
<アリの一言>
辺野古沖転覆事故をこの人はどう見ているのだろうか―ぜひその見解を聴きたいと思っていたのが、作家の目取真俊氏です。ウチナーンチュとして沖縄が受けている差別を告発しつづけ、辺野古新基地建設に対してもカヌーで抗議活動を続けている目取真氏(写真=朝日新聞デジタルより)。
しかし事故から3カ月近くたっても、沖縄県紙に目取真氏のコメント(論評)は出ていません。その目取真氏が月刊誌「地平」7月号に、<辺野古の海で何が起きたのか>と題して寄稿しています。待望のコメントです。
目取真氏は、「今回の事故の原因を考えるうえで、重要なのが「不屈」を操船していた金井創船長の天気・海象に対する判断だ」とし、水難学界理事の斎藤秀俊・長岡科学技術大教授の分析や自身の体験を踏まえ、こう指摘します(太字は私)。
<新聞、テレビ、インターネット上の記事の大半は、波浪注意報が出ていたことだけが強調され、実際の現場の波の高さや風速が示されないため、あたかも荒れた海に金井船長が船を出したかのような予断が生み出されている。乗船者や漁民の印象、感想、意見などに基づく定性分析だけでなく、定量分析をきちんと行って事故原因を究明してほしい。>
そして論稿をこう締めくくっています。
<今の時期にこういう文章を書けば、反発が来るのは承知している。しかし、亡くなった金井船長が事実に反した形で批判されるのを見過ごすことはできない。事実に基づいて事故の原因究明と反省はなされるべきだ。沈黙は美徳ではない。
今が沖縄の反戦・反基地運動を叩き潰すチャンスとばかりに、事故を利用して攻撃を仕掛けてくる者たちに対しては、毅然と対応すべきだと考えている。沖縄で反戦・反基地運動が起こるのは、在日米軍基地の過剰な負担を押しつけて平然としている大多数の日本人(ヤマトゥンチュー)によって、沖縄人が日々の生活を脅かされているからだ。生活の中から生まれる運動が絶えることはない。>
沖縄人で、芥川賞作家で、反戦・反基地・反辺野古新基運動の先頭に立っている目取真俊氏の上記の指摘はきわめて重いものがあります。
目取真氏自身、「今の時期にこういう文章を書けば、反発が来るのは承知している」と書いているように、今日の歪んだ「ネット社会」で誹謗中傷をあびることは覚悟の上の論稿です。その勇気にあらためて敬意を表します。
この論稿は政府・文科省が「教育基本法違反」と断じる前に脱稿したと思われます。「事故を利用して攻撃を仕掛けてくる者たちに対しては、毅然と対応すべきだ」という目取真氏の指摘はますます重要になっています。
そしてなによりもわたしたち日本人は、「沖縄で反戦・反基地運動が起こるのは、在日米軍基地の過剰な負担を押しつけて平然としている大多数の日本人(ヤマトゥンチュー)によって、沖縄人が日々の生活を脅かされているからだ」という指摘を噛みしめなければなりません。
今回の事故の根源は、辺野古新基地を強行しているアメリカ政府と日本政府、それを容認している「多数の日本人」であり、辺野古新基地反対運動を「ヘリ基地反対協議会」はじめ沖縄の一部の人々に任せている日本・沖縄の「反戦・反基地運動」の構造的欠陥です。
事故原因の科学的究明はもちろん重要ですが、今回の問題をその政治的根源を不問にしたまま一般的な事故対策に矮小化することは許されません。

