない。メディアで報道されるのはオーバーツーリズム、土地規制、外国人による日常生活のトラブルといったもので、それに国民が不安を感じているのだとしたら、不法滞在者を送還しても、不安の解消にはならない」と指摘した。

 集会の後半には同ネットワーク世話人で作家の雨宮処凛さんと、登壇した問題当事者との間で、日本の社会保障の現状をテーマにしたクロストークも行なわれた。