●報告 : 11月3日『抵抗川柳句集』出版記念シンポジウム「未来を拓く、新しい川柳よ興れ!」

芒野(レイバーネット川柳班)/写真=Shinya

全動画(2時間40分)

11月3日14時より『抵抗川柳句集』出版記念シンポジウムは、東京・水道橋の「スペースたんぽぽ」にて、高鶴礼子さん(川柳作家・ノマエ ノマシス主宰)と楜沢健さん(文芸評論家)をゲストにお招きし、レイバーネット日本川柳班・乱鬼龍さんの進行で開催されました。

第一部はゲストのお二人によるお話、第二部は参加者全員で『抵抗川柳句集』の感想などについて一言づつ発言する構成で、シンポジウム終了後には会場近くのお店にて懇親会も行われ、ゲストも交え参加者同志の交流を深めました。

高鶴礼子さん(写真)からは、レイバーネット川柳班では時事川柳が中心だが、行動の後追いになったらそこで終わりで、読者を立ち止まらせるような川柳にするためにはもう一つプラスアルファが必要だということ。高鶴さんご自身は「一人の人間がわたしを書く」「いま、ここ、わたし」がこれを書くんだという立ち位置で書いている、という川柳を作るときに自分とどう向き合い、どう研ぎ澄まして高めていくかについてお話されました。

また、川柳に命を懸けた鶴彬の絶筆6句についての解説と、絶筆6句が掲載された現在数冊しか残っていない川柳誌「川柳人」をお持ちいただき、皆に見せて下さいました。鶴彬が収監され亡くなってしまう元となった6句は、川柳投稿欄ではなくエッセイの頁の片隅にあったということを初めて知り、驚きました。

楜沢健さん(写真)からは、川柳と言うのは座の文芸から始まって人が集まるための文学であり、集団の文学として色々な句や意見を集めて皆で作ることで成長していく文学であること。互いに影響を及ぼしあいながら、気付いたり向上していくことが重要という、レイバーネット川柳班の活動の内にある意味や意義を解説するようなお話でした。また、川柳創始者である柄井川柳が何故川柳を始めたのか、それは和歌や俳句のあり様に対する反逆と抵抗からである。という考察も大変興味深かったです。

乱鬼龍さん(写真)からは何のために作り、集まり、発表するのかという原点を考えたら、様々に矛盾だらけの今の世の中で、矛盾と向かい合って「異議あり!」と声を発することが、表現とか川柳や文芸のポイントじゃないかと思っています。現在の川柳界で時事川柳は超少数派ですが、鶴彬が「川柳は必死の生き方だ」と言っている通り、生きているという事は世の中と関わるということで、政治は関係ないとか言っていても政治のつけは必ず私たちに来る。表現する者は一生懸命今の時代と格闘するくらいの覚悟がないといけないんじゃないかなと思ってやっているわけです、と。今回の抵抗川柳句集を編んだ思いを話されました。

シンポジウムでは「兼題があるのが本流か、雑詠が本流か」「五七五の定型は縛りか膨らみか」について、高鶴礼子さん、楜沢健さんの意見が真向から対立し議論する場面もあり、会場もハラハラドキドキ大いに盛り上がりました。また、創作における個と集団、川柳創作における前近代と現代性についてなど、お二人の丁々発止の議論はつきず、とてもエキサイティングなシンポジウムでした。

第二部では「まえがき」を書かれ、今年7月にお亡くなりになった笠原眞弓(白眞弓)さんについての話や、レイバーネット川柳班のメンバーから川柳に対するそれぞれの思いや、講談、紙芝居、経産省前脱原発テントなど川柳以外の活動報告も行われました。また会場の参加者からもそれぞれ一言いただき、演劇、俳句、鶴彬顕彰会など様々な活動をされている方々から感想やお言葉をいただきました。北海道や沖縄など遠方から来てくださった方もあり、句集を出版したことで、様々なジャンルの芸術や遠くの方々にも届けることが出来て、川柳に興味を持っていただけた事を嬉しく思いました。

レイバーネット川柳班では毎月苦労して川柳を作っていますが、今回句集になり、シンポジウムでジャンルの垣根を越えて多くの方々と交流できたことを光栄に思いました。また、ゲストお二人のお話を拝聴して、これからも川柳を通じて社会を見つめよう、川柳を媒介に色々な人と関わっていこう、下手でも真剣に川柳と向き合って行こうという思いを新たにしました。

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