11月12日のレイバーネットTVは「病ますます深まる郵便局職場〜当事者が訴える」だった。昨年発足した「郵便局過労死家族とその仲間たち」のホームページには、続々と相談が寄せられたが、その事務局長である倉林浩さんが番組をすすめた。その事例は衝撃的だった。猛烈な貯保ノルマ強制のすえ脳出血、左半身不随になった下関郵便局の高部啓さんは、その怒りをオンラインで切々と訴えた。配達中の交通事故を理由に「懲罰自転車」をさせられ、内部通報したら上司から「殴る蹴る」の暴行を受けた事件など、信じられない話ばかりだった。

 死亡事件も起きている。飯島淳さんは、2023年10月に武蔵野郵便局集配営業部に異動したとたん、イジメの対象になり、過重労働を強いられ、翌年2024年7月20日に虚血性心疾患で亡くなった。48歳だった。父親と母親がオンラインで思いを語った(写真上)。

 父親「昼は休めず昼食もとれない。転勤早々で配達・組立に時間がかかったが、だれも協力してくれない。夜遅くまで配達をして真っ暗な中を一人で帰ってくる。こんな毎日で疲れがたまっていた」。母親「見ていて痛々しかった。10キロ痩せた。ご飯も食べられず眠ることもできない。頭の中は仕事のことだけ。私はそれを気づいてやれず悪い母親だった。死亡直後に解剖したが、解剖医に『心臓が1.5倍肥大している。胃の中は固形物がなくしばらくものを食べていなかった』と言われた。息子はどんなに辛かったことだったか。体中がボロボロになっていた。その姿を見てこれは『過労死』しかありえないと思った」と言葉につまりながらも、しっかりと語った。ギャラリーは多かったが、母親の言葉に圧倒され、スタジオは静まりかえった。

 父親は1970年代に武蔵野郵便局で働いたことがある。そのときのことを聞かれ、こう答えた。「当時の職場は家庭的でなごやか。みんなでレジャーも楽しんでいた。ところがいまは一人ひとりが分断されている。仲間意識がなくなってしまった」と。ゲストの郵政産業労働者ユニオン委員長の日巻直映さんの解説もあったが、郵政民営化で進んだ利益優先・管理強化がこうした事件の背景にあることが、浮かび上がってきた。

 その日はサブ企画として、「日東電工社長宅訪問弾圧事件」を取り上げた。ゲストは尾澤邦子さん(写真上)。不当に解雇された韓国の労働者を支援しただけで、会社から訴えられた尾澤さん。「社長宅に手紙を投函することが面談強要」というこちらも信じられないような事件だった。

 資本の横暴があちこちで続く日本だが、武蔵野郵便局事件では住民の関心と支援が広がっているという。声を上げることで変えていくことができる。「郵便局過労死家族とその仲間たち」の運動は、ユニオン・労働者ネットワークの原点のたたかいである。(M)

●「郵便局過労死家族とその仲間たち」ホームページ https://karousi-yuubin.jp/

↑番組後の記念撮影