
平和主義の日本はどこに行ったのか? 5月14日のレイバーネットTV「大軍拡特集」では、のっけから事態の深刻さに圧倒された。ゲストの杉原浩司さん(写真下)はこう話しはじめた。

「2022年12月の安保三文書による大軍拡方針から三年目になるが、軍事費増強だけでなく、ミサイル配備が現実化している。敵基地攻撃をもった長距離ミサイルが、来年3月までに大分・熊本に先行配備される。この長距離ミサイルは、中国の一部・朝鮮半島を丸ごとカバーするもので、逆にいえば配備地はすべて標的になる。2月には“戦争止めよう!沖縄・西日本ネットワーク”が結成され、反対運動が動き始めたが、今年の最大のテーマはこの長距離ミサイル配備を許さないことだ」。

2025年度予算案では、軍事費は約8兆7千億円で過去最大。こんな予算が簡単に通ってしまった。これについて杉原さんは「権力の暴走をチェックするのがメディア・野党・市民運動の役割だが、どれも弱っている。とくに野党第一党の立憲が反対できないことが大きい」と運動側の問題を指摘した。
番組後半では、千葉で武器見本市に反対している「安保関連法に反対するママの会」の小林あやこさん、谷口初枝さんが出演し、戦争反対の思いを語った。司会の那須研一さんが「お二人は街頭に立っていますが、市民の反応でなにかあれば教えてください」と質問した。

谷口さん(写真右)はこう答えた。「攻められたらどうするの? 武器がなくては困るとか、勇ましいことをいう人が増えてきた。若者からそういう声を聞くと泣きそうになります」。でもこう反論するという。「武器の競争をして終わりはない。同じ土俵に乗って軍拡競争をしていっていいことは何もない。防衛費優先で、福祉や生活のお金が削られるだけ。それに戦争になったとき戦うのは政治家でなく私たち市民で、あなたの友人、家族かもしれない。そういうことを考えてほしいと、問いかけています」と。
2022年12月の「安保三文書」から日本の防衛政策は「専守防衛」を捨て、他国を攻撃できる態勢に変貌している。今回の「レイバーネットTV」はその実態と問題点をしっかり伝えている。ぜひ多くの人に観て、広げてほしい。(M)