7.29レイバー映画祭の感想がSNSなどで広がっています。以下、一部を紹介します。アンケート紹介はこちらです。(レイバーネット編集部)

日本社会の様々な問題を浮き彫りに

 7月29日全水道会館でレイバー映画祭2023が開催された。ホールは満席、参加者数は220名と盛況だった。映画も核汚染問題から労働現場の問題、震災の爪痕を描いたものなど極めて多様で、実に面白かった。

 最初の映画は「サイレント・フォールアウト~乳歯が語る大陸汚染」。大戦後米国はネバダ砂漠や南太平洋の島々で核実験を次々に行い、その破壊力を高めていった。しかし、空気中に拡散していった核物質は人々の体内に入り、ガンや腫瘍などの重い障害を引き起こしていった。ネバダ砂漠から80キロしか離れていないラスベガスでは観光客が集まり、核実験で発生するキノコ雲を鑑賞していたというから怖ろしい。核汚染の恐怖はまだその実態が知れ渡ってはいなかったのだ。そんな中で子供の乳歯を様々な協力を得て収集し、その中のストロンチウム90などの含有量を解析していったグループがいた。「共産主義者」などの誹謗中傷を浴びながら、やがて大気中核実験を禁止する条約にその動きは結びつく。伊東英朗氏によるシリーズ「放射線を浴びたX年後」の三作目である。

 午後に入り最初は東日本大震災で多数の死者が出た大川小学校の被害を描く「春を重ねて」と「あなたの瞳に話せたら」。最初のはこの日唯一の短編劇映画だった。二本目はドキュメンタリーだが、実際に大川小に通っていた妹を亡くした女性が映画を作っている。あえて教員への責任追及などの動きは描かず、肉親を失った生存者の思いに焦点を当てた作品だ。児童の生存者はわずか四人だが、「奇跡の子」と呼ばれることは大きなプレッシャーになっていった。

 次は「ドキュメント石垣島」で、ミサイル基地開所時の抗議行動を描く。こちらはDVDも購入したので近々どこかで上映を行いたい。

 続いては、コロナ禍で次々に廃業に追い込まれた町の飲食店を描く「ドキュメント私の好きな店」。かなり笑える場面も多いユニークな作品である。

 ここから「在日ビルマ労組、ここにあり」「大リストラNO!グーグルユニオンの闘い」「非正規春闘~ABCマート五千人の賃上げを勝ち取るまで」「わたしは非正規公務員」と立て続けに労働運動関係の短編が上映された。全く労働運動未経験だった人も多く、「団交ではガタガタ足が震えていた」という発言もあった。

 最後は「サラリーマン」という80分のコスタリカ人の女性が作ったドキュメンタリーだ。中米で酔って路上で寝込んだりしたらタダではすまない。日本で背広のまま路上で寝込む酔っ払いを見て最初は殺人事件かと疑ったという。終盤では電通で自殺に追い込まれた高橋まつりさんのことも述べている。日本の労働現場の問題をたくさんの労働者へのインタビューで明らかにした作品だが、最後のコロナ禍以降の部分は不要なようにも思った。路上寝込みの消滅は一時的なものでしかなくて、また似たような状況が増えているのではないだろうか。

 たくさんの映画で日本社会の抱える様々な問題を浮き彫りにした映画祭だった。次回も期待したい。(大洞俊之さんのFacebookより)

時代の生き証人としての映像

「在日ビルマ労組、ここにあり」「非正規春闘〜ABCマート5000人の賃上げを勝ち取るまで〜「大リストラNO!〜Googleユニオンのたたかい」「サラリーマン」の短いものから長い映画まで計4本観てきました。それぞれの映画の中で描かれる、労働者が置かれた環境や待遇、賃金のアップなどを求めて戦う姿など、失われた30年と言われている我が国の社会/経済状況を反映した身に詰まされる内容ながら、意外と知られてない一人でも入れるユニオンの応援を得ながら、1人で戦って、5000人分の賃上げを勝ち取った女性の存在などは、頑張れば報われると例を示した良い映画であった。

 とはいえ、ある日突然解雇のメールが入り、それ以外一切の送受信もできない状態で一方的に解雇された、Googleの社員の話。選ばれたエリート社員であっても、理由もなく一方的に理不尽な解雇に及ぶ外資の怖さ。研修生制度とは名ばかりの低賃金/長時間、劣悪環境で外国人労働者を働かせる、日本独自の恥ずかしい制度など、知ってるようでよく知らなかった働く人々の実態が、映像を通しリアルに可視化されることで、また、その実態の一面が切り取られ残ることは、その時代の生き証人としての、映像の価値であると思った。(深沼マリさんのFacebookより)

軍隊体質を小気味よく描く「サラリーマン」

「サラリーマン」を観た。日本は平和ボケしているが、当たり前と思っていることが実はそうでもないことが多い。仕事もそうだけど、商い習慣、馴れあい、属人化で本質や重要なことが見えにくくなっているから、一歩立ち帰って違う視点で物事を俯瞰して見つめなおすことが必要と思った。軍隊のようなモノクロのイラスト動画は最高。小気味いい音楽も軍隊体質を助長していて、よくできていたと思う。やらされてる感、何のためにやっているのか・・・インタビューは自分の心情を代弁してくれているかのようだった。
 私は最後の挿入は合ってよかったと思う。あれがないとちょっと古いなという印象。コロナを機に、ワークスタイルは激変した。コロナ禍を経験して当たり前のことが当たり前でなくなった。この三年でこれまでの商い習慣や価値観が打ち消されて、自分にとって何が大切か、考え方が多様化したタイミングだと思う。多様性を重んじて、いろんな価値観でサラリーマンがあればいいなと思った。(K・Hさんからメール)