カラフルなスタジオで「大西学園争議」とボリビア「ウカマウ集団」映画を伝える

アーカイブ録画(84分)

 4月23日のレイバーネットTVのスタジオはとてもカラフルだった。背景には「ウカマウ集団60年の全軌跡」の大きなポスターが貼られ、サブ企画の「大西学園用務員事件」では、イラスト付きの大プラカードが登場した。賑やかな雰囲気のなかで進行したこの日の放送。最初に出演したのは、大西学園でたたかっている用務員のM.Oさんだ。

 M.Oさんの給料は、時給換算で948円だが東京の最低賃金1163円を大きく下回っていた。そこでM.Oさんら2人は、その差額を払ってほしいとプレカリアートユニオンに加入して学園に支払いを要求した。ところが学園側は逆にぶち切れて、さまざまな嫌がらせが始まった。挙げ句の果てに、M.Oさんら2人は用務員室からの退去を求められ、停職処分にされてしまった。司会の土屋トカチさん、当該のM.Oさん、プレカリアートユニオンの清水委員長が、その経緯と実態をわかりやすく、写真・動画・プラカードを使って生々しく伝えた。住み込みの用務員にとって用務員室は「住まい」である。学園側は追い出しを計り「兵糧攻め」を行い、出ていかないのなら「一日一万円」を払えと脅しをかけている。

 こんな話にスタジオには、驚きと怒りの声が上がった。視聴者からもチャットで激励が寄せられた。「国際興業バスと闘う槇野です。大西学園・佐賀豊社労士が行っている無謀な行為は絶対に許されません。応援していますので頑張ってください」のエールをだった。「大西学園用務員室追い出し事件」は現在、東京地裁で係争中で、プレカリアートユニオンでは支援を呼びかけている。(プレカリアートユニオンブログ https://precariatunion.hateblo.jp/entry/2025/03/22/225455

 メイン企画では、南米ボリビアの映画集団・ウカマウを取り上げた。東京で4月26日から始まる「ウカマウ集団60年の軌跡」の特集上映にあわせた企画だった。ゲストはウカマウを日本に紹介した民族問題研究家の太田昌国さんだ。かれはレイバーネットの連載コラム「サザンクロス」の筆者でもある。太田さんは若いときにラテンアメリカ放浪の旅や仕事をしていたが、1975年にエクアドルで行われた『コンドルの血』上映会が「ウカマウ」との出会いだった。監督ホルへ・サンヒネスとはそれ以来のつきあいだ。司会の根岸恵子さんの質問に答えて、ウカマウ集団映画の魅力をたっぷり語った。動画(ココカラ)

 「ウカマウ」の映画の主人公は、ボリビアの半数を占める先住民(アイマラ人やケチュア人ら)で、自らが出演している。映画を観た根岸さんが「先住民がひどい眼にあっているが、その中でも力強さ、勇気を感じる」という感想に対して、太田さんはこう話した。「1974年に『第一の敵』がつくられたが、サンヒネス監督がよく言っていたのは、ボリビアの軍事独裁政権や腐敗政権を背後から支えているアメリカ帝国がどんな顔をしているのかを描くということ。言い換えれば、映像による帝国主義論をつくるんだということだった。それぞれの映画によって、軍事的介入、経済的介入、政治的画策、文化的浸透、宗教的浸透、そして現代では多国籍企業の顔立ちを描いている。小さな国を支配する外部の巨大な敵の顔を描くことで、それらに対してどう対峙し、たたかうことができるかという直接的メッセージが込められていた。それが根岸さんのいう力強さにつながっているのではないか」と。

 ホルヘ・サンヒネスらは、今もなお世界に訴えかける映画製作を続けている。今回の特集では、初上映となる新作2本を含む全14作品を一挙上映される。「その中でお薦め映画は?」と聞かれた太田さん。「それはとても難しい、でも」とあえて挙げたのは、『第一の敵』『地下の民』『コンドルの血』『人民の勇気』だった。「ウカマウ集団60年の軌跡」特集上映は、東京・新宿の「ケイズシネマ」(4/26〜5/23)を皮切りに全国で上映されるという。ぜひこの機会に「ウカマウ」に触れてほしい。(M)

→ウカマウ映画情報 https://www.jca.apc.org/gendai/ukamau/