楽しい学校めざす宮澤弘道さん〜「東ティモール体験」から教員に

 「あるくラジオ」第26回のゲストは、東京都の小学校教員で多摩島嶼地区教職員組合委員長の宮澤弘道さんでした。打ち合わせの定刻5分前に現れた宮澤さんは、頼れるお兄さんのような人。現職教員そして組合の委員長ならではの、学校現場のリアルなお話を聞くことができました。

 まず最初に驚いたのは、宮澤さんが教員になるまでのお話でした。宮澤さんは高校生のときに、東ティモールの井戸掘りのボランティアに参加し、内戦のさ中、命がけで学んでいる現地の子どもたちを見て、教員になる決意を固めたそうです。無気力で自殺まで考えた高校生活が、ここで変わりました。しかし、家庭の事情で大学進学を断念。働きながら通信教育を受けて、大学の卒業資格と教員免許を取得しました。大学を出て簡単に教員免許を取得した人たちとは、ちょっと違う、いや大きな違いのあるスタートでした。このお話を聞いて、なぜか現在の彼の活躍が理解できたように思いました。

 初めての学校職場は、楽しかったけれど年々窮屈になったそうです。東京都の「日の丸・君が代」の強制(2003年)以来、学校の管理と支配は急速に強化されました。職員会議では挙手、採決が禁止され、教員が学校の意思決定に参加できなくなる。6段階のピラミッド型の職階で職員室の風通しが悪くなる。教科書通りの授業を求められ、教員の自由でクリエイティブな発想が許されない。長時間労働は以前もあったが、質が変わったそうです。昔は自発的に楽しく仕事をして遅くまで残っていたが、今はやらなければならない仕事をこなすために遅くなる。事は、単純な長時間労働ということではなく、その中身の問題が大きくかかわっているのです。民主主義と自由が圧倒的に足りないのが、今の学校なのだと思いました。

 宮澤さんは、学びの中心は「楽しい」ということだと言います。子どもたちには、考えるということ自体に楽しみを見出してもらいたい。いまは「できる、わかる」が偏重されすぎていて、学ぶことの本質的な楽しさが見えなくなっていると。そうした中でも宮澤さんは、独自の工夫で、子どもたちに考えさせる授業をしているそうです。

 労働組合員もわずかになりましたが、労働者の団結した組織があることが何より大事だと言う宮澤さん。職員どうしが仲間としてつながれること、子どもたちが通うのが楽しい学校になることが理想だと語りました。最後に座右の銘を聞くと、「そういうものはない。ただ人は好き。たくさんの人に出会いたい。その中で、自分も成長していきたい」と話してくれました。実際のお話は、この何倍も充実したものでした。まだお聞きでない方は、ぜひ番組のアーカイブをご利用ください。(ささきゆみ)