インドの民衆メディアを描いた『燃え上がる女性記者たち』を上映
夏恒例のレイバー映画祭。2024年も開催します。地球が危うい、猛烈な夏。ただでさえクソ暑いのに、ギュウギュウのスケジュールだと、そりゃ疲れますよね。今年は映画の本数を絞り込み、5本としました。そして、何よりも休憩をたっぷりとりました。ゆっくりと映画と向き合っていただくためです。物価は上がるばかり。給料はほとんど上がらない。だからこそ、料金据え置きの一般2,000円です。
で、レイバーネット関係の方で、もしかして見逃している方に特にオススメしたいのが『燃え上がる女性記者たち』です。インドの最下層カーストである被差別者の女性たちが運営する新聞「カバル・ラハリヤ(ニュースの波という意味)」が紙媒体からスマートフォンやPC、YouTubeを駆使したデジタルメディアへと変貌する過程が、丁寧に描かれています。「なんて、レイバー映画祭向きの作品なんだろう!」と私は初見の際、心からそう感じました。今度は見逃さないでください。
その他『島で生きる-ミサイル基地がやってきた』『ここから 「関西生コン事件」と私たち』 『トゥドル叔父さん』『バスドライバーにあこがれて』 も、もちろんオススメです。きっと1日中楽しめますよ。まともに向き合っていたら怒りで心が爆発してしまいそうな日々ですが、レイバー映画祭で希望と生き抜く力を得て、息抜きませんか?(土屋トカチ)
・7月27日(土)全水道会館4F大会議室(JR水道橋東口2分)
11時〜19時(10時半開場)
・参加費 一般2000円(前売予約 1700円)学生無料(失業者・障害者1000円)
・主催 レイバーネット日本 事務局メール
<プログラム>
●11:00 『島で生きる-ミサイル基地がやってきた』(82分)
トーク=制作者 湯本雅典(20分)
12:45 休憩(60分)
●13:45 『ここから 「関西生コン事件」と私たち』(74分)
トーク=監督 土屋トカチ・関係者(20分)
15:20 休憩(20分)
●15:40 『トゥドル叔父さん』(20分)
トーク=推薦者・根岸恵子(10分)
●16:10 『バスドライバーにあこがれて』(30分)
トーク=制作者 堀切さとみ・関係者(20分)
17:00 休憩(20分)
●17:20 『燃え上がる女性記者たち』(93分)
*プログラムは変更の場合があります。当ウェブサイトで直前の情報をご確認ください。
<作品紹介>
2023年3月、沖縄県石垣島では、陸上自衛隊ミサイル基地が開設した。石垣市には、自治基本条例という独自の条例がある。そこには「有権者の4分の1の署名が集まれば、市長は所定の手続きを経て、住民投票を実施しなければならない」とあった。2018年「石垣市住民投票を求める会」は平得大俣(ひらえおおまた)地域への自衛隊配備の賛否を問う住民投票条例制定請求署名を1か月で集めきった。その数、14,263筆。これは、石垣市内の有権者の3分の1以上にあたるが、 石垣市は未だに住民投票を実施していない。「石垣市住民投票を求める会」は、裁判でたたかい続けている。
★『ここから 「関西生コン事件」と私たち』(監督:土屋トカチ 制作:全日本建設運輸連帯労働組合 2022年/74分)
2018年、空前の労働組合弾圧事件が関西ではじまった。業界ぐるみの大量解雇、そして、警察・検察がつぎつぎに組合員を逮捕していく。その数、のべ89名。保釈と引き換えに迫られた「組合脱退」に応じた者も出た。家族が引き裂かれ、多くの仲間が去っていった。それでも組合にとどまり闘うことを選んだ組合員のべ31名のうち10名の無罪が確定した(2024年6月現在)。本作主人公の松尾聖子さんは、関西地区生コン支部の組合員。彼女の姿を通して、「関西生コン事件」とは何か。そして労働組合とは何かを改めて問う。2022年夏のレイバー映画祭では制作中の仮編集版だったが、今回は全国90箇所以上で上映されてきた74分版で上映する。
幼少期、女性だったら誰もが感じた不愉快な記憶。大したことじゃないと一蹴されがちだけど、それはトラウマになって、記憶の中で漂い続ける。女性ならではの幻影的な記憶としての作品。
人々の生活の足であり、地域社会に欠かせない路線バスだが、いま減便や路線廃止が広がっている。その理由に挙げられているのは「運転士不足」。入ってもすぐに辞めていく人が多いのは、派閥によるいじめが原因だった。運転士に憧れて国際興業バスに入った槙野さんもその一人。パワハラを受けた仲間の相談に乗ったことを理由に会社からマークされ、脅迫状まで送りつけられた。うつ病になり退職に追い込まれるが、槙野さんは決して諦めない。「このままではバスの運転士という仕事がなくなってしまう。たたかって会社をよくしたい」という槙野さんの選んだ道は・・・?(初上映)
★『燃え上がる女性記者たち』(インド映画 原題「Writing With Fire」 監督:リントゥ・トーマス&スシュミト・ゴーシュ 2021年/93分 )
インド北部のウッタル・プラデーシュ州で、アウトカーストとして差別を受けるダリトの女性たちが立ち上げた新聞社「カバル・ラハリヤ」。独立した草の根メディアとして、大手メディアが注目しない農村の生活や開発など地方自治の問題を報道し続けてきた「カバル・ラハリヤ」は、紙媒体からSNSとYouTubeの発信を主とするデジタルメディアとして新しい挑戦を始める。ペンをスマートフォンに持ちかえた彼女たちは、貧困と階層、そしてジェンダーという多重の差別や偏見、さらには命の危険すらある暴力的な状況のなか、怯まず粘り強く小さな声を取材していく。
知識も経験も豊富な「カバル・ラハリヤ」主任記者のミーラは、ニュースのデジタル化に戸惑う仲間を励ましながらも、自身の子育てと夫の無理解に苦慮している。有望記者のスニータは、意欲も能力の十分だが、家族と世間からの結婚の圧力に疲弊し、新人のシャームカリは、自分の取材力に自信が持てなくなっていた。それぞれの悩みを抱えながらも徐々に記者としての取材方法を獲得していったミーラたちは、次々と生活の問題の先にある反社会勢力の存在や警察の怠慢などをあきらかにしていく。やがて、彼女たちの発信するニュースは、インド各地へと波紋のような広がりを見せるのだった――。