過労による突然死や自死、労働者いじめの「お立ち台」や「懲罰自転車」。郵便労働者への働かせ方の異常さは、世間にも知られるようになっている。
 1月20日、千歳烏山駅近くにある貸ホールで、成城郵便局との団体交渉があった。申し入れたのは東京中部ユニオン。組合員である成城郵便局アソシエイト社員の永井晃彦さんが、自ら受けたパワハラを許さず、会社との交渉に踏み切った。
 この日、組合が求めていた郵便局長の姿はなく、現れたのは総務部長、第一、第二集配営業部長、総務部課長の四人。郵便局内での交渉を拒み、二時間の制限付きの貸ホールを交渉場所に指定してきた。交渉する側は組合員をはじめ、全国から集まった郵便局員や遺族ら15名だった。

 昨年8月、配達中のバイクが倒れて車に接触したことを理由に、二週間の自転車での配達を命じられた永井さん。負傷者が出たわけでも免許を取り上げられたわけでもなく、車の所有者から賠償を求められたわけでもない。およそ事故とは呼べない報告を受けて、会社側は、バイクで配達するのと同じ量の郵便物を、永井さんに自転車で配達することを命じた。過積載(30キロ以上)になることを百も承知の上である。
 自転車配達は懲罰であり、懲罰では労働者が安全に働くことはできない。懲罰自転車をやめて、永井さんに謝るべきだと組合は訴えた。

 しかし開口一番、成城郵便局総務部長の上原氏は言った。「自転車での配達は安全教育であって、懲罰のためではない。パワハラではないのだから、永井さんに謝罪する必要はない」
 一体どこが安全教育なのか。交渉する人たちは妥協することなく迫った。どんな就労規則、懲罰規則に基づいたものなのか。永井さんのバイクが倒れたのは「サイドスタンドのかけ方が甘かったからだ」と総務部長は言うが、自転車配達させることがなぜ安全対策になるのか。
 すでに社員から「懲罰的な自転車配達を命じるのはやめてほしい」という意見が多く、2025年10月14日には本社が「事故発生者への不適切な乗務制限措置の禁止」と題する「自転車または徒歩による配達業務を命じることは絶対にしないでください」という通達文書を出している。それなのに成城郵便局は、その後も二名の局員に自転車配達を命じていた。

2025年10月14日に日本郵政が郵便局長に出した通達。「車両乗務中に交通事故を起こした社員に対して、自転車または徒歩による配達業務を命じることは絶対にしないでください」と書いてある。

 永井さんは38度を超える中、熱中症で倒れたり、亡くなった可能性だってあったはずだ。「心配ではなかったのですか」という問いに「体調が悪いと言ってくれたら他の対処も考えたが、永井さんは元気そうだった」と集配営業部長はいう。断らないのは自己責任だと言わんばかりである。
 「人として謝ってほしい」という永井さんの最後の訴えに対し「懲罰ともパワハラとも思っていない」と四人の管理者たちは言い切った。「これまでに何人もの労働者が亡くなっているのに、日本郵政が謝罪するのを見たことがない。死んでも謝れない理由って何ですか?」という声が飛んだ。答えはなかった。

 団体交渉は、労働者が直接、会社にモノを言うことが出来る場だ。労働組合があってこそ出来ることだと感じる。
 交渉員の中には、仙台の郵便局でパワハラを受けて休職中の女性や、群馬の郵便局から駆けつけたSさん(50代女性)もいた。Sさんも三カ月の懲罰自転車を命じられたことがある。いつ終るかわからない自転車配達に、抗議の自殺を考えたというが「踏みとどまって今も働いている。会社を追い詰めたい」と前を見据えていた。


 

 2024年で過労で急死した武蔵野郵便局の飯島淳さんのご両親も団体交渉に参加していた。元郵便局員で「退職者の会」のメンバーでもある淳さんの父親は「郵政は休職者が多い。管理職も例外ではない」という。今日この場で対面した四人も、正常な心があるなら病んでいくだろう。誰も幸せにならないシステムを、郵政はつくっている。日本の弱体化を象徴している会社だと思った。(堀切さとみ)