
俳優・菅原文太は亡くなる前に「政治家がやるべきことは2つ。一つは国民を飢えさせないこと。もう一つは絶対に戦争をしないこと」と言った。見事なくらい真逆のことを日本はやっている。
レイバーネットTVでは1ヶ月前に、米不足からみた農村と都市部の貧困にスポットをあてた。日本の農政によって離農が進み、市民を飢えさせている。そして今回、人々を困窮に追い込んでも、無尽蔵に増え続ける防衛費、日本がズバリ戦争に突き進んでいるリアルな現状を放送した。
メディアが黙り、野党が争点にしないことを、長い間軍拡と闘っている杉原浩司さんが、わかりやすく話してくれた。
言論統制など、戦前に近づいていると思っては来たが、もはや「空気」の問題だけではない。文字通り日本が「臨戦態勢」に入ったことがよくわかった。防衛費はただ増えているだけではない。専守防衛ではなく自ら攻撃できる態勢に変わったのだ。
都市部に住んでいると相変わらず平和ボケしているが、長距離ミサイルが配備されようとしている大分県などの住民は、すでに戦争前夜の感覚を持っているという。やったらやりかえされる恐怖。しかし防衛省にとって、住民の命などどうでもいい。自衛隊の司令部は核戦争を想定して地下に置く一方で、弾薬庫は住宅地。標的になっても構わないのだ。
「ママの会」の小林あやこさん、谷口初江さん、そして学童支援員・那須研一さんの司会もよかった。「誰の子どもも殺させない」の横断幕が引き立つ。「武器見本市なんてとんでもないという人が多かったが、ここ数年で『攻めて来たらどうするんだ。武器がないと困る』という人が増えている」という。平和を守ることより自衛が大切。戦争はいつも、その論理で始まるのだ。
谷口さんは「同じ土俵に立って軍拡していったら、生活や福祉に使うべきお金が削られ軍事に回っていく。それが平和といえるのか」。小林さんの「裕福な子は戦争には行かない。貧しい家、親のいない子が真っ先に行かされる」という言葉が胸に刺さる。
ガザやウクライナで子どもたちが虐殺されることに心を痛めても、彼らを直接殺す兵器を作っているのは日本企業だ。特に三菱重工が開発し売り込んでいる長距離ミサイルや艦艇。これらはただ、虐殺するためだけのもの。イスラエル最大の軍事企業と握手を交わす「日本エアークラフトサプライ」の本社前で、杉原さんたちは雨の中、ダイインをした。
そんな彼らに千葉県知事は「武器見本市に反対するのは、職業差別だ」と言う。こういう人は県民の命を守らない。どこをみて仕事をしているのだろう。
防衛省、県知事、武器製造輸出会社。そして想像力を欠いたまま戦争を後押しする市民。こうしたものと直接対峙し、対話する杉原さん、谷口さん、小林さんの活動は、具体的で本当にスゴイ。『誰の子どもも殺させない』は「憲法守れ」よりも力のあるスローガンだと思った。
5月21日に幕張メッセで開催される武器見本市に反対の声をあげること。三菱製品を買わないこと。具体的にできることは沢山ある。ぜひ多くの人に観てほしい。(堀切さとみ)